第831回 宿敵イングランドを迎える(4) 欧州の頂点を目指すフランス代表選手たち
■代表100試合目となるロサンジェルス・ギャラクシーのデビッド・ベッカム
イングランドの注目選手はこのフランス戦が代表として100試合目となるダビッド・ベッカムである。マンチェスター・ユナイテッドで試合に出場し始めた1996年に代表にデビューする。それ以来、代表で、そして所属クラブで活躍してきた。2003年にはスペインのレアル・マドリッドへ移籍し、代表チームでも2006年のワールドカップでは主将を務める。このドイツでのワールドカップ終了後、ベッカムは代表の主将から退くとともに、新たに就任したスティーブ・マクラーレン監督の構想からも外れる。しかし、所属チームでのレアル・マドリッドでは在籍中で最高の活躍を見せ、4年ぶりのリーグ優勝の原動力となる。そしてドイツでのワールドカップからほぼ1年経った2007年6月のブラジルとの親善試合で復活し、その後も代表チームに定着する。ベッカムは2007年夏に米国のロサンジェルス・ギャラクシーに移籍、新天地で活躍しつつ、代表の一員として2008年の欧州選手権を目指す。しかしながら前回の本連載で紹介したとおり、予選の最終戦で敗れ、予選落ちし、レアル・マドリッド時代に監督だった新監督のファビオ・カペッロの初陣となるスイス戦ではメンバーから外れる。しかし、この宿敵フランスとの対戦で復活し、代表100試合と言う金字塔を打ち立てた。
■ベッカム以外はプレミア勢のイングランド、4人がプレミア勢のフランス
イングランドの代表メンバーのうち、控え選手そしてベンチ入りから外れた選手まで含めてもベッカムだけが国外のクラブに所属している。一方のフランスは先発メンバーのうちグレゴリー・クーペとフランソワ・クレルクとジェレミー・トゥーララン(いずれもリヨン)を除く8人は国外のクラブに所属している。さらにその国外のクラブに所属する選手の半数の4人はウィリアム・ギャラス(アーセナル)、クロード・マケレレ、ニコラ・アネルカ、フローラン・マルーダ(以上チェルシー)とイングランドのクラブに所属している。それ以外の国外のクラブに所属する選手はリリアン・テュラムとエリック・アビダルがスペインのバルセロナ、フランク・リベリーがドイツのバイエルン・ミュンヘン、そしてダビッド・トレゼゲがイタリアのユベントスの所属である。
■33人のフランス人選手が活躍するプレミアリーグ
フランス人でイングランドの1部に相当するプレミアリーグに所属している選手は33人、一方、イングランド人でフランスの1部リーグに所属している選手は皆無である。また、下位リーグについても同様であり、イングランドで2部リーグに相当するFLチャンピオンシップのクラブに所属しているフランス人選手は17人もいるが、フランスの2部リーグに所属するイングランド人の選手は1人もいない。
1990年前後にはフランスリーグにクリス・ワドル(マルセイユ)、グレン・ホドル、マーク・ヘイトリー(いずれもモナコ)のようにイングランドの選手が活躍する一方で、フランス人選手はイングランドには皆無という時代があった。それから20年も経たずに状況は大きく変わった。現在欧州のサッカー界をリードするイングランドのリーグにフランス人選手が集うとともに、イングランド人の選手も国外に流出せずに世界中から集まった才能のある選手と切磋琢磨を続けている。
■欧州カップ8強の先発メンバーはフランス7人、イングランド8人
このようなイングランドに対し、フランス代表の選手がコンプレックスを持っているわけではない。今回フランス代表の先発メンバーを輩出したアーセナルとチェルシーはチャンピオンズリーグで8強入りしている。そしてバルセロナもチャンピオンズリーグで8強に残り、バイエルン・ミュンヘンはUEFAカップで8強入りしている。チャンピオンズリーグのベスト16決定戦で敗れたリヨンに所属する3人と2部降格の影響がまだ残っているユベントスに所属するトレゼゲを除く7人はまだ欧州の頂点を目指して戦っているのである。
一方のイングランド代表はチャンピオンズリーグの8強に残っているのがチェルシーの4人(フランク・ランパード、ジョン・テリー、ジョー・コール、アシュレー・コール)、マンチェスター・ユナイテッドの3人(ウェイン・ルーニー、オーウェン・ハーグリーブス、リオ・ファーディナンド)、リバプールの1人(スチーブン・ジェラード)を合計した8人である。
このように見ると、欧州のサッカーの頂点を目指すビッグクラブにおける両国の選手の存在感がよくわかるのである。(続く)