第912回 古豪ウルグアイと対戦(4) 満員の観衆の前でスコアレスドロー
■スティーブ・サビダンはベンチでスタート、パトリック・ビエイラは復帰
30歳の新人、スティーブ・サビダンを加えて23人のメンバーで挑むウルグアイ戦。親善試合としては久しぶりにチケットが完売となり、8万人の観衆がスタッド・ド・フランスに詰め掛けた。
試合に先立って先発メンバーが発表され、注目のサビダンであるが、11人の中には入らず、ベンチからのスタートとなった。しかし、GKのウーゴ・ロリスが代表デビューとなった。DEラインは左にパトリス・エブラ、右はロッド・ファンニ、中央にウィリアム・ギャラスとフィリップ・メクセス、守備的MFはパトリック・ビエイラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルコフ、左にティエリー・アンリ、右にフランク・リベリー、FWは1トップでニコラ・アネルカという陣容である。
チュニジア戦と大きく変わったのがGKを含む守備陣とFWである。守備的MFより後方の7人に関しては、チュニジア戦に続いて2試合連続して先発出場するのは、右サイドDFのファンニと守備的MFのトゥーラランだけである。また、チュニジア戦も4-2-3-1システムで臨んだが、FWはベンゼマが務めていた。今季リーグ戦でのベンゼマとサビダンの成績は互角であり、いずれかが先発メンバーに入ると予想されていたが、レイモン・ドメネク監督はアネルカを起用した。
また、2月6日のスペイン戦を最後に負傷で代表を離れていたビエイラが久しぶりに復帰し、キャプテンマークを着用した。昨年の秋にはラグビーワールドカップの開催の影響を受けて、スタッド・ド・フランスでは試合が開催されなかったため、ビエイラがスタッド・ド・フランスでの試合に出場するのは昨年2月のアルゼンチン戦以来のこととなる。
■試合前のセレモニーでの混乱は回避
試合前に注目を集めたのはメンバーの発表だけではない。国際試合の際に恒例となっている国歌演奏のセレモニーである。チュニジア戦では本連載第901回から第904回で紹介したとおり、試合前の選手紹介、国歌演奏の際にブーイングが巻き起こり、ニコラ・サルコジ大統領以下がサッカー界に対して介入することになった。
今回のウルグアイ戦の場合、チュニジアの場合とは異なり、政治的な問題はなかったが、試合前の選手紹介の際に、昨年までパリサンジェルマンに所属していたウルグアイ代表のクリスチャン・ロドリゲスに対してブーイングが起こった以外は、両国国歌の独唱の際にも目立った動きはなく、無事にセレモニーは終わり、キックオフとなったのである。
■釜山での戦いに決着を付けたいベテラン勢
第909回の本連載で紹介したとおり、2002年のワールドカップでは両国は韓国で行われたグループリーグで対戦している。フランスはメディアセンターを東京に置き、ウルグアイは第1回のワールドカップで優勝した際のジュール・リメ杯のレプリカを東京都内の小学校で展示するなど、両国とも日本に対する思いは強かったが、両国の対戦結果はスコアレスドロー、そして両国ともグループリーグで敗退している。もしもこの試合でどちらかのチームが勝利していれば、勝利を上げたチームは日本での決勝トーナメントに進出することができたのかもしれない。
このときの選手で残っているのはフランスではアンリとビエイラ、ウルグアイではディエゴ・フォルラン、ファビアン・カリニ、そしてベンチスタートのセバスチャン・アブルーだけである。特にアンリはこのウルグアイ戦で退場処分を受け、アジアのワールドカップは苦い思い出である。
■大観衆を魅了したサビダンのボレーシュートも実らずスコアレスドロー
試合は親善試合とは思えない激しい展開となった。ウルグアイは3枚のイエローカードを受け、ワールドカップ創設前のオリンピックで2回優勝した伝統国の意地を見せる。前半は両チーム得点なく、勝利の欲しいフランスは後半開始の時点でビエイラとアネルカを下げ、万雷の拍手の中でついにサビダンが代表にデビューする。
後半はサビダンのプレーに8万の観衆、そしてテレビの前の視聴者は釘付けになった。ジャン・ピエール・パパンを思わせるボレーシュートをしばしば放つがノーゴール。試合結果は6年前の釜山と同様にスコアレスドローとなったのである。(この項、終わり)