第919回 フランス代表にとって試練の2008年

■満員になった11月19日のウルグアイ戦

 今年最後のフランス代表の試合は満員の観衆で埋まった11月19日のウルグアイとの親善試合であった。スコアレスドローと言う結果になり、ファンの期待に応えることができなかった。この試合が満員になったのは理由がある。それはVIP席やメインスタンド以外のほぼ全席を10ユーロと言う格安の価格で販売したからである。元々今年はスタッド・ド・フランスが開業して10周年に当たる。このオープン10周年を記念して年間10万席を10ユーロで販売すると言うキャンペーンを実施し、ジョニー・アリディーのコンサート、フランスガス陸上競技大会、ラグビーの6か国対抗のイタリア戦など10のイベントで1万席ずつ10ユーロの座席を販売する予定で、このウルグアイ戦もその対象であった。しかし、最近のサッカーの代表チームの人気低迷に危機感を持ったサッカー協会が大多数の座席を10ユーロに設定すると言う判断を下したのである。
 今年になってからスタッド・ド・フランスで行われたサッカーの代表の試合はこれまでに4試合、3月26日のイングランド戦、6月3日のコロンビア戦と欧州選手権前に開催された試合はほぼ満員の7万9000人の観衆を集めた。しかし、欧州選手権で敗退してからの9月10日のセルビアとのワールドカップ予選は5万人、10月14日のチュニジアとの親善試合はマグレブ諸国相手とはいえ7万4000人にとどまっている。自国開催のワールドカップから10年、スタッド・ド・フランスの主役はラグビーに取って代わられてしまった。

■過去10年間で最悪の成績となった2008年

 そして肝心の成績であるが、今年は欧州選手権本大会3試合、ワールドカップ予選3試合、それ以外に親善試合8試合の合計14試合を戦い、6勝4分4敗に終わっている。また、得点16、失点16と得点と失点の数が並んでいる。6勝4分4敗という成績は1試合あたりの平均勝ち点は1.57であり、この1試合平均勝ち点は過去10年間、すなわちスタッド・ド・フランスが開業してから最悪の成績である。基本的に1試合平均勝ち点は2点以上を維持しており、例外は2004年の1.87(7勝7分1敗)くらいである。また、これよりも悪い成績だったのは過去20年さかのぼってみても1992年の0.91(2勝4分5敗)、だけである。つまり、今年は過去10年で最悪、過去20年間でも下から2番目と言う成績なのである。

■不安定な守備陣、新人が発掘できた攻撃陣

 さて、この悪い成績の中で2010年のワールドカップに向けて体制が固まってきたかと言うとそれもまた疑問である。まずは14試合で16失点と言う守備陣であるが、正GKはスティーブ・マンダンダかウーゴ・ロリスかまだ固まっていない。マンダンダは欧州選手権以降はウルグアイ戦以外の5試合に出場しているが9失点、ウルグアイを無失点に抑えたロリスも浮上してきた。DFラインで安心してピッチに送り込むことができるのはストッパーのウィリアム・ギャラスだけである。もう1人のストッパー、つまりポスト・テュラムは混沌としており、本来サイドバックのエリック・アビダルを起用せざるを得ない状況にある。アビダルが10年前のテュラムのようにサイドDFからストッパーに転じて成功する保証はどこにもない。両サイドバックもメンバーが固定しない。守備的MFはジェレミー・トゥーラランはギャラス同様完璧であるが、トゥーラランのコンビ、すなわちパトリック・ビエイラの位置は不安定である。
 一方、攻撃陣に関しては安定している。攻撃的MFは中央にヨアン・グルコフ、左にティエリー・アンリ、右にフランク・リベリー、という3人で決定、グルコフと言う新人を得ることができたのは大きい。そして1トップに関してもニコラ・アネルカ、カリム・ベンゼマの争いであるが、ここに30歳の新人スティーブ・サビダンが参入してきた。

■2010年ワールドカップ出場のかかる2009年

 今年よりも悪い成績だったのは1992年と紹介したが、今年と1992年は欧州選手権で惨敗していること、欧州選手権後に始まったワールドカップ予選の初戦で敗れていることが共通点である。また、欧州選手権での敗退後の選手の入れ替えが少なかったことも類似している。信じたくはない過去であるが、1992年から始まったワールドカップ予選でフランスは敗退している。フランス代表の次の試合は年が明けて2月11日のマルセイユでのアルゼンチン戦である。2009年の最大の目標は2010年ワールドカップ出場であり、チームの建て直しを期待したい。

 本年もご愛読ありがとうございました。読者の皆様よいお年をお迎えください。(この項、終わり)

このページのTOPへ