第940回 アルゼンチンに完敗(4) サッカーの都でアルゼンチンに拍手喝采
■3月末からのリトアニアとの連戦前の最後の試合
20年前にマルセイユへの移籍がならず、昨秋に代表監督に就任したディエゴ・マラドーナばかりに注目が集まった今回のアルゼンチンとの親善試合であるが、もちろんフランス代表にとっても非常に重要な試合となる。ワールドカップ予選の再開は3月下旬であるが、3月28日と4月1日にリトアニアと連戦する。リトアニアは当初はダークホース以下の位置づけであったが、現在グループ7の首位に立っている。そしてこのリトアニアとの連戦中に予選の折り返し点を迎えることになり、フランスとしてはまずアウエーの試合で勝利して勢いをつけてサンドニに戻ってきたいところである。そのリトアニア戦前の唯一の試合がこのアルゼンチン戦である。
■ベロドロームでの代表戦に出場経験のある3選手
アルゼンチンはインデペンデエンテの元会長のアティリオ・ディパチェが試合の直前に亡くなったため黒い腕章をつけての試合となる。インデペンデエンテはブエノスアイレスを代表するチームであり、今回のメンバーにもダニエル・モンテネグロが選出されているが、ベンチからのスタートとなる。
アルゼンチンの先発メンバーは左サイドDFのエミリアーノ・パパ(ベレス・サルスフィエルド)を除いて全員が欧州のクラブに所属しているが、フランスのクラブに所属している選手はいない。そして右サイドDFのハビエル・サネッティは1998年のワールドカップ準々決勝のオランダ戦にも出場しており、このベロドロームでの試合の経験がある。一方のフランスのメンバーのベロドロームでの代表試合出場歴については、ニコラ・アネルカが1999年のモロッコ戦と2000年の世界選抜戦に出場、ティエリー・アンリが2000年の世界選抜に出場している。
■健闘するも前半の終盤に失点したフランス
フランス代表の布陣はGKスティーブ・マンダンダ、DFラインは左にエリック・アビダル、右はバカリ・サーニャ、中央にウィリアム・ギャラスとフィリップ・メクセス、守備的MFはラッサナ・ディアラとジェレミー・トゥーララン、攻撃的MFは中央にヨアン・グルコフ、左にアンリ、右にフランク・リベリー、FWは1トップでアネルカという陣容である。昨年11月のウルグアイ戦と比較すると、GKと両サイドのDF、守備的MFのうちの1人が変更している。そして試合前はリベリーに主将を託すのではないかという見方もあったが、従来通りアンリがキャプテンマークを着用している。
マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)で活躍するカルロス・テベスですらベンチスタートという豪華メンバーのアルゼンチン、最前列にはチャンピオンズリーグでリヨンと対戦することになるバルセロナ(スペイン)のリオネル・メッシが控えている。マラドーナ監督への拍手喝さいで始まったこの試合はフランスが健闘し、互角の戦いを見せる。
しかしながら、均衡が破れたのは42分のことである。右サイドからの攻撃をアギエロがセンタリング、これをグティエレスが決めて、アルゼンチンが先手を取って前半を終える。
■テベスとメッシの連係プレーにマルセイユの観衆が拍手
後半に入ってアルゼンチンがボールを支配するようになるが、フランスは追加点を許さず、同点の機会を狙う。65分にはこの日調子の出ないニコラ・アネルカに代えてリヨンのカリム・ベンゼマを投入するが、ゴールネットを揺らすには至らない。そして81分にはついにテベスが登場、その直後の83分には千両役者のプレーがベロドロームのファンを魅了する。テベスとメッシがワンツーパスを決め、メッシがゴールをあげて2-0とリードを広げる。
このメッシのゴールの後はベロドロームのファンはアルゼンチンのプレーに拍手を送り、フランスのプレーにはブーイングとなる。それだけ素晴らしいプレーだったのであるこのような事態は1992年8月26日にパルク・デ・プランスで行われたブラジルとの親善試合以来のことであろう。
結局フランスは17年前のブラジル戦と同じスコアの0-2と敗れ、アルゼンチンには連敗となる。また、フランスが国内で2点以上の得点差をつけられて負けるのは2003年2月12日のチェコとの親善試合以来6年ぶりのことである。また、このところ年の初めの試合は苦手としており、昨年はスペインに0-1、一昨年はアルゼンチンに0-1、3年前はスロバキアに1―2と敗れており、これで4連敗となった。3月末から始まるリトアニアとの連戦に向けて依然として霧は晴れないのである。(この項、終わり)