第988回 2009年チャンピオンズトロフィー(1) 初めての国外での開催
■サッカーの季節の到来を告げるチャンピオンズトロフィー
スペインのアルベルト・コンタドールを先頭にしたツール・ド・フランスの一群がシャンゼリゼ通りのゴールを通過すると、フランスでは季節が変わる。ツール・ド・フランスの季節が終わりを告げると、サッカーの季節がやってくる。
ファンにサッカーの季節の到来を告げるのが、リーグチャンピオンとフランスカップの勝者がリーグ開幕の前週に対戦するチャンピオンズトロフィーである。1995年度から開催されているチャンピオンズトロフィーは今年で14回目(1996年はオセールが二冠を獲得したため開催されず)であるが、今年はカナダのモントリオールで行われ、初めての国外での開催となる。これまでの開催地を振り返ってみると初期はサッカーの普及を主眼とし、1部チームの本拠地以外の都市、例えばブレスト、ベジエ、ツール、アミアンで開催されてきた。1部リーグの本拠地で初めて開催されたのが2000年のことである。リーグチャンピオンのモナコとフランスカップを獲得したナントがソショーで対戦している。そして始めていずれかのチームの本拠地で試合が行われたのが2001年のことであり、フランスカップを制したストラスブールがリーグチャンピオンのナントを迎えながら、1-4と大敗している。
■チャンピオンズトロフィーを得意としたリヨン
リーグ7連覇を果たしたリヨンが初めて登場したのは2002年のことであったが、この時はカンヌでロリアンと対戦して5-1と勝利している。リヨンはこのタイトルを得意とし、6回連続で勝利している。6連勝のうち3回はリヨンでの勝利、1回は敵地(オセール)での勝利、2回は中立地(カンヌ)での勝利である。リヨンは7連覇の最後の年はフランスカップも制覇し、1996年のオセール以来の二冠を達成する。1996年はチャンピオンズトロフィーは開催されなかったが、リーグ2位のボルドーとアウエーで対戦したのである。この試合でリヨンは思わぬ敗戦を喫する。思えばこれが、その翌年のリーグ戦でリヨンの連覇が途絶え、ボルドーが10年ぶりに優勝する伏線になっていたとも言えるかもしれない。
■低迷する観客動員と国外での開催
このように開催都市についてもこれまで定まる方向のなかったチャンピオンズトロフィーであるが、確実にいえることは、観客動員についてはあまり期待できず、これまでの最高は2006年にリヨンがパリサンジェルマンを迎えた時の30,000人である。人気チーム同士の顔合わせにしてはややさびしい数字である。このような過去の実績を踏まえ、フランス協会は今回の開催地を国外に求めたのである。
今年の出場チームはボルドーとギャンガン、いずれも大西洋岸のチームである。カナダへの入植者は大西洋岸の港から出発したこともあり、カナダにおいてその入植者の出身地は大西洋岸が多い。そのようなこともあり、15世紀のフランス人が北米大陸のカナダに新天地を求めたように、フランスサッカー界もチャンピオンズトロフィーの観客動員問題の解決をカナダに求めたのである。
■モントリオールとモントランブラン
モントリオールは人口370万人、カナダではトロントに次ぐ第二の都市である。そしてケベック州にあり、住民のほとんどはフランス語を話す。したがってフランス語圏としてはパリに次ぐ第二の規模の都市である。1976年の夏季オリンピックの開催都市である。
ただ、日本の皆様にとってはモントリオールよりも北にあるリゾート地、モントランブランの方が親しみがあるかもしれないであろう。冬はスキーリゾートであるが、夏のリゾートとしても魅力的である。特にトランブラン国際ブルースフェスティバルはこのリゾート地最大のイベントであり、モントリオール・ジャズフェスティバルと並ぶ大イベントである。このブルースフェスティバルでケベック独立派の老人と日本人も出会った少なくないであろう。
リーグを制したボルドー、フランスカップを獲得したギャンガン、両チームの選手は、このようなリゾートを楽しむ余裕もなく、チャンピオンズトロフィーのために大西洋を渡ったのである。(続く)