第989回 2009年チャンピオンズトロフィー(2) 南米勢の活躍でボルドー連覇

■オリンピックの翌年から野球場となったオリンピックスタジアム

 前回の本連載で今年のチャンピオンズトロフィーは史上初めて国外で行われることを紹介した。フランス人にとってこの時期のカナダは避暑地としては申し分がない。ところが選手にとってはこのカナダでの開催は決して好ましいことではない。
 選手にとっての負担がかかるということは否めない。まず、長時間の移動、そして時差の問題がある。フランスとモントリオールの時差は6時間、やはり時差のある移動は選手にとってはつらいであろう。そして、試合会場の問題がある。今回の舞台はモントリオールのオリンピックスタジアムである。このオリンピックスタジアムは1976年の夏季オリンピックのメインスタジアムとして使用され、7万3000人の観衆を開閉会式では集めた。陸上競技場であったが、その翌年から大リーグのモントリオール・エキスポズの本拠地となり、野球場へと改修され、人工芝が敷き詰められ、今日に至っている。

■モントリオールのサッカー人気を示した今年2月の試合

 1988年には開閉式のドーム球場となり、世界で初めての開閉式のドームとなった。しかし観客動員の伸び悩み、球場の老朽化という要因が重なり、モントリオール・エキスポズは2004年にモントリオールの地を離れ、米国の本拠地を移し、ワシントン・ナショナルズとして再出発したのである。主なきオリンピックスタジアムにとって久しぶりの晴れ舞台が今回のチャンピオンズトロフィーなのである。
 人工芝であるということもあり、これまでこのスタジアムで行われる球技はアメリカンフットボールに似た競技であるカナディアンフットボールくらいであった。ところが、今年の2月にCOCACAFチャンピオンズリーグの試合が行われ、5万80000人という大観衆を集めた。この数字はモントリオールにおけるサッカーの人気が高いことを示している。また、国外におけるフランスのクラブ同士の戦いは2年前にリヨンとソショーが中国で親善試合を行ったが、このときは現地の主催者のレベルに問題があり、昨年は国外での親善試合は行われていない。しかし、カナダでのサッカーの試合の運営能力も問題がないこと、サッカーが観客を動員できるスポーツであること、などが実証されたことから、カナダ開催が実現したのである。

■選手に負担のかかる長時間移動、時差、人工芝

 このように商業面は問題ないと想定されるものの、長時間の移動、時差、さらに人工芝が選手に大きな負担となるであろう。したがって、昨年は、チャンピオンズトロフィーはリーグ開幕の1週間前に行われていたが、今年は2週間前に行われたのである。チャンピオンズトロフィーが国外でリーグ開幕前の2週間前に行われることから、フランス時間ではツール・ド・フランスの最終日の前夜に試合がキックオフされたのである。
 リーグチャンピオンのボルドーはカナダ入りの直前の7付21日にダックスでマルセイユを2-1と下す。一方のギャンガンはフランスカップを制したメンバーとは大幅にメンバーを入れ替え、さらにカナダ遠征の帯同メンバーは18人と人数を絞る。カナダ開催で厳しいのは選手だけではない。クラブの台所も同様である。しかし、ギャンガンはフランスカップをモントリオールのファンに見せるために帯同させ、これが何よりの援軍であろう。

■チャンピオンズトロフィー史上最多の観衆の前でボルドー勝利

 前売りで3万枚のチケットが販売され、最終的な入場者数は34,068人、目標の5万人の動員はならなかったが、チャンピオンズトロフィーの観客動員としては3年前のリヨン-パリサンジェルマン戦の30,529人を上回る新記録となった。そしてブルターニュ地方からの移民の末裔と思われる大集団がギャンガンを応援した。フランスカップとブルターニュ出身の応援団の前で勝ちたかったギャンガンであったが、力の差は明白であり、開始直後からボルドーが試合を支配する。
 ボルドーは38分に右サイドからボールをつなぎ、アルゼンチン代表のフェルナンド・カベナギが先制点を決める。1点のリードであるがギャンガンには追いつける気配が感じられなかった。そして後半ロスタイムの92分にブラジル人のフェルナンドが2点目を入れる。ボルドーは2-0で昨年に続きチャンピオンズトロフィーを獲得する。ボルドーはリーグカップ、リーグ戦、そしてこのチャンピオンズトロフィーと今年になって3回目のタイトル獲得となったが、北米でのタイトル獲得の原動力は南米勢だったのである。(この項、終わり)

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