第1070回 スペインと親善試合(1) 貴重になった親善試合の機会
■今年最初の代表の試合となるスペイン戦
前回までの本連載ではフランス勢4チームがすべて勝利した欧州カップの決勝トーナメントの第1戦の模様を紹介した。2月になり、クラブチームの国際試合の機会がやってきた。そして3月に入るといよいよフランスでも代表チームの試合が行われる。昨年までは2月の中旬に代表チームの国際試合が行われていたが、今年は国内のフランスカップ、リーグカップ、そして欧州カップの日程の関係で2月に代表チームの試合を行うことができなかった。今年は6月にワールドカップが開催される年であるが、チーム始動は遅くなり、3月3日にスペインをスタッド・ド・フランスに迎える一戦が今年最初の試合である。
■3か月半ぶりの試合、親善試合は9か月ぶり
フランス代表にとって昨年11月18日のアイルランドとのプレーオフ以来の試合となる。
代表チームのスケジュールの課題は始動時期や前の試合とのインターバルだけではない。ワールドカップの初戦は6月11日のウルグアイ戦であるが、フランスの試合日程は3月3日のスペイン戦の次は5月26日のコスタリカ戦まで間隔があいている。次のコスタリカ戦の段階ではメンバーは固まっているはずであり、メンバー選考のための試合をすることも不可能である。
また、スペイン戦は親善試合であるが、フランスにとって親善試合は昨年6月5日のトルコ戦以来9か月ぶりのことである。トルコ戦以降、7試合連続してワールドカップ予選を戦ってきた。ワールドカップ予選は真剣勝負であるが、力量やチーム特性に応じて相手を選ぶことができず、チーム強化と言う点では親善試合のほうが有効である。
■難しくなった代表の試合の日程調整
このように日程を見てみると、3月3日のスペイン戦は前後の試合のインターバルはそれぞれ約3か月もあいており、代表チームは11月半ばから5月下旬までの半年間にこの1試合しか行うことができないのである。この半年間は各クラブのリーグ戦、カップ戦、リーグカップという国内タイトル、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグと言う欧州タイトルに選手は忙殺されるのである。
かつては代表チームの試合は年間を通してコンスタントに行われていたが、近年はこのように代表チームの試合が行われるのは特定の月だけになっている。今後は欧州ではラグビーのウインドウマンスのように代表チームの活動に専念する期間を限定していくようになるのかもしれない
さらに、ワールドカップや欧州選手権の予選参加国の増加に伴い、予選の試合数が増え、力の拮抗した相手を選ぶことができる親善試合の機会が少なくなった。
■スペイン戦の持つ3つの意味
その限られた機会となった親善試合の相手はスペインである。2008年の欧州選手権を制し、今回のワールドカップ予選も10戦全勝と言う圧倒的な力を誇る。当然世界ランキングも1位である。昨年フランスは12試合行ったが、この12試合のうち、世界ランキング10位以内のチームとの対戦は2月11日に行ったアルゼンチン戦だけである。昨年行った12試合のうち、親善試合を3試合しか行っていないことを考えればやむをえないことであろう。
また、ワールドカップ本大会までの親善試合は5月26日のコスタリカ戦に続き、30日にチュニジア戦、6月4日または5日に中国戦となっているが、これら3チームはいずれも予選で敗退しており、本大会には出場しない。新チームに切り替えており、力量だけではなく、チームの完成度も低いであろう。さらに、本大会で上位進出のために倒さなくてはならない欧州勢、南米勢との対戦も計画されていない。
このように考えてみると、スペイン戦の持つ意味は非常に重いと考えられる。第1点として、久しぶりの代表チームの編成であり、クラブで国内外の試合を戦っている選手がブルーノユニフォームでどれだけチームとして機能することができるかと言うことをチェックする貴重な機会であること第2点として本大会に出場する強豪チームと対戦し、チームの強化につなげること。そして第3点として本大会に出場する選手の選考のラストチャンスであること、この3点が3月3日の試合の焦点となるのである。(続く)