第1073回 スペインと親善試合(4) フランス沈黙、スペインに完敗
■満員の観衆もラグビーのアイルランド戦に及ばず
今年最初、そしてワールドカップ出場選手選考前最後のフランス代表の試合は3月3日21時にスタッド・ド・フランスでキックオフされた。スタッド・ド.フランスには79,021人の大観衆が集まった。満員の観衆であるが、それでも2月13日に行った6か国対抗ラグビーのアイルランド戦の79,289人には及ばない。ワールドカップ出場を決めてから最初の試合で相手は世界ランキング1位のスペインであってもラグビーの6か国対抗の開国との対戦に観客動員で及ばない、それが現在のフランスにおけるサッカーの位置づけである。
■新調した白のセカンドユニフォームのフランス
フランスは白いユニフォーム、スペインは紺のユニフォームで両チームの選手がピッチに立った。さてこの白いユニフォームは新調したものである。フランスの青いファーストユニフォームは昨年のアイルランド戦で新調しており、それに引き続き白いセカンドユニフォームもワールドカップに向けて新調したのである。新ユニフォームの特徴はVネックであり、たてに青と赤の細い線が筋のように入っている。このユニフォームはフランスサッカーの黄金時代とも言うべき1980年代のユニフォームをイメージしている。サプライヤーはアディダス社、日本では市谷小、牛込一中校区という文教地区に立地し、新潮社の隣にある会社と言う程度の認識かもしれないが、国際的な事業運営をしている会社である。今回のワールドカップには12チームのユニフォームのサプライヤーとなっている。
■代表デビューのミカエル・チアニ、ジュリアン・エスクーデとコンビ
その新調なった白いユニフォームに身を包んだ11人のメンバーを紹介しよう。GKはウーゴ・ロリス、DFは右にバカリ・サーニャ、左はパトリス・エブラ、中央にはミカエル・チアニとジュリアン・エスクーデ、守備的MFは右にジェレミー・トゥーララン、左にラッサナ・ディアラ、攻撃的MFは中央にヨアン・グルクフ、右にフランク・リベリー、左にティエリー・アンリ、そして1トップはニコラ・アネルカである。
チアニが代表デビューを果たす。ワールドカップ予選で苦労した第2のストッパーにチアニがなるのかエスクーデが名乗りを上げるのかという期待はあるが、当然不安もあり、チアニとエスクーデと組む中央の守備は未知数である。逆に攻撃陣は役者がそろった。昨年夏以降負傷のため代表から離脱していたリベリーが復帰し右サイド、ワールドカップ予選でジネディーヌ・ジダンの後継者としての地位を確立したグルクフ、アイルランド戦でのハンドの汚名を返上しようと言うアンリ、この3人が並ぶ攻撃的MFは圧巻である。
この攻撃陣に対する期待と、守備陣に対する不安の中で試合はキックオフ、このところの人気低迷に悩むフランス代表であるが満員の観衆と無数の三色旗が白いユニフォームの11人を鼓舞する。
■21分の失点から沈黙したイレブンに容赦ないブーイング
このファンの声援に応え、フランスの序盤は悪くなかった。世界ランキング1位の欧州王者に対し、運動量で勝り、安定した守備から一気にカウンターを仕掛け、スペインゴールを脅かす。しかしながら、21分のビジャの先制点がすべてを変えた。イニエスタのスルーパスからビジャが飛び出てロリスと1対1になる。ここでビジャが落ち着いてゴールを決める。チアニとエスクーデのコンビにスピードがあればこのような局面にはならなかったであろう。満員のファンの期待は不安を通り越して失望に変わった。この1点でフランスは気落ちし、ボールを保持できず、スペインの紺のユニフォームがスタッド・ド・フランスをわが庭のように走り回る。
スペインの2点目は時間の問題であった。前半ロスタイムに右サイドDFのセルヒオ・ラモスが攻め上がり、そのままシュートされ、ネットを揺らす。試合開始から20分まで続いていたフランスのプレッシングはもう機能しなくなっている。前半が終了し、ブーイングとともに白いユニフォームの一群はロッカーに向かう。
そして後半は苦痛の45分であった。汚名返上に燃えるアンリはまったくブレーキであり、ボールを持つとブーイングされると言う始末。65分にはベンチに下げられてしまう。アンリ、アネルカ、リベリーに代え、シドニー・ゴブー、フローラン・マルーダ、ジブリル・シセを投入するが、スペインとフランスの力の差は明白、最終スコアは0-2でブーイングとともに試合は終わったのである。(続く)