第1141回 どん底からの再出発、ノルウェー戦(4) 先発11人中6人が代表デビュー戦

■ノルウェー・サッカーの聖地、ウレボール競技場

 9月から始まる欧州選手権予選を控え、唯一の実戦でのテストとなるノルウェー戦、舞台はオスロのウレボール競技場である。収容人員2万5000人強のこのスタジアムは、ノルウェーのサッカー協会が所有し、ノルウェーの代表チームのホームグラウンドであり、ノルウェーカップの決勝も行われるノルウェー・サッカーの聖地である。またオスロにあるボレレンガIFとリン・オスロが本拠地として使用してきた。なお、リン・オスロは今季からビスレット競技場に本拠地を移している。
 ノルウェーにとってフランスは世界ランキングではほぼ同等の相手であり、昨年の秋以降の代表チームが好調であり、1万5000人の観衆が集まった。ノルウェーとフランスは時差がないが、試合は21時15分にキックオフされた。通常ノルウェーでは夜間の試合は19時にキックオフされることが多いが、フランス側の要望を受けてキックオフの時間がフランスのゴールデンアワーに設定されている。

■代表での試合に初出場する6人

 注目のフランス代表であるが、先発の11人のうち過半数の6人が代表にデビューすることになった。ステファン・ルフィエ、アディル・ラミ、アリー・シソッコ、ヤン・エムビラ、シャルル・エンゾグビア、ギヨーム・オラオというメンバーである。またフォーメーションであるが、FWを2人配し4-4-2システムでローラン・ブランは船出する。
 GKはルフィエ、DFは右からロッド・ファンニ、ラミ、メクセス、アリー・シソッコと並ぶ。MFは守備的なMFを1人、トップ下を1人配置するいわゆるダイヤモンド型で、守備的な位置にエムビラ、中盤の右にムッサ・シソッコ、左にエンゾグビア、トップ下にはサミール・ナスリが入った。そして2トップは右にロイック・レミー、左にオラオである。

■主将を務めるフィリップ・メクセス

 そしてキャプテンマークはメクセスの左腕にまかれた。メクセスは本連載第1036回で紹介しているが、ワールドカップ予選初戦のオーストリア戦での失点に絡み、それ以降の予選では起用されなかった。それどころか親善試合になると招集されるという前任のレイモン・ドメネク監督から冷遇され、代表チームから外れたも同然であった。中央の守備陣が課題であるとする専門家やファンは今回のワールドカップ前にメクセスの復権を願ったが、ドメネク監督は世論よりも占星術を信じており、23人のリストにメクセスの名はなかった。その結果がメキシコ戦、南アフリカ戦での無様な失点であろう。その23人に入らなかったことが幸いしてメクセスは昨年6月のトルコとの親善試合以来の代表ユニフォーム、そして自身初めての代表での主将を任されたのである。

■組織的に攻めるフランス、守るノルウェー、前半は両チーム無得点

 さて試合はフランスが立ち上がりから積極的に攻め続ける。2分には早くもレミーのセンタリングでチャンスをつかんだフランスであるが、ノルウェーの守備陣にクリアされる。4分にはオラオがレミーにつなぐが、これをまたノルウェーのディフェンス陣がクリアする。ノルウェーはフランスの攻撃をロングボールでクリアするだけで、自陣からの攻撃につなぐことができない。右サイドDFのファンニもオラオにセンタリングを上げ、中央からはナスリが攻撃を組み立てる。ノルウェーの前半の唯一のチャンスは13分に放った25メートルのロングシュート、初めて代表の試合に出場するルフィエが難なくさばく。
 防戦気味のノルウェーであるがフランスの守備陣を悩ませたのはロングスローである。体格に勝るノルウェーはピッチの中での空中戦だけではなく、タッチラインの外からの攻撃であるスローインの際にロングスローを多用する。
 フランスの攻撃は組織的であり、また多様なルートからノルウェーのゴールを襲ったが、フランスの攻撃よりもノルウェーの守備のほうがチームワークに秀でていたのであろう。フランスは前半の45分間攻め続けながら得点することができず、ハーフタイムを迎えたのである。(続く)

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