第1176回 イングランドと親善試合 (1) 数少ない強豪国との親善試合
■復調傾向にあるフランス代表
6月の南アフリカでの惨敗、8月に新体制下となったノルウェー戦、9月の欧州選手権予選初戦のベラルーシ戦での敗戦と、どん底状態だったフランス代表であるが、予選第2戦のボスニア・ヘルツェゴビナ戦に勝利し、10月に行われたルーマニア戦、ルクセンブルグ戦で連勝し、すっかり復調したと言えるであろう。
今年の10月は欧州選手権の予選はなく、親善試合が組まれ、17日にイングランドとウェンブリーで対戦する。フランスにとっては8月のノルウェー戦以来の親善試合であり、強豪国との対戦は今年3月のスペイン戦以来となる。ワールドカップや欧州選手権の予選の場合、フランスは上位シードされるので、同等あるいはそれ以上の力を持つ国との対戦は限られている。親善試合の場合、相手との力量を考慮して試合を組むので、フランスのように上位シードされる国と対戦することができ、強豪国との対戦が可能となる。
■少ない強豪相手との対戦、振るわない戦績
ワールドカップや欧州選手権で決勝トーナメントに進出するレベルのチーム(ワールドカップならばトップ16チーム、欧州選手権であれば8チーム)を強豪国と定義し、最近のフランスが親善試合でどのくらい力のあるチームと対戦しているかを振り返ってみよう。
今年は、これまでに5試合親善試合を行っている。そのうち3試合はワールドカップ直前の調整の試合で、強豪国との対戦は3月のスペイン戦だけであり、0-2で敗れている。昨年はワールドカップ予選が8月にあり、さらにプレーオフにもつれ込んだため、親善試合は3試合しか行っていない。この中でワールドカップの決勝トーナメントまで進んだのは2月に対戦したアルゼンチンだけであり、この試合も0-2と完敗している。また、ワールドカップに出場しながら、グループリーグどまりだったナイジェリアにも敗れている。さらに2008年までさかのぼると、親善試合を8試合行っている。ワールドカップで4位になったウルグアイ、ベスト8に入ったパラグアイと引き分けている。またこの年の2月には欧州選手権出場を逃したイングランドに勝利し、3月には欧州選手権で優勝することになるスペインに敗れている。
すなわち、近年、フランスは親善試合でも力のあるチームとの対戦は多くなく、しかも強豪国相手に勝利していない。今回のワールドカップの結果を実力通りと評価されるのも無理はない。
■イングランド、ブラジルと連戦
しかし、今シーズンは11月にイングランド、来年2月にブラジルと強豪国と親善試合で連戦するという野心的な日程になっている。その第一弾がこのロンドン・ウェンブリーでのイングランド戦である。年初から秋口までの低迷飛行からようやく脱したかどうかを判断する重要な試合であるとともに、今後も決して多くはない格上の戦いでチーム力をあげたいところである。
■2010年ワールドカップ予選では盤石のイングランド
イングランドは2008年の欧州選手権は、最後の最後でクロアチア、ロシアに次ぐ3位に転落し、本大会出場を逃す。予選終了後、監督をスティーブ・マクラーレンからイタリア人のファビオ・カペッロに交代する。
カペッロ監督の元でイングランドは2010年のワールドカップ予選では快調な足取りを見せる。2008年欧州選手権予選でイングランドを予選落ちさせたクロアチアと再び同じグループに入るが、第2戦でクロアチアを4-1と粉砕、1年前の悔しさを晴らす。開幕から7連勝を飾り、8戦目はホームでのクロアチア戦、このクロアチア戦は5-1とゴールラッシュで8連勝を記録するとともに、南アフリカ行きを決める。イングランドにとっては英国から独立した国で行われるワールドカップに初出場(1994年米国大会は予選落ち)することになった。予選突破決定後、ウクライナには敗れ、9勝1敗という欧州ではスペインに次ぐ好成績で南アフリカ行を果たしながら、本大会ではようやくグループリーグを突破、そして決勝トーナメント1回戦では疑惑のゴールの再現はあったものの、ドイツに1-4に屈したのである。(続く)