第1177回 イングランドと親善試合 (2) 欧州選手権予選で2勝1分のイングランド
■ワールドカップの本予選でフランスより好成績を残したイングランド
今回のワールドカップ予選ではようやく本大会出場を決めたが、南アフリカではチームの内紛もあり、惨敗したフランス、一方のイングランドは予選を順調に突破しながら、本大会ではグループリーグから苦戦続きで、決勝トーナメントの1回戦で敗退している。一昨年から今年の夏にかけての両国の戦績を振り返るとイングランドのほうがフランスよりも勝っていることは事実である。
■再出発第1戦は伝説の再戦、ハンガリーと対戦
ワールドカップ後、フランスはローラン・ブラン新監督が指揮を執ることになったが、イングランドはファビオ・カペッロ監督体制を継続する。そのイングランドのワールドカップ後の戦いをフォローしてみよう。6月27日のブルームフォンテーヌでのドイツ戦の屈辱的な敗戦から先をかけてのリスタートは8月11日、ロンドンはウェンブリーでハンガリーを迎え行われた親善試合であった。1953年11月25日にウェンブリーで行われたこのカードは伝説の試合となっている。それまで欧州大陸のチームにウェンブリーでは敗れたことがなかったイングランドがマジック・マジャールの前に3-6と完敗を喫した試合である。イングランド、そして世界のサッカーの歴史のターニングポイントとなった試合である。
その伝説の試合から57年経ち、その試合を直接経験している世代も少なくなったのであろうか、ウェンブリーには空席が目立つ。そしてイングランドは前半を無得点で終え、ブーイングを浴びながらスリーライオンズはロッカールームに引き上げる。後半に入っても得点をあげることはできず、62分にオウンゴールでリードを許す。しかし、ここで意地を見せたのが主将のスティーブン・ジェラードであった。69分に同点ゴール、そして73分に逆転ゴールをあげる。イングランドは57年前に惨敗した相手に、逆転勝利したが、カペッロ監督はこの試合で4人の新人をデビューさせており、欧州選手権予選に向けての意欲を明確にしたのである。
■欧州選手権予選は連勝スタート
9月初めから始まった欧州選手権予選でイングランドは第1シードとしてグループGに入る。第1戦は9月3日にウェンブリーにハンガリーと同じ東欧のブルガリアを招く。ブルガリア相手にイングランドは試合を完全に支配し、4-0と完勝し、完璧な試合内容で欧州選手権予選の第1戦を終えたのである。
第2戦はその4日後の7日にスイスのバーゼルへと移動する。相手のスイスは第2シード、序盤の天王山となる試合であった。ウェイン・ルーニーがブルガリア戦直後にスキャンダルを報道され、チームからの離脱が心配されたが、仲間とともにバーゼル入りする。そしてスイス戦でルーニーは先制点を奪う活躍を見せる。この試合もイングランドは3-1と勝利し、9月の2試合で連勝したのである。
■伏兵モンテネグロとウェンブリーでスコアレスドロー
10月のインターナショナルマッチデーは8日と12日が準備されていたが、イングランドの所属するグループGは5チームから形成されるため、イングランドは8日には試合を行わなかった。10月は12日の試合だけとなったが、この試合はホームのモンテネグロ戦である。モンテネグロは第5シードであり、グループGの中の最弱チームであると目されていた。ところが開幕戦でウェールズをホームで1-0と下す。ウェールズは第4シードであり、モンテネグロのホームゲームであったことを考えれば、それほどの驚きを与えたわけではなかった。しかし、4日後の第2戦ではアウエーでブルガリアを1-0と完封する。また10月に入って8日に行われたホームのスイス戦も1-0と3連勝を飾り、試合のなかったイングランドをかわして首位に躍り出る。
そして12日のウェンブリーの試合は誰も予期しなかった首位決戦となった。この試合、イングランドは優勢に試合を進めるが、決定力を欠き、無得点となる。逆にモンテネグロは試合終了直前にクロスバーをたたくシュートがあり、サッカーの母国のファンをひやりとさせたが、スコアレスドローに持ち込み、首位の座をキープしたのである。
逆転首位通過を狙うイングランドもこのフランス戦で手ごたえをつかみたいのである。(続く)