第1261回 フランス代表の東欧3連戦(6) 復活を期すポーランドのサッカー

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■まだ完成していないワルシャワの国立競技場

 代表デビュー戦となったユネス・カブールとマルバン・マルタンの2人の活躍で終盤に3ゴールをあげて、ウクライナを4-1と一蹴したフランス、東欧3連戦の最終戦は6月9日に行われるポーランド戦である。ベラルーシ戦を経験豊富なメンバーで戦い引き分け、ウクライナ戦は経験の少ないメンバーで戦い先述のとおり勝利した。そしてこの最終戦はどのようなメンバーで臨むのであろうか。
 ポーランド戦の舞台はワルシャワのポーランド陸軍競技場である。日本でいえば戸山グラウンドと言うところであろう。戸山グラウンドと違う点は3万人以上の観客収容力があり、強豪のプロチーム、レギア・ワルシャワの本拠地となっていることであろう。ポーランドは来年ウクライナとともに欧州選手権を開催し、4都市が開催都市となっているが、首都ワルシャワは国立競技場で試合が行われる。この国立競技場はまだ建設中であり、8月にオープンする予定であり、初めてのサッカーの試合はポーランドとドイツの親善試合が9月に予定されている。

■1980年代を最後に衰退したポーランドのサッカー

 ポーランドは東欧の強豪として名をはせており、本連載の読者の皆様も、1979年のワールドユースでポーランド代表が活躍したことをよくご記憶であろう。しかし、ポーランドは東欧経済の疲弊に伴い、力を失った。国際舞台での華やかな実績は1982年のワールドカップでの3位が最後である。フランスとの対戦成績もそれを如実に表している。これまでの両国の対戦成績はフランスの7勝5分3敗であるが、ポーランドがフランスに勝利したのは、1982年8月の親善試合が最後である。それ以降の成績はフランスが2勝4分と圧倒している。

■欧州選手権めざし強化途上のポーランド

 しかし、今世紀に入って、2002年と2004年のワールドカップに連続出場、そして欧州選手権も2008年大会に出場しており、1990年代は一度も出場することのなかった大舞台に進出している。そして2007年には2012年の欧州選手権の共同開催国となり、強化にも力を入れている。
 欧州選手権予選がないため、向こう2年間は親善試合で力を蓄えていくことになるが、昨年10月には北米で、そして今年2月にはポルトガルで複数国の集まる大会に参加したほか、アウエーでの試合を数多く経験している。ポーランド代表が国内で試合を行ったのは昨年11月のコートジボワール戦が最後で、それ以来7か月ぶりにこの6月はアルゼンチン、フランスという強豪をホームに迎えて試合を行う。6月5日にアルゼンチンを迎えて行った一戦はポーランドが2-1と勝利している。

■ドイツチャンピオンのボルシア・ドルトムントの3人衆

 このポーランドの屋台骨となっているのが今季のドイツのリーグチャンピオンとなったボルシア・ドルトムントに所属するルカシュ・ピズチェク、ヤコブ・ブラスチコフスキー、ロベルト・レワンドフスキーの3人である。3人ともリーグ戦ではほぼ全試合に出場しており、リーグ優勝に貢献している。3人とも20代中盤であり、今後のポーランドサッカーを支えていく存在となるであろう。そしてリーグ優勝ということで忘れてはならないのが、フランスリーグのチャンピオンチームのリールに所属するルドビック・オブラニヤックである。オブラニアックはこれまでに15試合ポーランド代表として試合に出場したが、代表にデビューしたのは2年前のギリシャ戦であった。この代表デビュー戦でオブラニアックは2得点をあげる。前回の本連載で紹介したマルタンやジネディーヌ・ジダン同様に代表入りして初めての試合で2ゴールをあげるという離れ業をやってのけたのである。
 このようにポーランドの先発メンバーのうち、4人が欧州のメジャーリーグの優勝メンバーであるが、一方のフランスはマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のパトリス・エブラとバルセロナ(スペイン)のエリック・アビダルだけなのである。(続く)

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