第1264回 2011年女子ワールドカップ(2) 国内無敵のリヨン、女子チャンピオンズリーグで優勝
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■国内では驚異的な強さを誇るリヨン
昨年の女子チャンピオンズリーグでは決勝戦でドイツのポツダムにPK戦の末敗れたリヨンであるが、今季もリーグ戦では無敵であった。女子のフランスリーグは12チームで構成されており、ホームアンドアウエーの総当たり方式で行われるが、リヨンは何と22戦全勝、得点106、失点6、得失点差は実に+100という驚異的な強さで国内リーグ5連覇を果たしたのである。1試合当たりの平均得点(5点)がシーズン通じての失点(6点)とほとんど変わらず、得点ランキングの上位は得点王こそ逃しているがリヨンの選手ばかりである。
■男子と少々異なる女子のチャンピオンズリーグ
そのリヨンは女子チャンピオンズリーグで欧州の頂点を目指す。競技人口やプロチームの数こそ少ないが、女子も男子と似たフォーマットでチャンピオンズリーグが行われる。ただ、男子と大きく異なる点はグループリーグの位置づけであろう。男子の場合、ホームアンドアウエーで9月から12月にかけてグループリーグが行われるが、女子の場合は、8月にセントラル方式で総当たり方式のリーグ戦が行われる。さらに、リヨンやポツダムなどのトップレベルのチームはグループリーグに出場せず、ノックアウト方式の決勝トーナメントから出場する。したがって、女子チャンピオンズリーグと言いながらリヨンはリーグ戦を戦っていない。
リヨンは9月から行われた決勝トーナメントのベスト16決定戦でオランダのチャンピオンチームであるAZアルクマールと対戦、アウエーの第1戦を2-1と勝利し、ホームの第2戦は8-0と国内リーグ並みのスコアで勝利し、ベスト16に進出する。
ベスト8決定戦は11月中旬に行われた。リヨンはロシアのロシアンカと対戦する。この戦いもアウエーで第1戦を行い、6-1と大勝、リヨンに戻ってきてからの第2戦も5-0と大勝し、3月に行われる準々決勝に駒を進める。
このように、レベル差が大きく、トップチームの数が限定されている女子サッカーは大会前半は大差の付く試合が多く、グループリーグが男子のように成立しない理由はそこにある。
■厳しい戦いを勝ち抜いた準々決勝、準決勝
フランスからの女子チャンピオンズリーグに臨んだチームはリヨンとリーグ2位のジュビジーである。ジュビジーもまた準々決勝まで進出している。ベスト8の顔ぶれはフランス勢、ドイツ勢、イングランド勢がそれぞれ2チーム、それ以外にロシア勢とスウェーデン勢が1チームずつ残っている。
有力チームの少ない女子サッカーと言っても準々決勝以降は厳しい戦いが続く。ジュビジーの準々決勝の相手はポツダムである。ジュビジーは昨年の欧州チャンピオンに、アウエーの第1戦で0-3と敗れ、ホームでも2-6と大敗し、ベスト8で姿を消した。一方のリヨンであるがロシアのズベズダと対戦、ペルミで行われたアウエーの第1戦はスコアレスドロー、そしてホームでの戦いは1-0の辛勝でかろうじて準決勝に進出したのである。
準決勝は4月の戦いとなり、男子とほぼ同じスケジュールである。リヨンの相手はイングランドのアーセナル。男子はチャンピオンズリーグの上位の常連チームであるが、まだ欧州の頂点に立ったことはない。しかし、女子は男子の成し遂げていない優勝を2007年に達成している。男子同様多くの日本人の女子選手が所属したことがあることから日本のファンの皆様にはなじみのあるチームであろう。
まずリヨンがホームにアーセナルを迎え、2-0と先勝する。そしてアーセナル女子の本拠地メドーパークで行われた第2戦でもリヨンが3-2と勝利し、リヨンは2年連続の決勝進出を果たす。もう一方の準決勝はドイツ勢同士の戦いとなり、ポツダムが1勝1分でデュイスブルクを下す。
■2年連続のポツダムとの決勝で快勝し、フランス勢として初の優勝
女子チャンピオンズリーグは10回目の歴史で初めて2年連続同じ顔合わせの決勝戦となった。決勝の舞台はロンドンのウレイブン・コテージ、かつてのフラムの本拠地である。この試合は27分位CKから1メートル85センチの長身DFのウェンディ・ルナールが先制点をあげ、リヨンが優位に試合を運ぶ。そして85分にはスイス代表のララ・ディッケンマンが追加点をあげ、ワールドカップ前のビッグタイトルはフランス勢が初めて獲得したのである。(続く)