第1271回 2011年女子ワールドカップ(9) 史上最高の4位、ロンドンへつながる夢

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■選手3人を入れ替えて臨む3位決定戦

 世界ランキング1位で過去19年間勝ったことがなかった米国を圧倒しながらもカウンターアタックによる失点を重ね1-3と敗れたフランスは、決勝進出を絶たれ、3位決定戦に回ることになった。3位決定戦の相手は日本に敗れたスウェーデンである。
 3位決定戦の戦い方は2つある。まずは銅メダルを目指してベストメンバーで戦う勝利を目指す戦い方。そしてもう一方はこれまでの試合に出場しなかった選手に経験を積ませるためのある意味消化試合的な戦い方。今回の3位決定戦はすでに来年のオリンピック出場権も両チームに確定していることから、銅メダルだけが勝利へのモチベーションとなった。フランスのブルーノ・ビニ監督は先発メンバーを3人入れ替えた。まず、ドイツ戦でミスを犯してメンバーから外されたウェンディ・ルナールを復帰させ、右サイドDFではなくストッパーとして起用する。ルナールは1メートル85センチの長身選手であり、コンビを組む「岩」ことローラ・ジョルジュよりも13センチも高い。そしてルナール、ジョルジュ、エロディ・トミの3人はアンティーユ諸島の出身でこのトリオはチームのムードメーカーである。
 右サイドのDFにはコリン・フランコが入る。そして、エースストライカーのマリー・ロール・デリーは負傷のためベンチスタートとなり、ユージェニ・ルソメが最前線に位置する。
 一方のスウェーデンは主将のカロリーネ・セゲルが負傷のためメンバーから外れている。

■前半に予期せぬアクシデント、2人が負傷で退場者

 3位決定戦はフランスが開幕戦を戦ったジンスライムのライン・ネッカー・アリーナで行われ、2万6000人以上の観衆が集まった。試合はフランスが終始押し気味で進める。しかし29分にスウェーデンがロングボールを前線に放り込む。オフサイド気味であったが、スウェーデンのトップはジョルジュをかわし、フランスGKのベランジェール・サポウィックスをかわし先制点をあげる。このプレーでサポウィックスが負傷する。その直後の32分、今度はベスト11にノミネートされたルイーザ・ネシが負傷、このタイミングでサポウィックスとネシがベンチに下がるという予想外の展開となる。サポウィックスは退場処分となったドイツ戦に次ぎ、試合途中でピッチを去る。

■スウェーデンを圧倒するが、またも勝負に負ける

 しかし、ネシに代わって入ったエロディ・トミが活躍し、後半に入って56分に同点ゴールを決める。
 同点に追い付かれたスウェーデンは焦りが生じ、68分にはレッドカードで1人少なくなり、ますますフランスの一方的な試合となる。しかしながら決勝点はスウェーデン、81分にCKのチャンスからボレーでゴールネットを揺らす。
 1-2と言うスコアで敗れはしたが、シュート数はスウェーデンの10に対し、ほぼ2倍の19と、フランスは最後の3位決定戦も試合に勝って勝負に負けた。

■競技人口が課題のフランス女子サッカー

 史上最高の成績を残したフランス女子代表であるが、フランス女子サッカーの課題は勝負弱さではない。それは競技人口の少なさであろう。フランスでは「サッカーは男子のスポーツ」である。フランスでは、サッカーは192万人の選手登録があるが、そのうち女子はわずか5万5000人、比率にして3パーセントである。他の競技と比較するとバレーボールが女子の比率が高く、12万人の選手登録のうち5万8000人で48パーセントである。競技者数が多いのがバスケットボールとハンドボールで、バスケットボールは46万人の選手登録のうち18万人が女子で39パーセント、ハンドボールは選手登録44万人のうち16万人が女子で37パーセントとなっている。比率だけではなく競技人口の絶対数も他のオリンピック種目の団体競技に比べて少ない。さらにフランスの場合深刻なのが、競技人口の絶対数の減少であり、2006年から女子の登録数は減少している。
 米国やドイツは100万人以上の選手登録があり、競技の裾野と言う点では課題がある。
 そして、女子のチーム数についても同様であり、優秀な女子アスリートがサッカーを選択するチャンスは限定されている。クラブチームのリヨンのチャンピオンズリーグ優勝、代表チームのワールドカップ4位がフランスの女子サッカーを発展させるきっかけとなることを期待したい。(この項、終わり)

このページのTOPへ