第1282回 モンペリエでチリとドロー(1) ストッパーの人選に悩むローラン・ブラン監督
3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■9月に再開する予選に向けた8月の親善試合
前回までの本連載ではコロンビアで開催されている20歳以下ワールドカップについて取り上げ、フランスがグループリーグ最終戦でマリに勝利し決勝トーナメント進出を決めたことを取り上げたが、グループリーグの最終戦と決勝トーナメント1回戦の間に、フランスではフル代表がチリと親善試合を行うことから、コロンビアでの戦いのレポートを中断し、今回からはその模様について紹介したい。
真夏の親善試合ということで定着した8月半ばのインターナショナルマッチデーであるが、秋からのワールドカップや欧州選手権の予選に向けてチームを作り上げていき貴重な機会である。今年の場合は9月2日にアルバニア、6日にルーマニアとアウエーゲームが続く。
■4年ぶりに開催される予選期間中の8月の親善試合
南アフリカでのワールドカップ本大会の直後に行われた昨年は、ノルウェーと戦ったが、ワールドカップに出場した選手以外でチームを構成して戦い、1-2と逆転負けを喫する。6人の選手がこの試合で代表にデビューし、アディル・ラミ、ヤン・エムビラ、ギヨーム・オラオがその後代表メンバーに定着した。
一昨年は今年同様、予選期間中に8月を迎えるが、この時期に親善試合ではなく、ワールドカップ予選が行われた。フェロー諸島と対戦し、若手選手を多数起用し1-0と辛勝したが、力量差もあることから、秋からのチーム編成に向けた新戦力のテストやチーム力の向上につながりにくい試合であったと言えよう。
したがって、今年同様に予選期間中の8月に親善試合を行うのは本連載第751回から第753回で紹介した4年前のスロバキア戦以来である。この時は欧州選手権予選でイタリア、スコットランドと同じグループになるという厳しい状況の中で9月初めに行われるイタリア、スコットランドとの連戦に向けて大量34人の選手を招集し、スロバキア戦の前日にA'代表の試合を6年ぶりに行っている。
■7月に負傷したフランク・リベリー
このように戦力を見直す機会となる8月の親善試合であるが、ローラン・ブラン監督は23人の選手を選ぶ際に2つ悩まなくてはならなかった。まず、ドイツのバイエルン・ミュンヘンに所属するフランク・リベリーが7月下旬の練習でひざを負傷したことである。ドイツのブンデスリーガは8月7日に開幕するが、ボルシア・メンヘングランドバッハとの開幕戦を前にリベリーは8月3日の練習試合に20分ほど出場している。このリベリーを招集するか否かでブラン監督はまず悩んだ。
リベリーの招集に関してはいずれ復帰した際は攻撃の軸となる選手であることが明白であり、9月の予選には間に合うであろうからそれほど大きく悩むことはなかった。
■負傷者、出場停止で人材難のストッパー陣
大きな悩みはストッパーである。自らフランス代表の不世出のストッパーとして活躍したブラン監督は昨今のこのポジションの人材不足については苦々しく思っているであろう。さらに、このポジションで現在レギュラーと言えるフィリップ・メクセスは負傷で戦線を離れている。また、昨年のノルウェー戦にデビューしてからポジションをつかんだラミは累積警告のため、アルバニア戦は出場停止である。したがって、アルバニア戦に向けた守備体系をテストするためにはラミ以外のメンバーで臨まなくてはならない。
6月の東欧遠征時のストッパーはラミ、ママドゥ・サコ、ユネス・カブールが選出され、ベラルーシ戦はラミとサコ、ウクライナ戦はカブールとサコ、ポーランド戦はカブールと本来はサイドバックのエリック・アビダルがそれぞれペアを組んだ。
東欧遠征のメンバーではサコとカブールが残るが、21歳のサコは代表歴4試合、25歳のカブールは代表歴2試合という経験の浅いペアになってしまう。2月のブラジル戦で代表入りし、6月に負傷したローラン・コシールニーなども考慮したストッパーの選出にブラン監督は悩んだのである。(続く)