第1323回 米国、ベルギーと親善試合(3) ユルゲン・クリンスマン率いる米国代表

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■デビッド・ベッカムの移籍のうわさ絶えないパリサンジェルマン

 1990年のイタリア大会以来、ワールドカップ本大会出場を継続中の米国、欧州、南米以外の地域ではメキシコ、韓国に比肩するワールドカップ常連国となった。
 米国のサッカーが今週はフランスをにぎわせている。それは米国のメジャーリーグサッカー(MLS)のロサンジェルス・ギャラクシーに所属するデビッド・ベッカムがパリサンジェルマンに移籍するといううわさが絶えないからである。ビッグクラブでありながら、1994年以来リーグ優勝から遠ざかっているパリサンジェルマンは今季は大型補強を行った甲斐があり、リーグ戦で首位を走っている。毎試合、本拠地のパルク・デ・プランスは満員であり、観客動員のためのベッカム獲得ではなく、あくまでも戦力として36歳のベッカムに期待している。

■メジャーリーグサッカーの所属するフランス人選手

 ベッカムだけではなく、フランス代表だったティエリー・アンリもニューヨーク・レッドブルズに所属しており、ピークを越えた欧州の有名選手が何人か所属しているが、決してレベルが低いわけではない。アンリと同じニューヨーク・レッドブルズにはアンリと同郷のグアドループ代表のステファン・オーブレイが所属しており、シアトル・サンダースではかつてトゥールーズに所属したジュリアン・ボーデが活躍している。また観客動員も1試合当たり平均1万7000人であり、欧州のトップクラスよりもやや少ない程度である。
 米国代表は来年から始まるワールドカップ予選に向けて、この11月には欧州遠征を行い、11月11日にはフランス、15日にはスロベニアと対戦する。

■欧州組が主流を誇る米国代表

 米国代表はこの欧州遠征のために22人のメンバーを選出した。22人のうち、国内のMLSのクラブに所属するのは5人だけであり、隣国メキシコのクラブに所属する選手は2人、それ以外の15人は欧州のクラブに所属している。7人がドイツのクラブであり、イングランドとスコットランドが2人ずつ、残りはデンマーク、ポルトガル、イタリア、オランダに各1人ずつと分散している。

■米国代表を率いるドイツ人のユルゲン・クリンスマン監督

 そしてこの米国代表を率いるのがドイツ人のユルゲン・クリンスマン監督である。クリンスマン監督は、ドイツ(西ドイツ)代表として活躍し、1990年のワールドカップ優勝メンバーとなっただけではなく、モナコにも所属し、カップウィナーズカップで準優勝に導いている。
 そして引退後、解説者となり、初めて指導者となったのは2004年の欧州選手権ポルトガル大会の後に、ワールドカップの優勝時のチームメートのルディ・フェラーの後を受けて、ドイツ代表の監督となる。監督デビューがいきなり代表チームであること自体が驚きであり、苦戦が続く。このころから生活の拠点を米国のカリフォルニアに移しており、通常はカリフォルニアに住み、試合の前だけドイツをはじめとする欧州に駆けつけるという生活であり、ファンからの批判は絶えなかったが、2008年の地元開催のワールドカップでは下馬評を覆す活躍で3位に入る。近年、欧州でよくみられる「名選手、若くして名監督となる」というキャリアをスタートさせた。銅メダルを置き土産に代表監督を勇退、2年のブランクののち、晩年に所属したバイエルン・ミュンヘンの指揮を執る。そして今年7月末に米国代表監督として招聘されたのである。
 クリンスマン監督は米国のスタイルをまだ模索中であり、就任以降のインターマッチデーには必ず試合を行い、デビュー戦は8月10日に行われたホームでのメキシコ戦、先行されながら1-1のドローに持ち込む。9月はタフな日程となった。2日はロサンジェルスでコスタリカと対戦し、後半走り負けて0-1と敗れ、その4日後には大西洋を渡り、ベルギーと対戦する。この試合も0-1と惜敗し、就任以降1回も勝ち星のないまま10月を迎えた。10月の試合は前回の本連載で紹介したとおり、8日のホンジュラス戦では1-0で初勝利、11日のエクアドル戦では0-1とまた敗れる。
 クリンスマン監督は1勝4敗と言う成績で欧州入りしたのである。(続く)

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