第1324回 米国、ベルギーと親善試合(4) 4人が代表にデビューした米国戦

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■7万人以上の観衆が集まったスタッド・ド・フランス

 来年の欧州選手権出場を決定してから初めての試合となる米国戦、会場のスタッド・ド・フランスは7万以上の観衆が集まった。親善試合で7万人以上の観衆がスタッド・ド・フランスに集まるのは今年2月のブラジル戦以来のことである。

■フレッシュなメンバーが加わったフランス

 フランスのメンバーは代表メンバーとして十分な実績のある選手とこれから経験を積まなくてはならない選手がピッチに交じって散らばった。GKはウーゴ・ロリス、キャプテンマークを左腕につける。DFは右サイドはマチュー・ドビュッシー、左サイドはジェレミー・マチュー、中央の2人はアディル・ラミとローラン・コシールニー、マチューとコシールニーは代表デビューとなり、ドビュッシーも代表2試合目である。かろうじてラミが代表15試合目であるが、DF陣はフレッシュなメンバーで臨むことになった。
 MFは守備的な位置に2人、アルー・ディアラが右、ヤン・エムビラが左に入る。攻撃的な位置は両翼に開き、右はジェレミー・メネス、左はフランク・リベリーである。そして2トップは右にケビン・ガメイロ、左にカリム・ベンゼマである。MF以上はある程度の経験を積んだ選手が多く、代表歴一桁はメネスとガメイロが該当し、いずれもこの試合が8試合目である。また、負傷で10月は代表を離れていたエースのベンゼマが今年3月のクロアチアとの親善試合以来久しぶりにブルーのユニフォームを着てスタッド・ド・フランスに戻ってきた。

■欧州で活躍する選手が中心の米国

 対する米国は、欧州で活躍する選手で固めてきた。先発メンバーのうちMFのキール・ベッカーマン(リアル・ソルトレーク)とブレック・シー(ダラス)以外の9人は欧州のクラブに所属する選手である。イングランドのプレミアリーグからはエバートンのGKのティム・ハワード、マンチェスター・ユナイテッドから移籍してエバートンでは不動のGKとなり、経験も積んだ。そしてフルアムのMFのクリント・デンプシー、MFでありながらチームで最多得点をあげており、得点力のあるシャドーストライカーである。また、ユルゲン・クリンスマン監督が育ち、活躍したドイツのブンデスリーガからはニュルンベルグのティモシー・チャンドラー、ハノーバーのスティーブ・チェルンドロ、ホッフェンハイムのダニー・ウィリアムズと3人がピッチの上に立つ。そしてスコットランドのプレミアリーグからはグラスゴー・レンジャーズのカルロス・ボカネグラとモーリス・エドゥが出場する。ボカネグラは代表歴が間もなく三桁になり、主将を務めるが、昨季まではサンテエチエンヌに所属し、フランスのサッカーに熟知している。

■スーパーサブ、ロイック・レミーのゴールでフランスが勝利

 スタッド・ド・フランスには「星条旗よ永遠なれ」に続き、「ラ・マルセイエーズ」、世界で最も有名な国歌が立て続けに大合唱される。
 試合は開始早々からフランスが支配する。米国の消極的な試合運びもあり、フランスはボール支配だけではなく、次々にシュートを放つ。10月のアルバニア戦では3得点をあげたが、ボール保持率で6割を越えながら、シュートは16本、シュートの正確性でアルバニアを一蹴したフランスであるが、この日もまたボール保持率は6割近くを記録した。
 しかし、前半はなかなか得点機に恵まれず、7万大観衆にはフラストレーションがたまる。前半は両チーム無得点でハーフタイムを迎える。
 後半に入り、ローラン・ブラン監督は次々と選手を入れ替える。まず、最前線にいながら得点機を生み出せなかったガメイロに代わり、モンペリエに所属し、現在得点ランキングトップのオリビエ・ジルーを投入、ジルーは代表デビューである。さらにその直後にエムビラに代わってマキシム・ゴナロンを投入し、何とピッチの上には代表デビューした選手が4人になる。さらに左サイドでチャンスを作れなかったリベリーに代わってマルバン・マルタン、トップのベンゼマに代わってロイック・レミーをピッチに送る。ここからフランスはシュートの雨をプレミアリーグの誇る守護神ハワードに浴びせる。
 72分にマルタンからのパスをレミーが決める。レミーは代表16試合目であるが、そのうち9試合は途中出場、そして短い出場時間で得点をあげており、まさにスーパーサブとなった。フランスは25本のシュートを放ちながらわずか1点、しかし、4人の新戦力が活躍し、収穫ある勝利となったのである。(続く)

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