第1325回 米国、ベルギーと親善試合(5) ベルギーの若き天才、エデン・アザール

 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、救援活動、復旧活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■4人が代表デビューを果たした米国戦

 代表デビューが先発2人(ジェレミー・マチュー、ローラン・コシールニー)、途中出場が2人(オリビエ・ジルー、マキシム・ゴナロン)と、大量4人が初めてブルーのユニフォームに袖を通した米国戦、1-0と言うスコアは低調ではあったが、途中出場したメンバーの積極性が目立った試合となった。
 フランスは11月15日にベルギーと親善試合を行う。舞台は同じく、スタッド・ド・フランス、フランス代表は10月7日のアルバニア戦から4試合連続して同じ競技場で試合をすることになる。

■過去50年間でフランス国内では1回しか勝っていないベルギー戦

 ベルギー代表については本連載第1321回で紹介したとおり、あと一歩のところでグループ2位を逃している。本連載でもしばしば紹介してきたが、フランス代表が1904年に初めて試合を行った相手がこのベルギーであり、これまでにフランス代表が最も多くの試合を行っているのがこのベルギーなのである。過去の対戦成績はフランスの24勝17分29敗とフランスが負け越している。ワールドカップや欧州選手権の本大会や予選で最後に対戦したのは今から25年前の1986年ワールドカップ・メキシコ大会の3位決定戦である。この時はフランスが4-2と勝利している。
 それ以来、両国は親善試合で5回対戦しており、その戦績はフランス3勝1分1敗である。ただし、この3勝はアウエーあるいは中立地での対戦であり、フランス国内での対戦は不思議なことに勝利がなく、1992年は終了間際のジャン・ピエール・パパンのゴールで追いつき、2002年には韓国に出発する直前にスタッド・ド・フランスで対戦し、ロスタイムに勝ち越し点を奪われ、1-2と敗れている。
 フランス国内での最後の勝利は30年前の1981年のワールドカップ・スペイン大会予選までさかのぼらなければならない。さらにその前のフランスの国内での勝利は1956年に行われたワールドカップ・スウェーデン大会予選、すなわち、過去50年間でフランスは国内でベルギーに1回しか勝利したことがないのである。

■若くして国外のクラブに所属し、代表経験を積んでいるベルギーの選手

 さて、赤い悪魔と言われるベルギーは今回の欧州選手権予選で敗退し、11月の親善試合は11日にリエージュでルーマニアと対戦し、2-1と勝利し、フランスに乗り込んできた。  ベルギーはほとんどの選手が国外のクラブに所属している。この連戦のために監督はジョルジュ・リーケンス監督は25人の選手を選んだが、その中でベルギー国内のクラブに所属しているのは6人だけであり、そのほとんどは控え選手である。
 また元々若い選手が中心のチームであり、20代前半の選手が過半数を占める。ベルギーの選手像は若くして国外のクラブに移籍し、代表としてある程度のキャリアを積んでいる、ということになる。

■ベルギー代表の選手像を象徴するリールのエデン・アザール

 このベルギーの選手像を象徴しているのが唯一フランスのクラブに所属しているエデン・アザールである。高い技術力を持ったサイドハーフのアザールは昨年のリールの二冠に大きく貢献している。このアザールは14歳の時にベルギーを離れ、リールの下部組織に加入する。16歳でリーグ戦にデビューした。今年の1月に20歳になったばかりの選手であるが、20歳になる昨季はリーグ戦38試合すべてに出場し、8得点を記録し、リーグの最優秀選手に選出されている。
 また、代表チームでは16歳の時に17歳以下ワールドカップのメンバーに選出され、背番号10をつけてチームの中心として活躍し準決勝に進出し、スペインにPK戦で敗れている。2008年のルクセンブルク戦で代表にデビューし、わずか17歳で赤い悪魔の一員となった。これまでベルギー代表では26試合に出場しているが、得点はわずか1、10月7日の欧州選手権予選のカザフスタン戦でようやく待望の初ゴールをあげた。もし、この若き天才が代表でもその才能をゴールに結びつけていれば、欧州選手権予選を勝ち抜いていたはずである。
 フランスリーグでいま最も輝いている選手が、フランスカップの決勝以来、半年ぶりにスタッド・ド・フランスのピッチの上に立つのである。(続く)

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