第1352回 地殻変動、アフリカ選手権(3) アフリカ選手権の影響を受けるフランスのトップクラブ
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■最大6試合アフリカ選手権の影響を受けるフランスのクラブ
前回の本連載はフランスのクラブから61人が今回のアフリカ選手権に出場したことを紹介したが、今度は逆にフランスの各クラブがどれだけ、このアフリカ選手権に選手を送ったかを見てみよう。大会は1月21日に始まり、グループリーグが終わるのが2月1日、決勝トーナメントは2月4日と5日に準々決勝、2月8日に準決勝、決勝は2月12日に行われる。この間のフランスのサッカーカレンダーであるが、1月21日の週末にフランスカップのベスト16決定戦、次の1月28日の週末にリーグ戦第21節、1月31一2月1日にはリーグカップの準決勝、2月最初の4日の週末はリーグ戦第22節、そして2月7日にフランスカップのベスト8決定戦、2月11日の週末にはリーグ戦第24節が行われ、チームによってはアフリカ選手権の影響を6試合にわたって受けることになる。
■1部20チーム中18チームがアフリカ選手権に選手を派遣
61人のフランスのクラブに所属している選手のうち、1部リーグのチームに所属している選手は48人である。2部リーグでアフリカ選手権に選手を輩出しているチームは7チームだけであり、フランスリーグの1部で活躍するレベルではないとアフリカ選手権には出場できないことを示している。最も多くの選手を抱えているチームはモンペリエ、ボルドー、ニース、マルセイユ、レンヌ、サンテチエンヌ、ブレストという1部のクラブがそれぞれ4人の選手をアフリカ選手権に派遣している。1部の20チーム中、アフリカ選手権に選手を送っていないのはアジャクシオとカーンだけである。
前回大会はニースが8人、マルセイユが4人派遣していたが、主力選手が大量に離脱したニースは大会期間中のリーグ戦では3連敗を喫してしまう。今回はニースのように突出した人数を派遣したチームはないが、アフリカ選手権に選手を派遣したチームが多いことが特徴である。これはフランスのクラブがアフリカの代表クラスの選手に依存はしているものの、シーズン中のアフリカ人選手の大量離脱を考えるとそれほど多くの選手を抱えるわけにはいかず、バランスのとれたチーム編成をしていることの表れであろう。
また、前回大会は日本のJリーグの浦和レッズからもウィルフリード・サヌがブルキナファソ代表に選出されたが、今回は日本からのアフリカ選手権出場はなく、日本のサッカーファンにとってはさびしい大会となったであろう。
■6試合に影響を受けるマルセイユとリヨン
結局、現在のフランスでアフリカ選手権の影響を最も多く受けることになるチームはフランスカップでもリーグカップでも勝ち残っているマルセイユとリヨンである。マルセイユはシャルル・カボレ(ブルキナファソ)、アンドレ・アイェウ、ジョルダン・アイェウ(以上ガーナ)、スレイマン・ディアワラ(セネガル)の4人。リヨンはジョン・メンサー(ガーナ)、バカリ・コネ(ブルキナファソ)、シディ・コネ(マリ)の3人がアフリカに渡っている。ただし、これ他のうちレギュラーとして定着しているのはマルセイユのアンドレ・アイェウとディアワラ、リヨンのバカリ・コネであり、両チームとも選手層は厚く、影響は大きくはないであろう。
■影響が大きい2位モンペリエと少ない首位パリサンジェルマン
アフリカ選手権の影響が大きいと懸念されるのが現在リーグ2位のモンペリエであろう。4人のアフリカ選手権組のうち、ジャメル・サイヒ(チュニジア)、ユーネス・ベルハンダ(モロッコ)、スレイマン・カマラ(セネガル)はほぼ全試合に出場しており、追う立場としては厳しい。ただ、モンペリエとしてはもし予選が順当な結果であったならばカメルーンのアンリ・ベディモと、ナイジェリアのジョン・ウタカもチームを離脱していたわけであり、そうなっていれば2年前のニースのような厳しい戦いを強いられていたであろう。
一方、アフリカ選手権の影響をあまり受けなかったのが首位のパリサンジェルマンである。主力は外国人選手であるが南米勢主体である。アフリカ選手権に奪われた選手はコートジボワールのシアカ・ティエネのみであり、マリのモハメド・シソッコは代表から外れた。アフリカ選手権による選手の離脱の多寡がリーグ戦をはじめとするタイトル争いに影響しているのである。(続く)