第1424回 ロンドンオリンピック間もなく開幕(1) 初出場となる女子サッカー
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■男子16チーム、女子12チームで争われるサッカー競技
欧州選手権が開催される年はオリンピックイヤーである。男子は23歳以下の代表16チーム、女子はフル代表12チームが、ロンドンで64年ぶりに開催されるオリンピックで金メダルを目指す。
近代オリンピックを提唱したピエール・クーベルタン男爵を生んだフランスであるが、サッカー競技においては1984年のロサンジェルス大会で男子が金メダルを獲得したくらいでこれまでこれといった実績を残していない。もっとも、サッカー競技自体がアマチュア選手だけで争われてきた1980年代まではプロスポーツの発達したフランスにとってオリンピックのサッカーは大きな意味を持たなかったであろう。
しかし、23歳以下と年齢制限のある選手で争われるようになった1990年代以降は「ジュニアワールドカップ」としての価値を見い出した。また、1996年のアトランタ大会からは女子サッカーも行われるようになり、今回で5回目の開催となる。このように、サッカーの普及に大きく貢献している大会であると言えよう。
■過密日程で他の大会がオリンピック予選を兼ねる
このロンドンオリンピックのサッカー競技であるが、フランスは、女子は本大会に出場するが、男子は本大会に出場することができない。欧州の過密スケジュールでは、オリンピック予選を独立して開催することは難しい。したがって、他の大会の成績でオリンピック出場国を決めるようになっている。男子は2011年にデンマークで開催された21歳以下の欧州選手権の上位3か国、女子については昨年開催されたワールドカップで欧州勢の中で上位2か国がオリンピックの出場権をつかむ。
■フランスのオリンピック初出場を決めたなでしこジャパン
女子ワールドカップに関しては本連載の第1263回から第1271回で紹介したように、フランスは2回目の出場であったが、グループリーグで、ナイジェリアとカナダに連勝する。グループリーグ最終戦では地元ドイツと対戦し、力及ばず敗れたが、決勝トーナメントに進出する。
決勝トーナメントに進出した8チームのうち、欧州勢はイングランド、ドイツ、スウェーデン、フランスの4チーム。オリンピックでは開催国扱いとなるイングランドを除く、スウェーデン、ドイツ、フランスの3か国で2枚のチケットを争うことになった。準々決勝4試合のうち最初に欧州勢として登場したのはフランスとイングランドである。フランスはイングランドに先制を許したが、88分に同点ゴールが生まれ、延長戦に試合はもつれ込む。延長戦でも決着はつかず、結局PK戦を制したフランスが準決勝に進出する。
そのイングランドの死闘の直後、ドイツ-日本戦がキックオフされる。この試合も延長戦となり、延長後半に日本の丸山桂里奈のゴールで日本が勝利する。日本が勝利した瞬間、フランスのライバルのドイツは準々決勝敗退となり、準決勝に進出したフランスが欧州の代表としてオリンピック初出場を決めたのである。
なお、フランスとともに欧州の代表となったのはこのワールドカップの3位決定戦でフランスを破ったスウェーデンである。
■ブルーノ・ビニ監督の下で急成長したフランス女子
従来、欧州の女子サッカーは北欧勢とドイツなどが強く、フランスは欧州の中においてもBクラスの力しか有していなかった。しかし、2007年に代表監督にブルーノ・ビニが就任し、長期政権の下で、2009年以降は過去最高の成績を残す。2009年に行われた女子の欧州選手権ではグループリーグではドイツに敗れたものの北欧勢のノルウェーに勝利し、初めて決勝トーナメントに進出した。
そして2011年のワールドカップは予選で圧倒的な成績を残し、2回目の本大会出場を果たす。本大会での活躍はすでに紹介したとおりである。その結果として5回目のチャレンジで初めてのオリンピック出場を果たし、活躍が期待されるのである。(続く)