第1432回 スウェーデンに雪辱、オリンピック初出場で準決勝進出
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■昨年のワールドカップ3位決定戦で敗れたスウェーデンと再戦
前回の本連載で紹介したとおりフランスはグループリーグ最終戦でコロンビアに1-0と勝利し、決勝トーナメントに進出した。グループGのもう1試合は米国が北朝鮮を1-0と下した。この結果グループGの順位は首位米国、2位フランスとなった。
グループGの2位は決勝トーナメントの初戦となる準々決勝では、グループFを首位で通過したスウェーデンと対戦する。
フランスと北欧の雄スウェーデンとのこれまでの対戦成績はスウェーデンが12勝2分4敗と大きく勝ち越している。直近の対戦は昨年のワールドカップの3位決定戦。フランスはベストメンバーで臨み、試合内容では圧倒したものの、試合終盤に決勝点を奪われ、スウェーデンが2-1と競り勝ち、メダルを逃している。
■雪辱に燃えるベテランのサンドリーヌ・スーベイラン
その試合でキャプテンマークを付けたのが代表167試合目となるベテランのサンドリーヌ・スーベイランはこのスウェーデン戦で代表から引退するかと思われたが、代表でのプレーを継続する。38歳という年齢もあり、出場機会も減り、オリンピックの第1戦となる米国戦ではキャプテンマークをオフェリー・メイユルーに譲り、ベンチスタートとなったが、米国に逆転負けを喫した次の北朝鮮戦からは先発メンバーになり、主将に復帰、強いリーダーシップを示している。スーベイランをはじめとするベテラン選手にとって、昨年のワールドカップで敗れた米国には負けており、スウェーデンに雪辱して再び決勝で米国と対戦したいところである。
■パス主体のフランスに好都合な天候
グラスゴーのハンプデンパークで行われたスウェーデン戦のフランスの先発メンバーであるが、GKはサラ・ブハディ、DF陣は右からコリン・フランコ、ローラ・ジョルジュ、ウェンディ・ルナール、ソニア・ボンパストール、MFは守備的な位置を1人にしてスーベイラン、攻撃的な位置には右にエリーズ・ビュサグリア、左にルイーザ・ネシブ、FWは右にエロディ・トミ、中央にマリー・ロール・デリー、左にガエタン・ティネである。
必勝を期すフランスは守備的MFを大黒柱のスーベイラン1人に任せ、カミーユ・アビリーに代えてビュサグリアを起用してきた。
攻撃陣のトミ、デリーを軸にした攻撃陣、そして多彩なスーパーサブ、さらには精神的支柱となるベテラン選手の存在がこのチームの生命線といえるであろう。そして今回のオリンピックはフランスにとって追い風となる天候であった。それは英国独特の多雨である。雨によってピッチがぬれ、グラウンダーのパスのスピードが速くなる。この日もキックオフから雨が降り、パスをつなぐフランスにとっては願ってもない天候となった。
■先制を許すもストッパー陣の得点で逆転勝ち
フランスは立ち上がりから試合を支配し、しばしば好機をつかむが、スウェーデンはロングボールで対抗する。13分にはロングボールからの競り合いでフランスGKのブハディとスウェーデンのロッタ・シェリンが接触し、倒れこむ。17分過ぎにはスウェーデンがCKのチャンスをつかみ、2回目のCKはファーポストのニラ・フィッシャーが執念でボールを押し込み、スウェーデンが先制。
フランスはこの失点に動じなかった。29分には左CKからビュサグリアが直接ゴールを狙う。このボールをスウェーデンのGKが処理ミスしたところを最前線にあがっていたDFのジョルジュがヘディングで同点ゴール。さらに39分には敵陣に入ったところでフランスがFKのチャンスを得る。ロングキックの精度の高いスーベイランがゴール前にボールを蹴りこむ。このボールにゴール前に上がっていたストッパーのジョルジュとルナールのコンビがからみ、最終的にはルナールがゴールネットを揺らし、フランスは逆転する。
フランスはその後も試合を支配し、スウェーデンのゴールを許さず、2-1と勝利する。スウェーデン戦の勝利は2005年以来7年ぶりのことであるが、フランス女子代表はオリンピックに初出場で準決勝進出という快挙を達成したのである。(この項、終わり)