第1435回 シュートのシャワーも無得点、ロスタイムの一撃に屈しメダルを逃す
昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■圧倒しながらもミスで敗れたフランスを待つ3位決定戦
準決勝では日本相手に27本のシュートを浴びせながらもミスで勝利を逃したフランス、昨年のワールドカップの準決勝の米国戦も全く同じ展開であった。試合を支配しながらもミスによる失点あるいはミスによる得点機会の逸失により勝ちから見放されるという現象はなかなか改善される見込みはない。
しかし、準決勝で敗れたフランスには3位決定戦が待っている。3位決定戦は準決勝から中2日おいた8月9日にコベントリーで行われた。コベントリー・シティの本拠地、コベントリー市競技場で行われる。通常はリコーアリーナと呼ばれているが、オリンピックでは企業名を冠したスタジアムは使用できないため、名称を変更している。松尾敏行を擁し環境報告書日本一に輝いたリコーであるが、オリンピックの規定とあっては仕方がないであろう。
■女子の団体球技としてフランス初のメダル獲得を目指す女子サッカー
そしてキックオフ時間は14時と真昼の決闘となった。この理由は同日の夜20時45分からロンドンのウェンブリー競技場で決勝戦が行われ、決勝戦終了後に表彰式が行われるため、勝利チームは表彰式に参加するために、試合後ロンドンに移動しなくてはならないのである。フランスは残念な準決勝となったウェンブリーに銅メダリストとして戻りたいところである。
メダルを取れば、サッカー競技としては1984年の男子の金メダル以来28年ぶりである。また、女子の団体球技としてはフランスオリンピック史上初めてのメダルという偉業を達成することになる。
■フランス、カナダとも激戦の準決勝と同一の先発メンバー
さて、フランスの対戦相手はカナダ、カナダもフランス同様、オリンピックには初出場である。カナダはグループGではスウェーデン、日本に次いで3位であったが、準決勝まで勝ち上がってきたチームである。準決勝の米国戦はエースのシンクレアの活躍で3たびリードしたものの、その都度米国が追い付き、最後は延長後半に決勝点を入れられて3-4と敗れたが、後々まで語り継がれることになるオリンピック史上に残る激闘であろう。
フランスはカナダとは相性がよく、昨年のワールドカップではグループリーグで対戦し、4-0と大勝、今年3月のキプロスカップでも2-0と勝利している。
銅メダルを目指すフランス、疲労困憊であるが、3位決定戦のメンバーは3日前の日本戦と全く同じである。GKはサラ・ブハディ、DF陣は右からコリン・フランコ、ローラ・ジョルジュ、ウェンディ・ルナール、ソニア・ボンパストール、MFは守備的な位置にサンドリーヌ・スーベイランとエリーズ・ビュサグリア、攻撃的な位置は右にエロディ・トミ、中央にルイーザ・ネシブ、左にガエタン・ティネ、1トップのFWはマリー・ロール・デリーである。
フランスはこの試合が6試合目であるが、ほとんどの選手が6試合連続で先発出場している。7年間代表チームを率いてきたブルーノ・ビニ監督の銅メダルにかける執念を感じさせる。
一方のカナダ、3日前の米国戦は延長戦を含めて120分戦ったが、こちらも先発メンバーは米国戦と全く同じである。オリンピックの銅メダルは重いのである。カナダのエースは1トップのクリスティーヌ・シンクレアである。今大会では準決勝との米国戦のハットトリックを含む6得点をマークし、得点王を狙う。
■6試合連続で相手より多くのシュート、今大会のベストチーム
カナダのキックオフで始まったこの試合、序盤は疲労のせいか、両チームとも精彩を欠いたが、フランスの優勢は明白であった。フランスは次第にペースをつかみ、準決勝の日本戦同様、立て続けにシュートを放つ。攻めに攻めながらも得点の入らないフランス、後半になってスピードのあるカミーユ・アビリー、日本戦で得点を挙げたユジェーヌ・ルソメを投入するが、ノースコア。ロスタイムに入って92分、カナダはダイアナ・マットソンがロングボールから決勝点を挙げる。フランスはこの日もシュート数で18-4と圧倒しながらメダルを逃す。
昨年のワールドカップ同様4位に終わったが、6試合を通じて劣勢だった時間帯は米国戦の中盤くらい、そして6試合すべてで相手よりもシュート数が多いかったのはフランスだけである。それだけにミスの多さが残念であったが、試合内容だけを見れば今大会のベストチームといえるであろう。(この項、終わり)