第1505回 政情不安の中でアフリカ選手権開幕(2) 大幅に減ったフランスリーグ所属選手

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■フランスから独立した8か国が出場

 前回の本連載では南アフリカで開幕するアフリカ選手権への出場国の顔ぶれを紹介したが、これまでワールドカップで活躍してきたカメルーン、セネガル、エジプトなどが予選で姿を消したことを紹介した。カメルーン、セネガルは西アフリカのフランス語圏の国であるが、この地域からの出場国が多いというのも今大会の特徴である。この西アフリカ地域はフランスから独立した国が多く、コートジボワール、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、トーゴがこれに該当するほか、英国から独立した国としてナイジェリア、ガーナ、ポルトガルから独立した島国であるカーボベルデという8か国がこれに当たる。
 また、フランスから独立した国としては、西アフリカの5か国以外に、北アフリカのマグレブ3か国と言われるアルジェリア、チュニジア、モロッコがそろって出場しており、合計8か国になる。前回大会はフランスから独立した国は9か国が出場しており、出場国のほぼ半数がフランスから独立した国であり、ほかにフランス語圏の国はベルギーから独立したコンゴ民主共和国が相当する。

■フランスのクラブに所属する選手は49人と大幅に減少

 これまでの本連載で紹介してきたことであるが、このアフリカ選手権にはフランスのクラブに所属する選手が2012年は61人、2010年は59人、2008年は60人と毎回60人程度出場してきた。これは多くのフランス語圏を抱えるアフリカから、サッカー選手が欧州での活躍の場としてフランスリーグを選択することが多いことからくる事象であるが、今回はフランスのクラブに所属する選手の数が大幅に減っている。
 まず、今回のアフリカ選手権に出場する選手の中でフランスのクラブに所属する選手の数は49人となり、大幅に減少した。内訳をみていくと、最多はマリの13人、続いてトーゴの7人、モロッコ、コートジボワール、ブルキナファソが5人ずつ、アルジェリアが4人、チュニジア、ガーナが3人、カーボベルデが2人、ニジェールとコンゴ民主共和国は1人である。この49人のうち43人はフランスから独立した8か国、残りの6人がフランス以外から独立したガーナ、カーボベルデ、コンゴ民主共和国の選手である。

■トップレベルの選手の他リーグへの移籍

 このようにフランスのクラブに所属する選手が減少した理由としてはいくつか考えられる。本連載でしばしば紹介しているようにフランスリーグの地位が低下していることにより、アフリカのトップクラスの選手がフランスリーグからプレミアリーグなど他のリーグに移籍している。フランスから独立した国であるコートジボワールのディディエ・ドログバ(マルセイユからチェルシー、現在は中国の上海申花)やヤヤ・トゥーレ(モナコからバルセロナを経てマンチェスター・シティ)のような例を想起される読者の皆様も少なくないであろう。

■若い段階で欧州各国に渡るアフリカの選手

 もちろんこのようなケースもあるが、むしろ若年層のリクルートに理由がある。現在欧州のビッグクラブは世界中にタレント発掘のためのネットワークを持っており、かなり若い段階でアフリカから欧州に選手が移籍するケースが少なくない。20歳以下でフランスだけではなく欧州のプロチームと契約する例が増えてきた。この際、旧宗主国であるかどうかはあまり関係なく若い選手を獲得するため、これまではアフリカの若い選手はまずフランスに渡り、そこでの実績により他国のリーグへ移籍という構図が崩れてきている。
 例えば、コートジボワールの場合、フランスのクラブに所属する選手は5人いるが、その平均年齢は27才であり、そのうち4人はコートジボワールからフランスのクラブに移籍してきた。一方、イングランドのクラブに所属する6人の選手平均年齢は26.7歳とあまり変わらないが、そのうち5人は25歳以上であり、彼らのうち4人は欧州の他の国のリーグを経験してからプレミアリーグに移籍してきているが、最年少の20歳のアブドゥル・ラザックは18歳の時にコートジボワールからイングランドに渡り、マンチェスター・シティとプロ契約をしたのである。(続く)

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