第1562回 フランス代表、南米遠征(1) 12年ぶりに南米大陸で試合を行うフランス
一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■6月に公式戦のないフランス、南米遠征を挙行
前回まで紹介したフランスカップ決勝で今季のフランス国内のサッカーの公式戦はすべて終わった。6月の初めには代表チームのインターナショナルマッチデーが設定されており、世界各地でワールドカップ予選が戦われ、6月下旬にはブラジルでコンフェデレーションズカップが行われる。フランスはワールドカップ予選では唯一5チームからなるグループIに所属していることから6月のインターナショナルマッチデーにはワールドカップ予選の試合はなく、また2012年の欧州選手権でも敗退したことから、今回もコンフェデレーションズカップには出場できない。6月のインターナショナルマッチデーには親善試合を行うことになるが、南米遠征を挙行、ウルグアイとブラジルと対戦し、来年のこの時期に開幕するワールドカップへの準備を進めることになった。
■数少ない南米での欧州の代表チームの試合
フランスは2011年のこの時期、すなわち2012年欧州選手権の1年前にウクライナとポーランドに遠征している。今回も同様に本大会の1年前に現地を知るということで遠征し、また予選免除となった開催国としてはある程度力のあるチームと対戦することを望んでいる。
特に代表選手のほとんどが欧州のクラブに所属している南米の国では欧州勢との親善試合をホームで開催することは難しいが、今回はこのインターナショナルマッチデーに選手が欧州から帰国し、フランスを迎え撃つことになる。ウルグアイやブラジルの代表選手にとってもこの時期にホームで欧州勢と試合を行うことは意義があるのである。
例えば、アルゼンチンがアルゼンチン国内で欧州の代表チームと試合をしたのは2年前の2011年6月のアルバニア戦が最後である。ウルグアイについても同様で2011年6月にスペイン、エストニアを迎えたのが最後である。これらのチームの場合はワールドカップの南米予選を戦っているため、日程的に余裕がないことは事実であるが、予選免除となっている開催国のブラジルも、フランス戦の1週間前にイングランドと対戦するが、その前のブラジル国内での欧州勢との対戦はやはり2011年6月のルーマニアとオランダとの戦いまでさかのぼらなくてはならないのである。ちなみにブラジルの場合は南米勢以外という点では2012年9月に南アフリカ、中国と国内で対戦しているが、南アフリカは現在2次予選を戦っているが、皮肉なことに中国はアジア最終予選を前に敗退している。
■過密日程の中で2試合を対戦国で行うフランス
ちょうどこの6月上旬のインターナショナルマッチデーは欧州も南米もワールドカップ予選が目白押しであり、サッカーの二大勢力である欧州と南米の対戦はウルグアイ-フランス戦、ブラジル-フランス戦とブラジル-イングランド戦だけである。南米勢と親善試合を2試合組んでいるのはフランスだけであり、中立国ではなく対戦国で試合を行うことも意味がある。
ウルグアイは南米予選を戦っており、6月2日のベネズエラ戦、6月10日のペルー戦の間の5日にフランスと対戦している。ベネズエラ戦、ペルー戦がいずれもホームのモンテビデオで行われることもあるが、それだけフランスと対戦したいのであろう。
いかにサッカーの世界においてフランスが力を持っているかを示しているが、決してサッカー協会の力だけではなく、複雑な国際政治、国際経済の活動の1つの結果あるいは経過としてこれらの親善試合が組まれていることを忘れてはならない。
■12年ぶりに南米大陸で試合を行うフランス
他の南米諸国の国内で欧州勢との対戦であるが、コロンビアは1999年11月にボゴタでスロバキアと対戦して以来14年間、この国で欧州の代表チームが試合をしていない。さらに驚きはペルーであり1993年2月のリマでのルーマニア戦を最後に20年間、欧州の代表チームがこの国を訪問していない。そしてチリであるが2011年6月にエストニアと対戦、2010年5月にイスラエル、北アイルランドと対戦しているが、その前の欧州勢との対戦は本連載第1回から第5回までで紹介したフランスとの対戦になり、フランスにとってはそれ以来12年ぶりの南米大陸での試合となる。(続く)