第1571回 ピンチに立たされたフランス代表

 一昨年3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■さまざまな不名誉な記録を作ったフランス代表

 36年ぶりとなる南米遠征はウルグアイに0-1、ブラジルに0-3と連敗し、ディディエ・デシャン率いるフランス代表は傷心の中で帰路についた。両国とも南米の強豪国ではあるが、近年の両国との対戦成績を考えてみれば、連敗、しかも完封負けというのは全く考えなかった結果であろう。
 フランスはさまざまな不名誉な成績を作ってしまった。昨年のデシャン監督就任以来の成績はこれで11試合になるが、この戦績は4勝2分5敗と負け越している。前任のローラン・ブラン監督は2年間の在任期間中に27試合指揮を執っているが、この間の戦績は16勝7分4敗、デシャン監督の敗戦数は早くも前任者を上回ってしまった。フランス代表は専任の監督を置いた1964年以降、就任1年目で5敗を喫した監督はデシャン監督が最初である。確かに1960年代はフランスのサッカーが低迷した時代であり、デシャン監督よりも勝率の悪い監督は1964年からワールドカップ・イングランド大会のあった1966年にかけて指揮を執ったアンリ・ゲラン、そのあとのジュスト・フォンテーヌ、さらにその次でワールドカップ予選のノルウェー戦で敗戦して辞任したルイ・ドゥゴーゲスよりはいいものの、当時は試合数も少なく敗戦数だけで数えると就任後にこれだけ負けた監督はいない。
 またデシャン監督就任前はブラン監督が欧州選手権を戦っており、そのグループリーグ、決勝トーナメントまでカウントすると1年間で7敗していることになる。
 3月26日のワールドカップ予選のスペイン戦、今回の南米遠征のウルグアイ戦、ブラジル戦と3連敗となったが、3連敗はワールドカップ南アフリカ大会のグループリーグ、新チームの親善試合、欧州選手権予選の4連敗以来のことである。

■得点力不足に悩むフランス代表

 そして負け方であるが、得点の少なさが気にかかる。3試合連続で完封負けしているが、フランスは3月22日のワールドカップ予選のグルジア戦の61分にフランク・リベリーがあげてから299分間もノーゴールが続いている。新チームになってから11試合でわずか11得点、1試合当たり1点ということになる。もちろん最近は守備力が上がっており単純に比較することはできないが、1964年以降下から2番目の数値となっている。ちなみに直前のブラン時代は1試合当たりの平均得点は1.5点である。この理由としては前回の本連載でも取り上げたようにエースのカリム・ベンゼマの不調によるところが大きい。デシャン監督就任以降、ほとんどの試合に出場してきたが、いまだノーゴールである。またベンゼマの代役としてはオリビエ・ジルーがあげられるが、ジルーが素晴らしい得点をあげたのは昨年10月のアウエーでのワールドカップ予選のスペイン戦の同点ゴールくらいである。ベンゼマを起用し続ける事情もよく理解できる。

■5年ぶりに3失点したブラジル戦

 一方、失点は11試合で12失点、1試合当たり1点を上回っている。ブラン時代は1試合当たりの平均失点は0.7であった。今回のブラジル戦は3失点しているが、フランスが3失点したのは2008年9月のオーストリア戦以来5年ぶりのことである。

■立ち直りに必要な新戦力

 このように非常に悪い成績を残してしまったデシャン監督のフランスであるが、これから立ち直ることはできるのであろうか。また当面の目標であるブラジルワールドカップに出場できるのであろうか。まず、立ち直りに関しては、これまで代表で58試合出場15得点という今回の遠征に不在だったリベリーが復帰することが必要であろう。そして新戦力として期待されながら今回の遠征に帯同しなかったポール・ボグバとラファエル・バランも欠かせない。
 また、今回の遠征で収穫となったのがディミトリ・ペイエである。代表5試合目となったブラジル戦でのペイエの左サイドのドリブルは効果的であった。4人の新加入のうち、ウルグアイ戦で途中出場し、ブラジル戦で先発出場したジョシュア・ギラボギも楽しみな存在である。
 歴史をさかのぼれば、1981年は3勝5敗と負け越し、ミッシェル・イダルゴ監督の去就が話題になった。しかし、ワールドカップ予選終盤でオランダに勝利し、本大会出場を決め、そして翌年のワールドカップでは準決勝に進出した。今回の南米遠征では敵地でのブラジル戦初勝利はならなかったが、初勝利は来年の本大会に期待しようではないか。(この項、終わり)

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