第1676回 オランダと親善試合(5) オランダに快勝、新聖地での50試合目を飾る。
3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■親善試合では優勢なフランス
ワールドカップイヤーの3月の親善試合は実質的にメンバー決定前に行われる最後の試合であり、注目を集めるが、4年前はスペインと対戦し0-2と完敗、8年前もスロバキアに1-2と敗れ、勝利をあげたのは2002年のスコットランド戦が最後であるが、この時は5-0という大勝であったが、スコットランドは予選で敗退しており、あまり参考になる結果ではない。今回のオランダは2012年8月にベルギーに敗れて以来、17戦連続で負けなしで11勝6分、本大会でもシードに入り、4年前のスペインと似た力量のあるチームである。
さて、フランスとオランダは通算戦績ではフランスの8勝4分10敗という成績であるが、直近の対戦は2008年の欧州選手権のグループリーグ、スイスのベルンでフランスは1-4と大敗している。欧州選手権では2000年もグループリーグで対戦し、2-3とフランスは敗れ、優勝したこの大会で唯一の黒星を喫している。しかし、親善試合については2004年3月のロッテルダムでの対戦はスコアレスドロー、1997年のパルク・デ・プランスでの対戦は2-1とフランスが勝利、1995年のユトレヒトの対戦でもフランスが勝利、1992年のランス(Lens)での対戦は1-1のドロー、1982年のロッテルダムでの対戦はフランスが2-1と勝利、1980年のパルク・デ・プランスでの試合もスコアレスドローとフランスは負け知らずである。親善試合でオランダがフランスに勝った最後の試合は今から51年前の1963年4月までさかのぼらなくてはならない。
■不振から脱出したカリム・ベンゼマ
フランスはファーストユニフォームで上から青白赤のトリコロール、今回新調した白のセカンドユニフォームのお披露目は前日の23歳以下代表に譲った。
スタンドの雰囲気は昨秋のウクライナ戦の後半のようであった。このスタジアムの雰囲気に後押しされたフランスは勢いに乗る。33分にはパリサンジェルマンに所属するブレーズ・マツイディからのパスをカリム・ベンゼマが右足で強烈なボレー、今年に入って14試合目で12ゴール、昨年秋までの不振から完全に脱したことを8万のファンに見せつけた。
■ブレーズ・マツイディのアクロバティックな追加点
前半の終盤の41分にはマツイディとベンゼマがワンツーパスで前進、右サイドのマチュー・バルブエナにつなぎ、このディディエ・デシャンの申し子がゴール前、ファーポストにクロスをあげる。このクロスにアントワン・グリエスマンは届かなかったが、その裏側に走りこんできたマツイディがアクロバティックなプレーで右足のボレーでゴールネットを揺らす。パリサンジェルマンのチームメートのズラタン・イブラヒモビッチを想起させるようなスペクタクルなプレーで追加点、スタッド・ド・フランスのファンを歓喜させる。
一方のオランダ、ウェスレイ・スナイデル、ロビン・ファン・ペルシという攻撃陣のビッグネームが振るわず、守勢一方に立たされる。
後半に入ったところで、フランスは最初のメンバー交代、左サイドバックのパトリス・エブラに代えてルーカス・ディーニュがピッチに入る。第1673回の本連載で紹介した通り、代表初招集のディーニュはこれが大法デビューとなる。前半に得点をあげたマツイディもパリサンジェルマンの選手であり、ヨアン・カバイエとあわせせてパリサンジェルマンの選手が3人となった。そして忘れてはならないのがオランダの右サイドバックのグレゴリー・ファン・デル・ビールもパリサンジェルマンの選手、このサイドでオーバーラップがあれば、チームメート同士がマッチアップすることになる。
■スタッド・ド・フランスでの50試合目を白星で飾ったフランス代表
そして試合はこのままフランスが2-0と勝利する。フランスにとっては実に1997年以来の17年ぶりのオランダ戦勝利、この試合がスタッド・ド・フランスでの50試合目というフランス代表の記念すべき勝利にもなった。そしてフランス代表にとって収穫は、初出場のグリエスマンが通用すること、4-1-2-3システムも中盤の3人が機能し、システムのオプションとして十分に使えることが分かった。
次の試合は5月27日、スタッド・ド・フランスでのノルウェー戦である。(この項、終わり)