第1747回 欧州選手権目指しスタート(2) ワールドカップと2人しか入れ替わらなかったメンバー

 3年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ミカエル・ランドローとオリビエ・ジルーに代わり、スティーブ・マンダンダとアレクサンドル・ラカゼット

 前回の本連載の最後ではワールドカップ後の初めての代表の試合となる9月4日のスペイン戦と、7日のセルビア戦に向けてディディエ・デシャン監督が発表した23人の選手を紹介した。23人の選手のうち、ブラジルでのワールドカップのメンバーに入っていなかったのはスティーブ・マンダンダとアレクサンドル・ラカゼットの2人だけである。そしてワールドカップの登録したメンバーから外れたのがミカエル・ランドローとオリビエ・ジルーである。
 本連載の読者の皆様ならよくご存じであろうが、マンダンダはウーゴ・ロリスに次ぐ第2GKとしてこの数年間フランス代表入りしてきたが、昨季のリーグ最終戦で負傷し、合宿入り直前にメンバーを辞退している。そのマンダンダの代わりにステファン・ルフィエが23人のメンバーに入っている。ワールドカップに登録されたGKのうち最年長で35才のランドローは今回のワールドカップで代表からの引退を表明している。
 また、ジルーは今回は負傷のためメンバーから外れ、代わって入ったアレクサンドル・ラカゼットについても今回のワールドカップの予備メンバーに入り、代表では2試合に出場したことがある。

■多くの選手が入れ替わるワールドカップ・欧州選手権明け

 多くの代表チームがワールドカップや欧州選手権を2年に1回の大イベントととらえ、ワールドカップや欧州選手権を機に代表から退く選手が多数おり、その代わりにワールドカップや欧州選手権明けに多くの選手が新たに代表に入ってくるという現象がみられる。
 例えば今回フランスと対戦するスペイン、2010年のワールドカップ、2012年の欧州選手権と連覇し、世界ランキング1位で本大会に臨んだが、グループリーグ初戦でオランダ、第2戦でチリに敗れ、グループリーグ敗退、という結果ではあったが、ビセンテ・デルボスケ監督は続投、今回のフランス戦では23人中8人を入れ替えている。
 これが監督も変わったチームであればその傾向はさらに強まる。スペイン同様に優勝候補と目されながらグループリーグで敗退した日本は監督がアルベルト・ザッケローニ監督からハビエル・アギーレ監督に交代、およそ半数の選手が入れ替わっている。

■30代前半の選手が少なかった今回のワールドカップのメンバー

 フランス代表においてブラジルのワールドカップのメンバーと今回のメンバーがほとんど変わらない理由はいくつかある。まず、フランスにおいてもワールドカップや欧州選手権を区切りとして代表からの引退を表明する選手は少なくない。今回も先述したランドロー以外に、ワールドカップのメンバーに入ることができなかったサミール・ナスリ、フランク・リベリー、エリック・アビダルが代表からの引退を表明している。これらの選手はナスリ以外は年齢的には30歳以上であるが、たまたまこれらの年齢の選手が現在のフランス代表クラスには少なく、さらにワールドカップのメンバーに選ばれたのがランドローだけ(リベリーもマンダンダ同様、5月の段階で代表に選ばれているが、負傷が完治せず、合宿入りを前に辞退)であったという世代的なことが言えるであろう。

■自らも節目以外のタイミングで代表にデビューしたディディエ・デシャン監督

 その次にデシャン監督自身の経験からくる新人選手登用のタイミングである。多くの国ではワールドカップや欧州選手権明けのタイミングで新たな目標に向けて新人選手を登用する。先述のスペインも新たに加わった選手のうち半数以上は代表出場歴がない。これは今回の日本代表も同様に非ワールドカップ組のうちの大多数が代表として出場経験のない選手であろう。
 しかし、今回のワールドカップで最優秀若手選手に選ばれたポール・ポグバの代表初招集はワールドカップ前年の2013年3月のことであり、2年に1度の節目で選手を必要以上に入れ替えるより、その時々に応じて起用された新人選手の方が代表で活躍すると考えているのかもしれない。なぜならば、デシャン監督自身も代表デビューはワールドカップ前年の1989年4月、ワールドカップ予選で低迷していた時期に代表デビューし、チームの再建の大黒柱となったからである。(続く)

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