第1808回 2015年アフリカ選手権(2) アフリカ勢のいないフランスリーグ
このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。
■フランスのクラブから69人がアフリカ選手権に出場
今回もフランスのクラブからアフリカ選手権に多数の選手が参加し、総計69人の選手が赤道ギニアに向かう。そのうち51人が1部リーグのクラブの選手である。1部20チームのうち、アフリカ選手権に出場している選手がいないチームはRCランスだけで、それ以外の19チームにはアフリカ選手権に出場している選手がいる。
■5人を派遣しているリヨンとボルドー
中でも一番多いのはリヨンとボルドーの5人である。リヨンはアフリカ選手権開幕の時点で首位、ボルドーは6位といずれも上位のチームである。リヨンはアルジェリアのメディ・ゼファネ、ギニアのモハマド・ヤッタラ、ブルキナファソのバカリー・コネ、カメルーンのアンリ・ベディモとクリントン・エンジエ、ボルドーはガボンのアンドレ・ビヨゴ・ポコ、マリのアブドゥ・トラオレ、セネガルのラミン・サネとアンリ・セブ、チュニジアのワービ・カズリというメンバーである。
4人がアフリカ選手権に出場するチームはスタッド・ド・ランス、トゥールーズ、メッスの3チームである。
アフリカ選手権で5人を失ったボルドーはアフリカ選手権の開幕の前日にリーグ戦でニースと対戦し、先制はしたものの、追いつかれロスタイムに逆転ゴールを決められて負けている。そのボルドーに勝利したニースはアフリカ選手権で欠けているメンバーはわずか1人、ガボンのロイド・パランだけである。
リヨンはアフリカ選手権が開幕するまでリーグ戦では5連勝、アフリカ選手権の開幕日にリーグ戦ではRCランスと対戦する。最多の5人を送り込んでいるリヨンと1部では唯一1人も送り込んでいないRCランスの戦いはアウエーのリヨンがオウンゴール、アレクサンドル・ラカゼットのゴールで2-0と勝利し、首位の力を見せつけた。
■マルセイユの攻撃を支えるガーナのアンドレ・アユー、主力の抜けるサンテチエンヌ
また単純に人数だけで判断はできない。例えばリーグ戦で首位リヨンを勝ち点1差で追うマルセイユは3人の選手がアフリカ選手権に出場しているが、そのうちの1人がガーナのアンドレ・アユーである。また、4位に後退したパリサンジェルマンは1人だけアフリカ選手権に出場するが、コートジボワールのセルジュ・オーリエである。もっともパリサンジェルマンの場合は選手層が厚いため、大きな不利益にはならず、逆にこのアフリカ選手権中に順位を上げておきたいところである。
パリサンジェルマンをかわして3位に浮上したサンテチエンヌは3人の選手をアフリカに派遣する。イスマエル・ディオマンド、マックス・グラデルというコートジボワール勢とギニアのフロランタン・ポグバ(昨年のワールドカップで大活躍したフランス代表のポール・ポグバの兄)である。コートジボワールは優勝候補の一角にあげられており、勝ち進んだ場合、選手が所属チームに戻ってくるのが遅くなる。大会の開幕は1月17日、グループリーグが終了するのが早くて25日、遅いところは28日、そして決勝トーナメントは1月31日から始まり決勝は2月8日に行われる。チームが決勝まで残れば、各チームは選手を1月以上手放すことになってしまう。
■有力国のアルジェリアには3人、セネガルは大量9人のフランス勢
そういう点で優勝候補の筆頭と目されるのが昨年のワールドカップでの活躍も記憶に新しいアルジェリアである。アルジェリアの選手でフランスのクラブに所属しているのは先述したリヨンのゼファネとスタッド・ド・ランスのマンディ・エイサ、メスのアーメド・カシの3人である。またアルジェリアを追うと見られているのがセネガルとガーナという中央アフリカ勢である。セネガルはボルドーのサネ、セブに加えてナントのパピ・ジロボジ、レンヌのシェーキ・エムバンゲ、リールのパプ・スアレ、イドリサ・ゲイ、ロリアンのラミン・ガッサマ、2部のソショーのパパ・カマラ、ルアーブルのザルゴ・トゥーレと大量9人の選手を抱える。また、ガーナはマルセイユのアンドレ・アユーとロリアンのジョルダン・アユー、そしてエビアンのジョナサン・メンサーの3人である。
アフリカ勢のいないフランスリーグという観点で1月中旬から2月中旬にかけての各チームの動向を追うのも興味深いサッカーの見方である。(続く)