第1810回 2015年アフリカ選手権 (4) 決勝トーナメントに進出した開催国の赤道ギニア
このたびパリ並びにパリ近郊で起こった銃撃事件の犠牲者の方々のご冥福を祈るとともに、サッカー界での人種差別についてしばしば取り上げている本連載に対する読者の皆様からのご支援に感謝いたします。
■外国出身の選手に国籍取得させ、強化を図る赤道ギニア
代替開催が昨年11月に決まり、大会開幕直前に監督が交代した赤道ギニアであるが、3年前のガボンとの共同開催の時と同様、地元の期待に応える素晴らしい結果を残した。
本連載第1807回で紹介した通り、赤道ギニアは予備戦から参戦し、2回戦でモーリタニアに勝利したが、出場資格のない選手を出場させたということで失格処分になっている。予備戦から参戦するということは力量的には本戦に出場するようなチームよりも劣っていることを示している。そしてこの出場資格のない選手を出場させたという件であるが、赤道ギニアは多数の他国出身の選手に赤道ギニア国籍を取得させるという強化策をとっている。スペイン人が一番多く、今回の登録選手23人のうち17人はスペイン生まれである。これまでにもブラジル人、コロンビア人という南米出身の選手だけではなく、カメルーン、ガーナ、ブルキナファソやナイジェリアという国からも選手を獲得している。このような動きの中でモーリタニア戦に出場した選手の中で出場資格を満たさなかった選手がいたため、失格となったのである。
■赤道ギニアの初戦の相手はコンゴ共和国
開催国の赤道ギニアは1月17日の夕方17時キックオフの開幕戦に登場する。会場のバタ競技場は収容人員4万人、他の3会場は多くても1万5000人しか収容することができず、メイン会場での地元チームの出場にスタンドは盛り上がった。開幕戦の相手はコンゴ共和国。コンゴ共和国はランキング的には予選を勝ち抜いた15チームの中で最下位、すなわち、赤道ギニアにとっては最もくみしやすい相手が初戦に待っていた。しかし、世界ランキングは赤道ギニアの118位に対して、コンゴ共和国は61位、さらにコンゴ共和国を率いるのはアフリカのスペシャリスト、クロード・ルロワ、今回が8回目のアフリカ選手権出場である。決して楽な相手ではない。
■スペイン出身のエミリオ・エンスエが先制点をあげるも、コンゴ共和国と引き分け
その赤道ギニアは16分に先制点をあげる。先制点はスペイン生まれのエミリオ・エンスエ、スペインのアンダーエイジでの豊かな代表歴を誇り、現在はイングランドのミドルスブラで活躍するエンスエのシュートはコンゴ共和国のGKの股の下を破り、ゴールネットへ吸い込まれた。その後も赤道ギニアは攻め続けるが追加点はならず、試合は終盤を迎える。終了3分前の87分、コンゴ共和国のティエビ・ビフマである。ビフマはフランスのサンドニ生まれ、フランスサッカーの聖地のそばで生まれ育ち、ユース時代はストラスブールに所属し、フランスのアンダーエイジの代表の経験もあるが、昨年コンゴ共和国の代表に入った。スペイン生まれが先制点をあげ、フランス生まれのゴールで追いつかれ、赤道ギニアは開幕戦を引き分けで終えることとなった。
■最終節のガボン戦で快勝、決勝トーナメント進出を決める
赤道ギニアの第2戦はブルキナファソと戦いスコアレスドロー、2試合終えた段階でグループAの順位は首位コンゴ共和国(勝ち点4)、2位ガボン(3)、3位赤道ギニア(2)、最下位ブルキナファソ(1)となり、全チームに決勝トーナメントのチャンスがある。
最終戦で赤道ギニアはガボンとの対戦、この試合で勝利すれば赤道ギニアは決勝トーナメント進出である。一方のガボンは引き分けならばほぼ確実となる。3年前に共同開催をした隣国同士の戦い、前半は互角の戦いで両チーム無得点。後半に入り、均衡が破られたのは54分、コンゴ共和国の選手がペナルティエリア内でファウル。キッカーはスペイン生まれの選手であった。赤道ギニアのハビエル・バルボア、マドリッド出身でレアル・マドリッドの育成機関育ち、トップチームにも所属したことのある選手である。バルボアのPKが決まり、赤道ギニアが1点リード、さらに86分の追加点もスペイン生まれ、大会開幕10日前に代表デビューしたばかりのイバン・サルバドールがゴールをあげて、赤道ギニアが2-0と勝利する。
グループAは最終戦でブルキナファソを下した首位のコンゴ共和国と赤道ギニアが決勝トーナメントに進出したのである。(続く)