第1834回 ブラジル、デンマークと連戦(1) 初めて代表入りしたナビル・フェキル
4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■4か月ぶりの代表戦は国内で2試合
前回までの本連載は年が明けて初めてのクラブレベルでの国際試合となるチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの決勝トーナメント1回戦の模様を紹介してきた。
代表チームにとってもようやく国際試合の機会がやってきた。それが3月26日と29日の親善試合である。3月26日はスタッド・ド・フランスにブラジルを迎え、29日はサンテチエンヌでデンマークと対戦する。
昨年11月のアルバニアとスウェーデンとの親善試合以来4か月ぶりの試合である。この間に国内リーグは折り返しを迎え、チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグはグループリーグが終わり決勝トーナメントに突入した。そして国内外のカップ戦では多くのチームが敗退し、所属するクラブの成績によっては、チームとしてのタイトル争いから脱落してしまった選手、逆に複数のタイトルを目指して過密スケジュールの中にある選手もいる。
■ディディエ・デシャン監督の発表した23人
このような中でディディエ・デシャン監督は3月19日に23人の選手を発表した。
GKはスティーブ・マンダンダ、ウーゴ・ロリス、ステファン・ルフィエ、DFはパトリス・エブラ、クリストフ・ジャレ、バカリ・サーニャ、ママドゥ・サコー、ラファエル・バラン、ブノワ・トレムリナス、クルト・ズーマ、ローラン・コシエルニー、MFはマキシム・ゴナロン、ジョフレイ・コンドグビア、ブレーズ・マツイディ、モルガン・シュナイデルラン、ムーサ・シソッコ、ディミトリ・ペイエ、FWはカリム・ベンゼマ、ナビル・フェキル、オリビエ・ジルー、アントワン・グリエズマン、アレクサンドル・ラカゼット、マチュー・バルブエナというメンバーである。
■唯一の初代表、ナビル・フェキル
11月の連戦と比べて3分の1強の8人が入れ替わったが、最大の驚きは唯一の初選出となるフェキルであろう。リヨンに所属する21歳のフェキルはリヨン生まれのリヨン育ちである。しかし両親はアルジェリア人であり、フランスとアルジェリアの2つの国籍を持つ。リヨンで生まれ育ったフェキルはエリート中のエリートではなく、アンダーエイジでの代表歴はフランスで1試合経験しているだけであり、アルジェリアのアンダーエイジでの代表歴はない。近年、若くしてフル代表に入る選手、例えばバランやポール・ポグバなどはアンダーエイジでの十分なキャリアをぶら下げてフル代表入りしているが、フェキルはそうではない。フェキルはリヨンの下部組織に所属していたこともあったが、他のクラブにも所属し、リヨンとの試合でその活躍を認められ、リヨンの下部組織に戻ってきた。リヨンでプロ契約を結んだのは2013-14シーズンが最初であり、まだプロとして約30試合しか出場していない。しかし、攻撃的MFあるいはFWとして、左利きのフェキルはゴールを積み重ね、メッシ2世とも言われている。リーグ王者から離れて久しいリヨンであるが、7連覇中は大物選手を他のクラブから移籍させていたが、このところは育成型クラブとなっている。フェキルもまた新しい姿になったリヨンを象徴するような選手であると言えるであろう。
メンバー発表時の記者会見でデシャン監督はフェキルのポテンシャルを評価するとともに、複数ポジションがこなせること、そして現在の代表チームにはいないタイプの選手としての高く期待をしている。
フェキル以外に加わったメンバーはエブラ、サコー、ズーマ、コシエルニー、ゴナロン、コンドグビア、ジルーであり、いずれもカムバック組である。コンドグビアは2013年夏以来、ジルーは昨年のワールドカップ以来の復帰である。
■チャンピオンズリーグで負傷したポール・ポグバは招集されず
逆にメンバーから外れてしまったのがポグバである。イタリアのユベントスに所属するポグバは、メンバー発表の前日の夜に行われたチャンピオンズリーグのボルシア・ドルトムント(ドイツ)戦で負傷してしまい、前半の途中でピッチを去る。今回の連戦は負傷のため欠場となるが、昨年のワールドカップ以来、チームの中心となってきた若者のいない状態でのチームの力も試されるときである。(続く)