第1839回 ブラジル、デンマークと連戦(6) サンテチエンヌでブーイングを浴びるリヨンの選手

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■栄光を誇るサンテチエンヌの本拠地、ジェフロワ・ギシャール

 前回の本連載の最後で日本代表がこのサンテチエンヌのジェフロワ・ギシャール競技場で2回試合をしたことを紹介した。フランス代表はジェフロワ・ギシャール競技場では今までに6試合しかしていない。初めてフランス代表が試合をしたのは1984年の欧州選手権のグループリーグのユーゴスラビア戦、以来これまでのフランスの戦績は4勝1分1敗である。直近の試合は2009年6月2日のナイジェリアとの親善試合、フランスは0-1と敗れている。3万5000枚のうち、5000枚は前売りでさばけず、当日にチケットを販売し、ようやく満員になった。。
 ジェフロワ・ギシャール競技場はサンテチエンヌの本拠地である。近年復活の兆しを見せているサンテチエンヌであるが、1970年代はフランスを代表するチームとしてチャンピオンズカップなどの欧州三大カップで活躍したことは本連載でしばしば取り上げてきた。ちょうどこのデンマーク戦に合わせて特別な展示をしており、これまでにサンテチエンヌの選手として代表戦に出場した57人の選手、サンテチエンヌでプレーした経験のある7人の代表監督、さらにサンテチエンヌに所属した7人のデンマーク人選手などを紹介している。

■サンテチエンヌのライバルであるリヨン

 この輝かしい栄光を誇るサンテチエンヌが最もライバル視するのがリヨンである。フランスには同一都市に複数のプロのクラブのある町がないため、ダービーマッチとなると違う都市にあるチーム同士の戦いとなり、パリサンジェルマンとマルセイユのビッグクラブ同士の顔合わせが有名であるが、近隣都市であるリヨンとサンテチエンヌの争いこそ、本来のダービーの名にふさわしいであろう。

■サンテチエンヌの選手に拍手喝采、リヨンの選手にブーイング

 前回の本連載で紹介したフランスの先発メンバーの中で最も大きな拍手喝采を浴びたのは最初に紹介されたGKのステファン・ルフィエ、地元サンテチエンヌの選手である。
 逆にフランスの選手でありながらブーイングを浴びせられた選手がいた。それはリヨンに所属するクリストフ・ジャレとアレクサンドル・ラカゼットである。このブーイングは選手紹介の際に始まったものではなく、競技場に到着したバスから選手が下りてくる際に、リヨンの選手だとブーイングという徹底ぶりである。
 一方、現在サンテチエンヌに所属している選手はルフィエだけであるが、かつてサンテチエンヌに所属したことのあるブレーズ・マツイディ、ブノワ・トレムリナス、クルト・ズーマ、ジョシュア・ギラボギ、ディミトリ・ペイエに対しては一段と大きな拍手と声援が送られる。このようなファンの対応が正しいかどうかはともかくとして、このような厳しい環境の中で欧州のサッカー選手は鍛えられていくのである。

■フランスリーグに代表選手を多数送るデンマーク

 一方のデンマーク、前回の連載でフランスとの相性の良さを紹介したが、23人のメンバーのうち6人がフランスのクラブに所属しており、そのうち4人は先発の11人に入っている。先発として出場しているのはギャンガンのラース・ヤコブセン、リールのシモン・キアル、エビアンのダニエル・バス、それ以外のメンバーはナントのキアン・ハンセン、ギャンガンのヨーナス・レッスル、トゥールーズのマルティン・ブレイスワイトである。現在デンマーク人でフランスの1部リーグのクラブに所属している選手はわずか11人、その半数以上が代表入りし、4分の1強は先発メンバーとなっているということは驚くべき高い割合であると言えるであろう。
 このようにデンマークのトップ選手がフランスリーグで活躍するようになったのは最近のことである。以前は北欧の選手は国外での活躍はイングランドやドイツなどアングロサクソン系のクラブが中心であったが、最近はラテン系のフランスリーグでも活躍するようになった。この道筋を作ったのはリールであり、リールは伝統的に北欧の選手を積極的に受け入れてきており、現在もキアルが所属しており、最近ではエビアンがこれに続き、バス以外にイエスパー・ハンセン、イエスパー・ユエルスゴーア、ニッキー・ビリー・ニールセンと4人のデンマーク人選手が所属しているのである。(続く)

このページのTOPへ