第1893回 パリサンジェルマン、3年連続でチャンピオンズトロフィーを獲得

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■1995年から始まったフランスのチャンピオンズトロフィー

 前々回と前回の本連載は国内リーグの開幕前にチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの予備戦を戦ったモナコ、サンテチエンヌ、ボルドーの戦いを紹介し、3チームともプレーオフに進出したことを紹介した。
 今回はリーグ開幕前に国内チーム同士で争われる公式戦、チャンピオンズトロフィーについて紹介しよう。チャンピオンズトロフィーとはフランスにおけるスーパーカップであり、リーグチャンピオンとカップ戦勝者がリーグ開幕の前週末に対戦するものである。イングランドや日本では古くから行われているが、フランスでは1995年から始まっている。

■二冠を達成したパリサンジェルマンとリーグ2位のリヨンが対戦

 開始して2年目の1996年にはオセールがリーグとカップの二冠を獲得したため、チャンピオンズトロフィーは開催されなかったが、その後、大会規定が変わり、リーグチャンピオンがフランスカップも獲得した場合はリーグ2位のチームが代わりに出場してくることになる。今年もこの大会規定が適用され、リーグとカップを独占したパリサンジェルマンがリーグ2位のリヨンと対戦する。

■2009年から国外で開催、今年はカナダのモントリオール

 フランスのチャンピオンズトロフィーがユニークなところはその開催場所である。日本であるならば、かつては国立競技場、現在は日産スタジアムというように国を代表する競技場で開催される。一方、フランスは第1回大会はブレストで行ったように、発足当初はサッカーの普及を考え、1部リーグの本拠地ではないが、ある程度の人口のある都市で開催していた。そして2000年代に入ると、いずれかのチームの本拠地またはカンヌのような避暑地で行われるようになった。2009年からは国外で開催するようになった。2009年にはカナダのモントリオールで行われ、以降チュニジアのラデス、モロッコのタンジール、米国のニューヨーク、ガボンのリーベルビル、そして昨年は中国の北京の工人体育場で行ったことから日本の読者の皆様もよくご記憶であろう。外国と言っても欧州ではなくサッカーがあまり盛んではない地域に出向き、フランスサッカーの魅力を伝えること、そして地元から審判団を選出し、レベルアップさせることも使命である。
 今年は再びモントリオールでの開催となる。モントリオールは6月には女子ワールドカップが開催されたが、その際に利用したのはオリンピックスタジアムである。このオリンピックスタジアムは2009年のボルドーとギャンガンの試合にも使用されたが、今回は舞台が変わり、オリンピック公園の中に2007年に建設されたサッカー専用競技場のサプト競技場での開催となる。イタリア移民のジョーイ・サプトはカナダで財をなし、モントリオール・インパクトのオーナーになるとともに、2万人収容のスタジアムを建設した。モントリオール・インパクトはMLSに所属し、MLSで仏語圏にある唯一のチームである。

■パリサンジェルマン完勝、不安一杯のリヨン

 パリサンジェルマンは正GKのサルバトーレ・シリグに代えて、今季加入したケビン・トラップを起用したほかはほぼベストの布陣。一方のリヨンもトップにはアレクサンドル・ラカゼットを配し、必勝の構えであるが、ここまでの練習試合の成績は振るわず、イングランドのアーセナルに0-6と大敗を喫するなど、シーズン開幕に向けて修正したいところである。
 満員の2万人を超える観客の前でキックオフされ、パリサンジェルマンは順調な仕上がりを見せる。11分にはゴール前へのFKがこぼれたところをダビド・ルイスがつなぎ、最後はセルジュ・オーリエがヘディングで先制点をあげる。
 17分にも右サイドからオーリエがクロスをあげて、エディンソン・カバーニがボレーで追加点、これで3年連続でチャンピオンズトロフィーを獲得し、今季もフランスサッカーの主役であることを印象付けた。
 一方のリヨンは攻撃の糸口をつかめず、終了1分前まで枠内にシュートを放つことすらかなわなかった。さらにリヨンは主将のマキシム・ゴナロンが2回の警告により退場、リーグ開幕のロリアン戦は出場停止となったのである。(この項、終わり)

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