第1910回 ポルトガル、セルビアに連勝(5) ディディエ・デシャン体制の柱、マチュー・バルブエナ

 4年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■欧州選手権予選では不調なセルビア

 前回までの本連載ではフランスがリスボンでポルトガルに1-0で勝利したことを紹介した。ポルトガルは世界ランキング6位、そして欧州選手権の予選ではグループIで首位を走っている。これから本大会までの間にフランスは親善試合を重ねるが、その中にはドイツ、イングランド、オランダという強豪とも対戦する。この一連の強豪との対戦を白星で飾ることができた。
 リスボンでの試合の3日後、フランスに戻り、ボルドーでセルビアと対戦する。フランスとセルビアの対戦成績はフランスの2勝2分、最初の対戦は2010年のワールドカップ予選であるが、セルビアは欧州選手権予選ではグループIに所属しており、昨年の9月にアウエーのベオグラードで親善試合で対戦したのが最新の対戦である。このベオグラードでの試合は1-1の引き分けに終わっている。セルビアは、今回の欧州選手権予選ではアルバニア戦が没収試合になったこともあり、この秋まで勝ち点はわずかに1、ようやく9月5日のアルメニア戦で初勝利をあげたばかりである。
 2010年ワールドカップ予選ではフランスを上回る成績を残し、本大会に出場しているセルビアであるが、欧州選手権の本大会出場の経験はなく、今回も厳しいところである。しかし、本大会に出場できないのであればフランスクラスのチームと戦う機会は大きく失われる。セルビアもチーム再建をかけてフランスに一泡吹かせたいところである。

■セルビア戦の先発メンバー

 セルビア戦の先発メンバーは次のとおりである。GKはウーゴ・ロリス、DFは右からバカリ・サーニャ、ラファエル・バラン、エリアキム・マンガラ、ブノワ・トレムリナス、MFは低い位置にモルガン・シュナイデルラン、攻撃的な位置に右にポール・ポグバ、左にブレーズ・マツイディ、そしてFWは1トップで右にマチュー・バルブエナ、左にアントワン・グリエズマンとなり、中央にはオリビエ・ジルーが控える。
 フランスのポルトガル戦の勝利は、終盤のマチュー・バルブエナがFKを直接ゴールに入れた1点によるものである。バルブエナは、ディディエ・デシャン監督になってから39試合中38試合に出場しており、監督の信頼が厚く、その信頼に応えた。もう1人、デシャン監督を置いている選手がポール・ポグバである。一昨年3月のジョージア戦で代表にデビューして以来、ほとんどの試合に出場している。本来は守備的MFを務めているが、ポルトガル戦では攻撃的MFの中心を初めて務めたが、芳しいパフォーマンスを示すことができず、バルブエナと明暗が分かれた。セルビアとの試合でバルブエナもポグバも右サイドでの出場となる。

■代表戦出場が50試合目となるマチュー・バルブエナ

 このセルビア戦はバルブエナにとって代表出場50試合目となる。代表戦50試合を達成したのはバルブエナが43人目であり、現在のフランス代表の中ではベンゼマ(80試合)、ロリス(69試合)、エブラ(68試合)、サーニャ(51試合)に次いで5番目となる。バルブエナはゴールをあげるとともに、アシストをあげることを期待されており、デシャン監督になってから出場した過去38試合で6得点、14アシスト、得点に絡むという点では10得点7アシストのベンゼマや6得点10アシストのフランク・リベリーを上回る存在感を示している。

■ボルドーの下部組織で育ったバルブエナ

 ロシアのディナモ・モスクワから今季リヨンに移籍してきたバルブエナはディナモ・モスクワ以前に長年所属していたマルセイユのイメージが強いが、バルブエナが一番長く所属したのはボルドーである。10代のほとんどをボルドーの下部組織で過ごしながら、ボルドーとプロ契約をするに至らず、下位のリーグのクラブを経て2006年にマルセイユと契約している。
 ボルドーはバルブエナの身長が低かったからという理由でプロ契約しなかったが、ボルドーのファンはその後のバルブエナの活躍を苦い気持ちで見守っているであろう。
 そしてバルブエナは第二の故郷で記念すべき試合を迎えるのである。(続く)

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