第1999回 オランダ、ロシアに連勝(4) 背番号14のブレーズ・マツイディが決勝ゴール

 5年前の3月11日の東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、東北地方だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■カリム・ベンゼマの代役となれるか、オリビエ・ジルー

 オランダでの21年ぶりの勝利を狙うフランスにとって注目の選手はCFに起用されたオリビエ・ジルーである。本来ならばこのポジションのレギュラーであるカリム・ベンゼマが昨年チームメイトのマチュー・バルブエナを脅した事件で代表から離れている。事件発覚後のベンゼマの代役として昨年11月13日のドイツ戦ではジルー、19日のイングランド戦ではアンドレ・ピエール・ジニャックを先発させている。ジルーはドイツ戦では先制点を決めている。ジニャックはイングランド戦は無得点であったが、ジルーに代わって途中出場したドイツ戦では終盤に得点をあげている。
 ジルーにとっては、このオランダ戦が、欧州選手権でCFの座を確保できるかどうかの分水嶺になる。ジルーに代えてジニャックを起用するか、あるいは決して弱くはない社会からの反発を覚悟した上でベンゼマを復帰させることも考えられる。

■アントワン・グリエズマンのFKでフランスが先制、追加点はジルー

 まず先制したのはフランスであった。6分にフランスはペナルティエリアの外でFKのチャンスを得る。アントワン・グリエズマンとディミトリ・ペイエが助走に入るが、結局グリエズマンが左足で蹴り、オランダのオレンジの壁の上を通り過ぎたボールはゴールネットを直接揺らした。
 さらに13分、フランスは右CKのチャンス、このCKをいったんはオランダはヘディングでクリアしたが、ペナルティエリアの外で待ち受けていたブレーズ・マツイディがヘディングでゴール前に戻す。この浮き球に対して反応したのがジルーであり、ゴール前に走りこんで左足でシュート、ボールはゴールに吸い込まれ、早くもフランスが2点をリードする展開となった。
 そして14分、試合は中断し、オランダが生んだ偉大なる背番号14、ヨハン・クライフを満場の観衆、そしてピッチ上の選手たちは拍手でたたえる。クライフの写真が大型スクリーンに投影され、観客、選手の拍手が終わると試合は再開する。オランダはボール保持率はフランスに劣っているわけではないが、1対1の競り合いの場面ではことごとくフランスに負けており、その差が点差となっているのであろう。
 両チームを通じてただ1人代表戦で100試合以上の出場を誇るオランダの主将のウェスレイ・スナイデルが36分に負傷し、ピッチを去ってしまう。得点力不足が欧州選手権予選敗退の原因であったが、スナイデルの退出により、厳しい試合展開となる。フランスの第2GKのスティーブ・マンダンダはほとんど試合に参加することがなく、アピールのないまま45分を終える。

■エンゴロ・カンテが代表にデビュー

 試合はフランスが2点リードして後半に入ったが、選手選考の意味あいのある親善試合とあって3人のメンバーが交代する。最終ラインの左サイドのパトリス・エブラに代わってルカ・ディーニュ、MFはラッサナ・ディアラに代えて新人のエンゴロ・カンテ、攻撃陣ではグリエズマンに代えてアントニー・マルティアルという交代である。ディーニュはエブラのバックアップ、先制点を決めたグリエズマンは合格という判断がこの時点で下ったのであろう。そしてカンテは代表としてどこまで通用するか注目である。

■追いつかれたフランス、終了間際に決勝点

 オランダは後半開始早々の47分にルーク・デヨングが1点を返す。フランスも67分にポール・ポグバがミドルシュートを放つが、オランダのGKに阻まれ、点差を広げることができない。そして終盤の86分、フランスの守備の乱れを突いて所属チームのイングランドのストークシティでは背番号14を着用するイブラヒム・アフェレイがゴールをあげて、試合は2-2の同点となる。
 このままドローかと思われたが、88分にフランスはマルティアルが左サイドをドリブルで駆け上がり、縦パスを供給、これに反応したのがマツィディである。マツイディのシュートは決勝点となる。この日はブリュッセルのテロ事件とクライフを悼んでフランスの選手は右腕に喪章を巻いていたが、唯一左腕にキャプテンマークを巻いた背番号14の主将マツイディの1ゴール1アシストの活躍でフランスは本年最初の試合に勝利したのである。(続く)

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