第2049回 若きブルー、欧州を制覇(3) 攻撃陣躍動、イタリアに大勝
平成28年熊本地震で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。お亡くなりになった方々に、謹んで哀悼の意を表します。 この地震が1日でも早く収まることと、被災地の皆様の安全とご健康をお祈り申し上げます。
■6年ぶりに決勝に進出
フランスは、欧州選手権でフル代表が決勝戦で敗れてから11日後、弟分の19歳以下代表はポルトガルに快勝し、決勝に進出した。フランスの決勝進出は2010年大会以来6年ぶりのことである。この時は決勝でスペインを下しているが、この時の1991年世代の代表がアレクサンドル・ラカゼットである。また今回の欧州選手権で活躍したアントワン・グリエズマン、日系人選手として話題になったガエル・カクタもメンバーに入っている。
■堅い守備とチームワークで勝ち上がってきたイタリア
それから6年、フランスはジャン・ケビン・オーグスティンとキリアン・ムバッペという2人のエースの活躍で決勝に進出した。決勝の相手はイタリアである。
イタリアは今大会でフランスに唯一の黒星をつけたイングランドを準決勝で下しているチームであり、フランス同様全員が国内のクラブに所属している選手である。しかし、イタリアの場合は彼らの中でトップチームで活躍している選手が少ない。フランスの場合はフランスリーグで活躍している選手が多く、フランスリーグが他国の有力選手が少ない分、国内の若手選手のチャンスが広がっているということができるであろう。
また、イタリアのこの世代にはタレントが存在しないということも事実であろう。個人個人の力量で劣る分をチームワークで補い、決勝に進出してきた。グループリーグは1勝2分、堅守を誇り、ここまでの失点はわずか3である。攻撃に関しては5得点のうち4得点はインテル・ミラノに所属しているフェデリコ・ディマルコが記録しているが、ポジションは左サイドのDFであり、4得点中3得点はPKによるもの、そして残り1点もFKを直接ゴールしたものである。
■立ち上がりから得点を重ね、優勝したフランス
さて、決勝の舞台はジンスハイムである。人口わずか3万5000人の小都市であるが、この年にはブンデスリーガ1部に所属するホッフェンハイムがある。ホッフェンハイムとはこのジンスハイムの一地区であり、収容人員3万人を誇るライン・ネッカー・スタジアムを有する。2011年の女子ワールドカップでも使用されたスタジアムが今回の決勝で使われる。
フランスは2人のエースが爆発し、ムバッペとオーグスティンがそれぞれ5点ずつ記録してきた。攻撃力のフランス、守備力のイタリアという図式であるが、試合はフランスの攻撃がイタリアの守備を粉砕した。開始6分にオーグスティンがドリブルで突進し、イタリアのGKをかわして先制ゴールを決める。19分には準決勝で活躍したクレマン・ミシュランとルドビック・ブラスのホットラインが機能し、ミシュランのクロスをブラスがヘディングで決めてリードを広げる。
試合はフランスが一方的に支配し、次々とイタリアのゴールを襲う。フランスは試合の終盤に2得点を追加する。82分には主将のルカ・トゥーサールが今大会初の得点をあげる。さらにアディショナルタイムの92分にはイッサ・ディオップがゴールを決めて、4-0というスコアでフランスはイタリアの鉄の守りを粉砕、見事に優勝する。
■大会得点王に輝いたジャン・ケビン・オーグスティン
大会得点王は6得点をあげたオーグスティン、5得点のムバッペも見事な成績である。そしてこの若きタレントを率いたルドビック・バテリ監督は選手としては2部リーグまでしか経験がなく、監督としてもトップレベルのチームの経験はほとんどなく、下部のリーグに所属するチームや下部組織の監督経験しかないが、2013年から年代別フランス代表の監督を務めている。
この19歳以下の欧州選手権となった2002年大会以降、フランスは2005年大会、2010年大会に続いて3回目の優勝となる。この間7回優勝しているスペインに次ぐ成績であるが、2010年大会には今回の欧州選手権の準優勝メンバーにグリエズマンがいたが、2005年大会に出場した選手についてはウーゴ・ロリスとヨアン・カバイエの2人が欧州選手権に出場している。さて、今回の優勝メンバーから将来のフランス代表にはだれが入るのであろうか。(この項、終わり)