第2252回 ワールドカップを目指し、発進(6) 因縁のウェールズを返り討ち、64年ぶりに勝利
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■フットボールで100回目の対戦となるフランスとウェールズ
35年ぶり5回目となるウェールズとの対戦、本連載の読者の方は良くご存じの通り、ラグビーの世界では6か国対抗で毎年少なくとも1回対戦している。ラグビーでフランスとウェールズはこれまでの95回対戦、この対戦数はイングランドの102試合に続き、アイルランドとの対戦数と並んでいる。過去の対戦成績は44勝3分48敗とほぼ互角である。(サッカーは2勝1分1敗)サッカーとラグビーをあわせてフットボールでは通算100回目の対戦となる。
サッカーの場合、前回の1982年の対戦は敗戦であり、最後の白星は1953年にまでさかのぼらなくてはならない。
■ワールドカップに向けて重要な試合となった直近の6か国対抗の対戦
ラグビーの場合は最新の対戦は今年の3月17日の6か国対抗、舞台はこのスタッド・ド・フランスである。6か国対抗の最終戦で両国が対戦したが、ここまでフランス、ウェールズともに2勝2敗である。すでにこの時点でイングランドが4勝、アイルランドが3勝1敗であり、この対戦は優勝のからまないものとなってしまったが、1長い歴史を誇る6か国対抗の試合である。そしてフランスにとってはもう1つ大きな意味があった。それはこの試合が5月に行われる2019年のワールドカップの抽選会前の最後の試合であることから、その際に使用される世界ランキングに影響があるからである。フランスはこの時点でランキング8位、もしもこのウェールズ戦に15点差以上で敗れることになるとアルゼンチンと入れ替わってランキングが9位に落ちてしまう。ランキング9位はワールドカップの抽選では第3シードに割り当てられてしまう。
■20分のロスタイム、伝説と疑惑のフランスの勝利
そういうこともあり、フランスにとって勝ちたい試合であったが、惜敗したイングランド戦同様、得点力がなく、逆にウェールズの誇るスーパーブーツのリー・ハーフペニーが次々と6本のペナルティゴールを決める。80分に近づいた時点でフランスは13-18と5点のリードを迎えた。ここから伝説の20分間が始まった。
ラグビーは試合が途切れないと試合終了とならない。そしてサッカーと同様にペナルティキックが与えられる場合は試合が途切れても試合終了とはならない。すなわち反則で試合が途切れる限り、試合は延々と続く。80分を越えてから、フランスはウェールズのゴール前でボールを支配する。守勢のウェールズは反則でフランスの攻撃を止めるしかないが、試合はフランスボールのペナルティキックあるいはスクラム(ペナルティキックの代わりにスクラムを選択することもできる)で再開される。そして84分にはプロップのウイニ・アトニオが負傷する。フロントローの選手が負傷した場合にはいったん後退した選手の再出場が認められている。ここでフランスは先発メンバーでスクラムの強いラバ・スリマニがピッチに再登場。フランスは20分間の長いロスタイムをほとんどウェールズゴール前のスクラムで戦い、ついに時計は100分、ダミアン・シュリ-がトライをあげて同点、さらにカミーユ・ロペスがゴールをあげてフランスが20-18と逆転勝利をあげたのである。
もちろん、これは伝説となったが、逆にウェールズ側はロスタイムでの選手交代は意図的ではないかと猛抗議、感動と疑惑の試合となったのである。
■ラグビーと予選落ちの雪辱を晴らしたいウェールズを返り討ち
それから初めてウェールズがスタッド・ド・フランスにやってきた。ラグビーの敵はサッカーで、そしてワールドカップ予選落ちの雪辱を晴らそうと意気込むウェールズ、しかし、試合は青いユニフォームのフランスがボールを支配する展開となった。立ち上がりが攻撃陣が次々とウェールズのゴールを襲う。先制点は18分、コランタン・トリッソからの長いフィードをアントワン・グリエズマンがペナルティエリア付近で追いつき、難しい体勢からボレーでシュート、先制する。
フランスは後半開始時点でバンジャマン・パバール、スティーブン・エンゾンジの2人をピッチに送り込み、ディディエ・デシャン体制下で71人目と72人目の代表選手となった。ウェールズも17歳のイーサン・アンパドゥを出場させ、試合内容は拮抗したが、71分にオリビエ・ジルーが追加点をあげる。
フランスは2-0とウェールズに64年ぶりの勝利をあげたのである。(続く)