第2255回 ワールドカップを目指し、発進(9) アディショナルタイムに追いつかれドイツとドロー
6年前の東日本大震災、昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■アウエーゲームとしては最多の2217人のフランス人が観戦
ドイツのフランス寄りに位置するケルンでの親善試合、距離的にフランスから近いだけではなく、世界チャンピオンに挑戦するとあって、多くのフランス人がケルンに赴いた。フランス協会経由で販売されたチケットは実に2217枚であり、これはフランス代表のアウエーゲームにおけるフランス人の最多観客動員となった。一方、地元ケルンでのチケットの販売状況は芳しくなく、空席も目立つ中での試合当日を迎えた。
ライン川を越えて応援に駆け付けてくれたファンのためにもフランスは勝利したいところである。フランスはドイツにはワールドカップの大一番では負け続けているものの、相性は良く、選手は苦手意識を持っていない。一方のドイツも昨年の欧州選手権でフランスに敗れて以来20試合連続で負け知らず、このフランス戦に負けなければ2017年を無敗で終えることができる。
2年前の同時多発テロの犠牲者を悼み、ドイツの選手は左腕に喪章を巻く。フランスはユニフォームの両脇から腰、そしてショーツは両脇に黒い線をデザインした特別なデザインのユニフォームでこの一戦に臨む。
■ボールを支配するドイツ、数少ないチャンスをシュートに結びつけるフランス
試合はドイツのキックオフで始まった。フランスとドイツの対戦というと3年前のワールドカップでフランスがボールを一方的に支配しながらの一撃に屈した試合が印象的であるが、この日の試合はそれとは逆の展開となり、序盤こそフランスがボールを支配したが、10分過ぎからボールを支配し続けたのはドイツであった。ドイツではこの試合をワールドカップ決勝の予行演習とみなすメディアもあり、選手たちも勢いに乗ってフランスをたたいておきたいところである。ドイツの堅い守備に対し、フランスは次第に攻めが弱くなっていく。15分過ぎになるとドイツが優勢に試合を進めるようになる。
ところがこの日のフランスは数少ないチャンスをゴール前までつなぎ、シュートに持ち込む力を持っていた。19分、センターサークル付近でボールを奪ったアレクサンドル・ラカゼットがイルカイ・ギュンドガンを抜き去り、無人のフィールドを突進する。シュートはドイツのGKケビン・トラップにパンチングで阻まれたものの、オリビエ・ジルーに代わって先発メンバーに入ったラカゼットは存在感を見せる。この時点でドイツはボール支配率で上回っていたもののシュートはまだなかった。ドイツのシュートをさせなかったのがストッパーのサミュエル・ウムティティの存在である。ことごとく1対1の競り合いで勝ち、ゴール前でドイツに仕事の機会を奪ったのである
■アレクサンドル・ラカゼット、2ゴールを奪い存在感を見せる
そして30分過ぎからフランスが厚みのある攻撃を見せ、右サイドからのクロスをペナルティエリア内でアントニー・マルシャルが受け、ニクラス・ジューレを交わし、ラカゼットにパスを通す。ラカゼットは至近距離から先制点をマークする。
前半はフランスが1点リードして終えたが、後半に入ってドイツが追いついた。56分にドイツはカウンターアタックからティモ・ベルナーがオフサイドギリギリのところでメスト・エジルからのパスを受けて同点ゴール。ドイツは期待の若手ストライカーのゴールが生まれた。代表10試合目にして早くも7得点目、ミロスラフ・クローゼの後継者は決まった。
フランスは64分に選手を2人交代した。この連戦が代表初招集となるバンジャマン・パバールとスティーブ・エンゾンジの2人がウェールズ戦に続いて試合の途中から出場する。この2人により、リズムが変わり、試合の流れがフランスに傾いた。71分にはキリアン・ムバッペのパスをラカゼットが決めて勝ち越す。ラカゼットは代表で初めての1試合2得点である。
■終了間際に追加点のチャンスを逃し、アディショナルタイムに追いつかれる
さらに89分にはムバッペがマルシャルに絶妙のパスを送り、マルシャルはトラップと1対1となったが、トラップにブロックされ、追加点はならなかった。
そしてアディショナルタイムの表示は3分、その93分にエジルからのパスを交代選手がつなぐ。エジルからマリオ・ゲッツェにつながり、ゲッツェはラース・シュティンドルにショートパス、これをシュティンドルが決めてドイツは同点に追いつき、試合はドローとなったのである。(この項、終わり)