第2307回 コロンビア、ロシアと連戦(1) ディディエ・デシャン流の3月の親善試合

 7年前の東日本大震災、一昨年の平成28年熊本地震などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■本大会メンバー決定前最後の試合となる3月の親善試合

 前回までの本連載では2月中旬に始まったチャンピオンズリーグとヨーロッパリーグの決勝トーナメントを紹介し、年が変わってから初めての国際試合が行われたことを紹介したが、代表の試合は3月下旬に始まる。それがコロンビア、ロシアとの親善試合である。今年初めての親善試合とはいうものの、今年はワールドカップイヤー、メンバー決定前最後の試合の機会である。したがって親善試合とはいってもその重要性は高い。そして、この3月の親善試合を新戦力のテストに使うか、既存の選手の調整に使うのか、これは監督の考え方次第である。

■2014年3月にデビューしたアントワン・グリエズマンとルカ・ディーニュ

 ディディエ・デシャン監督になってこれが2回目のワールドカップ、2016年には欧州選手権も戦っており、3回目の国際大会となるが、2014年と2016年の3月の親善試合の選手選考を振り返ってみよう。2014年はオランダと親善試合を行い、24人のメンバーを選出した。この時に代表経験がなかったのはアントワン・グリエズマンとルカ・ディーニュの2人である。グリエズマンはフランク・リベリーの負傷、所属チームのパリサンジェルマンでも出場機会の少なかったディーニュはエリック・アビダル、ガエル・クリシーに代わるメンバーとして選出されたが、2人とも3か月後のワールドカップのメンバーに入っている。一方、親善試合のメンバーに入りながら、ワールドカップの23人のメンバーから外れたのはディミトリ・パイエだけである。(第3GKのステファン・ルフィエも外れたが、スティーブ・マンダンダの負傷により、ワールドカップのメンバーとなった)

■2016年3月に代表入りしたエンゴロ・カンテ

 2016年はオランダとロシアと対戦しており、この時は23人のメンバーのうち、エンゴロ・カンテだけが代表歴のない選手として選出されている。本連載の読者の皆様もカンテが3か月後の欧州選手権で活躍したことは記憶に新しいであろう。そしてこの23人のうち、ワールドカップのメンバーから外れたのはママドゥ・サコーだけであった。サコーは負傷により離脱しており、戦術的な理由ではない。
 このように過去2大会のデシャン監督の3月の親善試合に臨むメンバー選考を見ると、これがファイナルメンバーであると言えるであろう。そしてフランスは3月15日に発表された世界ランキングでも9位とまずまずの順位を保っている。

■ディディエ・デシャン流の3月の親善試合のメンバー選考

 そして肝心の3月の親善試合の結果であるが、2014年のオランダ戦はカリム・ベンゼマ、ブレーズ・マツイディのゴールで2-0と勝利している。2016年のオランダ戦はアウエーで行われたが、2-2の引き分けかと思われた終了間際にマツイディが決勝点をあげて、3-2で勝利、続くロシア戦も4-2と勝利する。
 デシャン監督以前をさかのぼると、偶数年の3月(あるいは2月)の親善試合の戦績や新戦力の起用はデシャン監督とは異なっている。ローラン・ブラン監督時代の2012年には2月29日にドイツと親善試合を行い、2-1と勝利したが、この試合で代表に唯一デビューしたモルガン・アマリフィターノはこの試合が最初で最後のブルーのユニフォームとなった。レイモン・ドメネク監督時代の2010年には3月3日にスペインと対戦し、0-2と敗れている。そしてこの試合で代表にデビューしたミカエル・チアニもアマリフィターノ同様に、この試合にしか代表として出場していない。同じくドメネク監督が指揮を執った2008年は2月6日にスペインと対戦して敗れ、3月26日にイングランドに勝利しているが、新戦力は起用していない。
 すなわち、前年の秋までの時点でメンバーを固め、熟成したチーム力で3月の親善試合では結果を残す。そして3月の親善試合でデビューさせた新人は6月の本大会にも招集するというのがデシャン流である。本大会で結果を残していることから、今回もデシャン流を貫くと思われるが、どのようなメンバー選出となるか関心は尽きない。(続く)

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