第2520回 最大の強敵、米国と対戦(2) ドナルド・トランプ大統領と対立した米国チーム

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ホワイトハウス招待を拒否したミーガン・ラピノー

 グループリーグを3戦全勝で通過したチームはフランスを含め5チームあるが、その中でも圧倒的な力を見せたのが米国であり、前回紹介したとおり、18得点、無失点で首位突破する。ところが、決勝トーナメントを前にピッチの外で事件が起こった。
 優勝候補筆頭と目される米国であるが、ドナルド・トランプ大統領が優勝した際はホワイトハウスに招待する意向を表したところ、共同主将を務めるミーガン・ラピノーがホワイトハウス訪問を拒否した。拒否の理由は政治的な問題に加え、サッカー選手の男女の格差に対する抗議の意味もある。早速トランプ大統領はツィッターで反論し、ピッチ外での乱戦となった。トランプ大統領は訪日の際は自らゴルフをたしなみ、大相撲観戦をするなどスポーツを愛する大統領であると日本の皆様は感じているかもしれないが、米国では多くのアスリートと対立を繰り返しており、今回のサッカー女子代表チームとの対立も珍しいことではない。

■フランスでもあるサッカー選手の給与の男女格差

 ただ、サッカー選手の給与における男女格差はフランスにおいても同様である。例えばフランス人サッカー選手で最も給与が高いのはウェンディ・ルナールと言われており、月収は2万9000ユーロである。しかし、これは月収330万ユーロといわれる男子のアントワン・グリエズマンの0.9%に過ぎない。そしてルナールの給与は男子のパリサンジェルマンの選手の平均の3.5%にしかならない。

■リヨンとパリサンジェルマンに富と選手が集中するフランス、対照的な米国

 さらに、フランスにおいてはクラブ間格差もあらわになった。今回のフランス代表には23人が選出され、リヨンから7人、パリサンジェルマンから4人が選出された。収入ランキングをつくると、上位7人がすべてリヨンの選手、そして8位から11位までがパリサンジェルマンの選手となった。フランスにも女子のプロサッカーリーグがあるが、この中でプロの名にふさわしい高給を得ているのはリヨンとパリサンジェルマンの選手だけである。そしてこの両チームに有力選手が集中している。リヨンは女子のチャンピオンズリーグで優勝し4連覇を果たし、パリサンジェルマンも準々決勝に進出している。しかしながら、この両チームに続くチームが女子のフランスリーグにはない。
 一方の米国の強さは特定のチームに有力選手が集中するのではなく、代表選手が分散しており、層の厚さにつながっている。23人全員が自国のクラブに所属し、所属クラブは8つとなる。4人の代表選手を抱えるクラブがシカゴ、ポートランド、ユタの3つあり、シカゴにはGKのアリッサ・ナーハー、MFのジュリー・エルツ、ポートランドにはMFのリンゼイ・ホラン、FWのトビン・ヒース、ユタにはDFのケリー・オハラ、ベッキー・サウアーブランなどが所属している。意外なことかもしれないが共同主将を務めるラピノーはシアトル、アレックス・モーガンはオーランドに所属している。

■スペイン相手に初失点した米国、ミーガン・ラピノーの2つのPKで勝利

 米国の決勝トーナメント1回戦の相手はスペインである。フランスがブラジルを破った翌日にランスで行われた。スペインはグループBで2位、首位のドイツに0-1と敗れ、中国とはスコアレスドローであったが、得失点差で2位に入りこんでいる。
 米国は立ち上がりからエンジン全開、6分にはヒースがボールを持ち込んだところをペナルティエリア内で倒され、PKとなる。これをラピノーが成功させる。しかし、スペインは9分にジェニファー・ヘルモソが同点ゴール、米国にとって今大会初の失点となる。米国はボール支配率でスペインを上回るものの、スペインはこの大会で初めて米国を苦しめたチームとなった。その中心となったのがパリサンジェルマンに所属する主将のイレーヌ・パレデスである。守備の中心として米国の攻撃に立ち向かう。
 しかし、75分にスペインはペナルティエリア内で再びファウルを犯してしまう。今度もラピノーが決めて、準々決勝進出を決め、フランスと対戦するのである。(続く)

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