第2523回 2019年女子ワールドカップフィナーレ(2) 欧州からオリンピック出場チームが決定

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■グレイト・アゲイン、圧倒的な強さで連覇した米国

 今回の女子ワールドカップでは前回の本連載で紹介したとおり、米国が優勝した。まさに「グレイト・アゲイン」にふさわしい連覇を果たした。女子サッカーの歴史は浅く、ワールドカップが始まったのは1991年、オリンピックへの採用は1996年大会からである。いわゆるマイナー競技からの出発であるが、得てしてマイナー時代には格差が大きく、大差の試合も生じる。しかし、マイナー競技からの脱却に伴って裾野が広がり、レベルが上がるとともに、試合内容も競り合いが多くなっていくのが普通である。女子サッカーも同様の道のりをたどっているが、今回の米国の強さは別格であった。グループリーグから通算して7戦全勝、総得点26というのはこれまでのワールドカップの歴史で最多得点となった。

■ベテラン勢が活躍した米国

 そして米国は前回大会でも無敗で優勝している。すなわち2011年大会の決勝で日本に敗れたのを最後にワールドカップ本大会では12連勝をしている。この連覇を支えてきたのがベテラン勢である。フランスもそうであるが代表の主力には男子に比べて女子の方がベテラン選手が多い。今大会の得点女王ならびに最優秀選手に選出されたミーガン・ラピノーは34歳、ミーガンは決勝戦でも得点を記録しているが、これは女子ワールドカップの決勝の歴史において最年長の得点者となったのである。また2015年大会のヒロインはカーリー・ロイドであったが、今大会でも健在で3得点をあげている。

■米国以外の準々決勝進出チームはオリンピック出場のかかる欧州勢7チーム

 このように米国の強さが際立った大会であったが、忘れてはならないのが欧州勢の快進撃である。準々決勝に進出した8か国のうち、米国以外の7か国は欧州のチームである。日本をはじめとするアジア勢、南米勢、アフリカ勢は決勝トーナメント1回戦で姿を消している。そして圧倒的な強さを誇った米国であるが、決勝トーナメントに入ってからは4試合すべてが欧州勢が相手であり、決勝のオランダ戦こそ2-0であったが、それ以外のスペイン、フランス、イングランドとは2-1と失点を喫し、1点差の勝利であった。
 欧州勢の台頭についてはもちろんフランスという欧州で大会が行われたホームアドバンテージ、欧州における女子サッカーの人気とレベルの向上も理由としてあげられるが、なんといってもこのワールドカップが来年のオリンピック予選を兼ねていたということがあげられる。
 東京オリンピックの女子サッカーには12チームが出場するが、開催国の日本以外に、アジアから2チーム、南米とアフリカからそれぞれ1.5チーム(南米2位とアフリカ2位がプレーオフ)、北中米カリブ海から2チーム、オセアニアから1チーム、そして欧州から3チームが出場する。アジア、アフリカはオリンピックのために予選を行う。予選がビジネスとして成立する地域ならではのことである。南米、オセアニアは大陸別の選手兼が予選を兼ねる。そして欧州についてはワールドカップでの欧州の上位3か国に東京行きのチケットが与えられる。
 したがって、今大会の欧州勢にとっては通常のワールドカップよりも重い意味を持つ大会となった。

■オランダ、スウェーデン、イングランド(英国)がオリンピック出場

 欧州から出場した9か国(開催国のフランスを含む)のうち、グループリーグで敗退したのはスコットランドだけであった。決勝トーナメントには8チームが進出し、1回戦で欧州勢同士の対戦はなかった。欧州勢は欧州勢以外と対戦したが、欧州勢で敗れたのは米国と対戦したスペインだけであり、欧州勢7チームが準々決勝に進出したのである。準々決勝は4試合中3試合が欧州勢同士の試合、すなわち、少なくとも3チームが準決勝に進出する。唯一欧州以外のチームと対戦したフランスは米国に勝利しないことにはオリンピックの道が開かれなかったのである。
 結局、欧州からのオリンピック出場チームは準々決勝でイタリアを破ったオランダ、ドイツに勝利したスウェーデン、ノルウェーを一蹴したイングランド(英国として出場予定)となったのである。(終わり)

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