第2524回 フランス男子、24年ぶりにオリンピック出場(1) オリンピックから遠ざかるフランス
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■女子もハイレベルな欧州、ランキング上位国が東京に届かず
前回までの本連載ではフランスで開催された女子ワールドカップの模様を取り上げ、米国が圧倒的な強さで連覇を果たしたこと、米国以外は欧州勢が上位を占め、その理由としては欧州勢にとってはワールドカップが来年の東京オリンピックの予選を兼ねていたことを紹介した。米国に準々決勝で敗れたフランスは東京オリンピック出場はかなわず、オランダ、スウェーデン、イングランド(英国)が東京オリンピックに出場する。大会前のFIFAランキングで欧州勢の上位の順位はドイツ(2位)、イングランド(3位)、フランス(4位)、オランダ(8位)、スウェーデン(9位)であり、FIFAランキングで5位以内のチームが2つも本大会出場を逃している。
フランスに関して言えば、現在のFIFAランキングだけではなく、近年のメジャー大会には継続して出場中である。ワールドカップについては2011年(4位)、2015年(ベスト8)、2019年(ベスト8)、と3大会連続出場で上位進出、オリンピックには2012年に初出場を果たして4位、2016年もベスト8であった。すなわち、2011年のドイツでのワールドカップ以来、ワールドカップとオリンピックに5大会連続出場し、決勝トーナメントに進出しているのである。そのフランスですら出場できなかった来年の東京でのオリンピックでの女子サッカーはハイレベルな戦いが予想される。
■プロが容認された1984年のロサンゼルスオリンピック
今回からは欧州の男子サッカーの来年のオリンピック出場権争いを紹介しよう。オリンピックのサッカー競技において男女の扱いは異なる。ワールドカップと並ぶフル代表の争いである女子とは異なり、男子はオーバーエイジ枠はあるものの23歳以下の年齢別大会になっている。もともとはアマチュアの大会であったオリンピックのサッカーはステートアマを抱える東欧の存在もあり、その位置づけが中途半端であったが、プロの出場することのできる年齢別大会としての地位を確立した。大規模な競技場を使用することもあり、オリンピックにおいては最も観客動員数に勝る競技である。
オリンピックの男子サッカーにとって転機となったのが1984年のロサンゼルス大会である。ピーター・ユべロスというビジネスマンが組織委員長となったロサンゼルス大会はそれまでのオリンピックとは異なるオリンピックを作り出し、商業化への道を加速させた。サッカーにおいてもワールドカップの本予選に出場していないという条件はついたものの、プロ選手の出場が認められた。
■直前の欧州選手権に続きオリンピックでも優勝したフランス
フランスはロサンゼルスオリンピックで決勝に進出、10万人以上の観衆を集めたローズボウルでブラジルを2-0と破り優勝を果たした。オリンピック前に行われた欧州選手権でもフランスは優勝しており、うれしい二冠となった。前回のモスクワオリンピックにおける西欧勢のボイコットに対抗して東欧勢がボイコットしたものの、東欧勢が常に金メダルを獲得していた男子サッカーにおいて西側諸国の優勝は1948年のロンドンオリンピックのスウェーデン以来、36年ぶりのことであった。
■1996年アトランタオリンピックでは準々決勝でポルトガルに延長で敗れる
その後、1992年大会からは23歳以下という出場資格が設けられ、年齢別大会では最も高いランクの大会となった。フランスはオリンピックにおける変革の最初の大会で闘将ドゥンガ率いるブラジルを破って優勝したが、その次の本大会出場は同じ米国で行われた1996年のアトランタオリンピックまで待たなければならなかった。この大会からオーバーエイジ枠が設けられた。
フランスは全員国内のクラブに所属する23歳以下の選手で臨み、ロベール・ピレス、クロード・マケレレなど、のちにフル代表でも活躍する選手も名を連ね、グループリーグは首位で通過したものの、決勝トーナメントの初戦にあたる準々決勝でポルトガルに延長の末敗れている。若手育成に定評のあるフランスであるが、それ以来、男子はオリンピックから遠ざかっているのである。(続く)