第2543回 2019年アフリカ選手権(5) アルジェリア、29年ぶり2回目の優勝
8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■バヒッド・ハリルホジッチ後の低迷を救ったジャメル・ベルマディ
アフリカ選手権の決勝はアルジェリアとセネガルの間で争われることとなった。
後に日本代表の監督となるバヒッド・ハリルホジッチが率いた2014年ワールドカップでは決勝トーナメントに進出したが、ハリルホジッチ後のアルジェリアは低迷する。2015年のアフリカ選手権こそ準々決勝に進出したが、2017年大会はグループリーグで敗退する。これを受けて国民的英雄でありインターコンチネンタルカップで訪日の経験もあるラバ・マジェールを監督に据えるが2018年ワールドカップは予選落ちであった。
そして、昨年の夏に監督に就任したのがジャメル・ベルマディである。フランス生まれのアルジェリア人のベルマディはフランスのクラブで活躍し、アルジェリア代表にも選出されている。本連載第5回から第12回で紹介した2001年10月6日にスタッド・ド・フランスで行われたフランスとの試合にも先発出場し、得点をあげている。アルジェリアがフランスと対戦したのはこの試合だけであり、ベルマディはアルジェリア人としてフランス相手にゴールを決めた唯一の選手である。引退後はカタールのクラブチーム、代表チームの監督を務め、低迷していた母国の代表監督となる。就任後、アフリカ選手権の予選を勝ち抜き、本大会出場、そしてグループリーグでは無失点で3戦全勝である。
■選手としても監督としても日本と縁のあるアリウ・シセ
一方のセネガルの監督はアリウ・シセである。セネガル代表として2002年にはワールドカップで訪日していることに加え、監督としても2018年のワールドカップで日本と対戦しているから日本の皆様はよくご存じであろう。シセはセネガル生まれであるが幼少期に一家でフランスに渡っており、フランスのクラブで活躍している。2015年からアラン・ジレスの後をついで代表監督を務めているが、2017年アフリカ選手権ベスト8,2018年ワールドカップ出場と上々の成績を収めている。
■グループリーグの再現となったセネガル-アルジェリア戦
セネガルは組み合わせ抽選のあった4月時点でのFIFAランキングがアフリカで最上位であったため、第1シードになるが、グループリーグでは2位通過にとどまっている。それは第2シードのアルジェリアに0-1と敗れたからである。なお、このグループリーグの試合は開催国のエジプトの出場する試合以外では2番目に多い観客を集めた。決勝の組み合わせはグループリーグの再現となった。
セネガルはサディオ・マネ、アルジェリアはリヤド・マフレズというイングランドで活躍するスター選手が存在する。また、フランスから独立した国同士の決勝戦は2004年のチュニジア-モロッコ戦以来のことである。両国が勝ち進むたびにパリをはじめとしてフランス国内での主要都市ではお祭り騒ぎとなった。パリの警察当局は警備を強化、試合後の混乱に備えて2500人の警官をシャンゼリセ通りに配備したのである。
■開始80秒の得点を守り切ったアルジェリアがアフリカ王者
試合は開始早々にアルジェリアが先制する。左サイドから走りこんできたバグダード・ブーンジャーが右足で強烈なシュート、開始わずか80秒での先制点であった。ブーンジャーは欧州のクラブに所属したことはないが、現在カタールのアル・サッドに所属、22試合で39得点という抜群の得点力を誇る。1点をリードされたセネガルはその後は一方的に試合を支配する。欧州のクラブで活躍する選手で固めたセネガルであるが、なかなか得点を奪うことができず、後半に入る。
後半に入ってもセネガルが攻め込む中で60分にセネガルのクロスがアルジェリアのアドレーヌ・ゲディウラの腕に当たる。PKかと思われたがVARの結果、ハンドではないと判定、試合は続行し、守勢のアルジェリアが守り切って29年ぶり2回目の優勝を果たす。振り返ってみれば29年前の決勝もナイジェリア相手にスコアは同じ1-0だったのである。(続く)