第2544回 2019年アフリカ選手権(6) アフリカで活躍したフランスのクラブの選手

 8年前の東日本大震災、3年前の平成28年熊本地震、昨年の平成30年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■金曜日に行われ、ツール・ド・フランスのフィナーレと重ならなかった決勝

 フランスをはじめとする欧州のサッカーのシーズンオフに行われ、15年ぶりにフランスから独立した国同士の決勝戦とあって、今回のアフリカ選手権はフランスでは今まで以上の盛り上がりを見せた。通常、このような国際大会の決勝は土日に開催されるが、金曜日の7月19日に行われた。もともとの日程は6月15日に開幕し、決勝は土曜日の7月13日の予定であったが、ラマダンの関係で日程が変更となった。ちょうどフランスではツール・ド・フランスの最終日が日曜日の21日であるため、これと重ならない日程となったことも功を奏した。

■決勝戦に4人、全体で7人を送り込んだレンヌ

 決勝戦はアルジェリアとセネガルの間で争われ、両チームの監督は両国の元代表選手であるがフランスとのつながりはこれまでの本連載で紹介している。そしてこの試合の先発メンバーにフランスリーグに所属する選手が5人いた。アルジェリアのメディ・ゼファン、ラミ・ベンセバイニ、セネガルのエムバイ・ニアン、ユスフ・サバリ、イスマイラ・サールである。サバリを除く4人はレンヌに所属している選手である。また試合には出場しなかったがセネガルの控えのGKのアブドゥライエ・ディアロもレンヌの選手である。
 昨季のヨーロッパリーグ、フランスカップでの活躍が印象的なレンヌであるが、今大会にはファイナリストとなった両国の選手以外にコートジボワールのスーレイマン・ドゥーンビア、マリのアマリ・トラオレがおり、総勢7名である。これは今大会に登録した選手のクラブ別の人数比較ではアンゴラのプリメイロ・アゴストの8人に次ぐ数字であり、欧州のクラブでは最多である。 もし、今回のアフリカ選手権がこれまでのように1月から2月にかけて行われていたならば、レンヌはアフリカ諸国の代表選手の大量離脱により、ヨーロッパリーグでスペインのベティスを破って準々決勝に進出することもフランスカップで優勝することもなかったと言えるであろう。日程変更の最大の恩恵を受けたのはレンヌというサッカークラブだったかもしれない。

■ビッグクラブに所属する選手はチームの主力

 クラブ別の所属人数の上位は南アフリカやエジプトなど、比較的国内リーグのレベルの高い国のクラブ、あるいはアンゴラのプリメイロ・アゴストのように、逆に弱小国で選手が国外に流出しない国の上位チームが名を連ねている。そして欧州勢で2番目に所属する選手が多いのはやはりフランス勢、スタッド・ド・ランスが6人の選手を送り込んでいる。マダガスカル、セネガル、モロッコ、マリ、ガーナ、ギニア・ビサウにそれぞれ1人ずつスタッド・ド・ランスの選手がいる。
 フランスのビッグクラブについてみるとパリサンジェルマンにはカメルーンの主将を務めるマクシム・シュポ・モティンが所属している。シュポ・モティンはドイツ生まれでドイツの年代別代表の選手であったがフル代表は父親の国であるカメルーンを選んだ。 昨季リーグ2位に躍進したリールには驚異のゴールスコアラーといわれるコートジボワールのニコラ・ペペ、マリのユスフ・コネが出場した。なお、大会後ペペはイングランドのアーセナルに、コネはリヨンにそれぞれ移籍している。特にペペはイングランドのビッグクラブであるアーセナルがクラブ史上最高の移籍金で獲得した。
 コネの移籍したリヨンには本連載第2541回で紹介したマダガスカルのジェレミー・モレルとコートジボワールのマキシム・コルネとチームの主力選手がいる。また昨季4位となったサンテチエンヌにはチュニジアのワフビ・カズリ、モロッコのユセフ・べナセルがいる。上位チームは人数は少なくとも各クラブの主力となる選手がいる。

■フランスの広がりを示すレユニオンのクラブのマダガスカル代表

 本連載第2539回の本連載ではフランスのクラブに87人が所属と紹介したが、その多くは2部以下のクラブである。そしてその中にはマダガスカル代表に3人を送り込んでいるJSサンピエールというクラブがある。このクラブはマダガスカルの近くにあるフランスの海外県のレユニオンにあり、しばしばフランスカップでは活躍する。フランスサッカーの広がりの意外な一面を表しているのである。(続く)

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