第2656回 追悼、ミッシェル・イダルゴ (14) 大一番のオランダ戦に勝利、最終戦も勝利し本大会出場

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ジュイアンジョザスの確信

 1981年11月18日、フランスはパルク・デ・プランスにオランダを迎えることになる。この試合でオランダが勝利するか引き分けた場合はワールドカップに出場することになる。そしてフランスが勝利した場合は、キプロス戦の結果次第であるが、フランスがワールドカップに出場することがほぼ確実となる。
 当時のクレールフォンテーヌは現在のようには整備されておらず、フランス代表は試合前の合宿はパリ近郊の施設を使用していた。この時に利用したのがジュイアンジョザスにあるHECのキャンパスであった。HECというと今回のコロナウイルスの感染拡大に対し、募金を集め、わずか2週間でマスク1億枚を寄付したことで国際的にも注目されたが、商業系のグランゼコールなのである。
 試合前日はミッシェル・イダルゴ監督をはじめ、極度の緊張感の中での1日となった。前日練習のパルク・デ・プランスでの非公開練習では主にセットプレーを中心に入念に時間をかけて行う。練習後はHECの広大なキャンパスに戻ってくる。ここでイダルゴ監督は確信した。選手たちはダブリンやブリュッセルでの敗戦のことは忘れ、パルク・デ・プランスの勝利のことだけに集中していたからである。

■オーソドックスなメンバーで臨むオランダ戦

 満員の観衆を集めたパルク・デ・プランスでラ・マルセイエーズを歌った先発メンバー、イダルゴ監督がこれまで起用し続けてきたオーソドックスなメンバーが中心となった。GKはアイルランド戦に続いてジャン・カスタネダ、DFは4バック、ジェラール・ジャンビオン、クリスチャン・ロペス、マリウス・トレゾール、マキシム・ボッシ、MFは攻撃的なゲームメーカーの攻撃的な位置にアラン・ジレス、守備的な位置にミッシェル・プラティニとベルナール・ジャンニーニ、FWは中央にベルナール・ラコンブ、右にドミニク・ロシュトー、左にディディエ・シスという布陣である。ベンチにはGKのドミニク・バラテリ以外にフィールドプレーヤーとしてジャン・ティガナ、ジャック・ジマコ、ブルーノ・ベローヌ、フランソワ・ブラッキが控える。

■守備を固めたオランダの壁を破ったミッシェル・プラティニのFK

 前回大会で準優勝したオランダは守備的な体形で臨み、前半を終えて両チーム無得点である。残り45分でフランスはスコアすることができなければ、ワールドカップ出場の夢が途切れる。後半に入って間もない52分、パルク・デ・プランスが歓喜した。20メートル弱の位置でフランスはFKを得る。キッカーはプラティニ、前日に同じ競技場で非公開で重ねてきたセットプレーの再現となった。オランダ守備陣の壁を迂回するシュートはそのままゴールに入った。
 この1点を守り切りたいイダルゴ監督はCFのラコンブを下げ、MFのジマコを投入、高さのあるロシュトーをトップに回し、クリアボールのターゲットとする。さらに75分には主将で先制点をあげたプラティニを下げて運動量のあるジャン・ティガナを投入する。
 そして82分にはロシュトーのクロスをシスが決めて2-0とし、オランダとの直接対決にフランスは勝利したのである。
 オランダに勝利した時点でフランスの勝ち点は8であり、順位は4位のままであったが、フランスには残り1試合ある。この試合で勝利すれば、フランスは2位アイルランドと勝ち点10で並ぶ。得失点差の勝負となるが、この時点でアイルランドの得失点差は+6、フランスは+8であることから、フランスは勝利すれば2大会連続のワールドカップとなる。

■最終戦でキプロスにも勝利、2大会連続で本大会出場

 12月5日、フランスはここまで7戦全敗、4得点25失点というキプロスをパルク・デ・プランスに迎える。プラティニ抜きのメンバーでジャンニーニ、ティガナ、ジレスの3人で中盤を構成する。前半25分にロシュトーが先制点をあげ、29分にラコンブがヘディングで追加点をあげ、安全圏に入る。そして終盤にもラコンブ、ジャンニーニが得点をあげて、4-0と勝利、フランスはアルゼンチン大会に続いてスペイン大会も本大会に出場するのである。(続く)

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