第2684回 再開のスケジュールを発表(1) フランスカップ、リーグカップの決勝実施の動き
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、昨年の台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■リーグ戦を打ち切ったフランスの喪失感
前回まではフランスならびに欧州各国のリーグ戦の新型コロナウイルスの感染拡大に対する対応を紹介してきた。主要五大リーグの中でフランスだけがリーグ戦を打ち切った。フランスが打ち切りを決めた後、次々と他国はリーグ再開を発表、多くの国は7月か8月までかけてリーグ戦を戦っている。また、リーグ戦以外のカップ戦、リーグカップ戦についても他国は延期して行い、イタリアなどは全チームが試合を行うリーグ戦の再開の前に特定のチームだけが出場するカップ戦の準決勝、決勝を先に行い、リーグ戦再開のリハーサルとしている。
■新型コロナウイルスの感染拡大とともに陰りが見えるマクロン政権
このような隣国の状況と比較するとフランスのサッカーファンは楽しみを奪われてしまったといえる。そしてこの決定が政府主導であったこともファンのフラストレーションを高めている。フランスをはじめとする欧州諸国の多くでは、日本のように国民全体にマスクを配布するわけではなく、検査体制を強化するとともに、休業補償を行っただけで、国家権力が外出禁止、営業禁止を命じた。政権への高い支持率の下に国民が協力し、マスクの配布とともに感染者数が減少した日本とは対照的に、欧州諸国では感染拡大が止まらなかった。しかし、その中でも、主要国ではフランスだけがリーグの打ち切りを政策として決定している。
政権に対する不満が投票という形で明らかになったのが6月の統一地方選である。統一地方選はフランスは新型コロナウイルスの感染拡大の初期の3月15日に第1回投票が行われ、議席が確定しなかった選挙区については6月28日に第2回投票が行われた。エマニュエル・マクロン大統領率いる中道与党の共和国前進が主要都市で敗北を重ねた。首都パリでは中道左派で現職のイダルゴが再選を果たす。また注目されたのはルアーブル市長選である。首相のエドゥアール・フィリップが勝利し、首相の落選は免れたものの、その後、フィリップ首相には厳しい結果が待っていた。
■エマニュエル・マクロン大統領との意見の相違で辞任したエドゥアール・フィリップ首相
フィリップ首相は今回のプロスポーツの打ち切りに関して国民に対して発表したが、これまでにもジレ・ジョーヌ対応、年金問題など政権内において国民に対する嫌われ役を演じてきた。政治経験のないエマニュエル・マクロン大統領を、たたき上げの政治家であるフィリップ首相が支えるという構図であった。しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大において、マクロン大統領が経済面を重視して、行動制限を解除したいと考えているのに対し、フィリップ首相は慎重な立場である。この意見の相違が一因となって、フィリップ首相が辞任した。後任の第24代の首相に就いたのはジャン・カステックス、官僚出身ンのプラード市長である。
発足時は熱狂の渦を巻き起こしたマクロン大統領であるが、人気が低下していることは事実である。首相を地方政界出身者から官僚出身者に変えて巻き返しを図る算段である。
■フランスカップ、リーグカップの決勝開催に向けた動き
このような動きの中で、沈滞ムードの続くサッカー界に動きがあった。まず、フランスカップとリーグカップの決勝戦の実施である。フランスカップについては4月25日、リーグカップについては4月4日にそれぞれ決勝が開催される予定であった。パリサンジェルマンは両方とも決勝に残り、リーグカップではリヨン、フランスカップではサンテチエンヌと対戦する。しかし、3月に2つの決勝は延期が発表された。4月末にリーグ戦が打ち切られたため、国内カップの決勝も開催されないのではないかという心配もあった。しかし、5月になり、他国がリーグ戦等の再開を発表し、UEFAもチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグを再開する運びとなり、フランスサッカー界も国内カップ戦の決勝2試合だけは行いたいという機運が高まったのである。(続く)