第2857回 25年ぶりのオリンピック(1) オリンピックから遠ざかっていたフランス

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■久しぶりにベスト8に届かなかったフランス

 新型コロナウイルスの感染拡大によって1年延期となった欧州選手権、前回まで紹介した通り、フランスは優勝候補の一角であったが、決勝トーナメント1回戦でスイスにPK戦で敗れてしまった。ワールドカップ、欧州選手権でフランスが準々決勝にたどり着けなかったのは2010年の南アフリカでのワールドカップ以来、欧州選手権では2008年のオーストリア・スイス大会以来のことである。また、大会を通しての成績は初戦でドイツに勝利しただけで、残り3試合は引き分け(最後のスイス戦はPK負け)、さらにこれら3試合ではいずれも先制を許している。5年半ぶりにカリム・ベンゼマの復活は吉と出たが、もしベンゼマが不在であれば、グループリーグで敗退していたかもしれないであろう。
 ディディエ・デシャン監督の去就も注目されたが、続投が決定し、次の目標であるワールドカップまで1年半を切っている。

■オリンピックへの出場はアトランタ大会以来25年ぶり

 そして、もう1つのビッグタイトルであるオリンピックも1年延期となって7月に開催される。本連載ではほぼ2年前に第2524回から第2528回にかけてオリンピック出場を決めた2019年の21歳以下の欧州選手権について紹介した。フランスはこの大会で準決勝に進出し、欧州からスペイン、ドイツ、ルーマニアとともに日本行きを決めた。フランスのサッカーとオリンピックというと、1984年のロスアンジェルス大会での優勝が印象的であるが、その後は本大会に出場することも少なく、1996年のアトランタ大会出場を最後に、オリンピックの場から遠ざかっており、実に25年ぶりの復帰となった。若手育成に定評があり、数々のアンダーエイジの国際大会で好成績を残しているフランスであるが、こと23歳以下(東京大会は1年延期となったため特例で24歳以下)となるオリンピックでは欧州という出場枠の厳しい地区に所属しているとしても本大会に届かなかったのである。

■すでにフル代表で活躍する若き才能たち

 この理由はいくつか考えられるが、まず23歳以下というのは年齢別の代表チームとしては最年長である。才能のある選手はこの年代ですでにフル代表の主力として活躍しており、アンダーエイジの才能がオリンピック代表(しかも4年に1度しかない)を通り越してフル代表に吸い込まれてしまっているキリアン・ムバッペの例を考えればよくお分かりであろう。今回の欧州選手権のフランス代表選手のうち、東京オリンピックの出場資格(1997年1月1日)を持っていたのはムバッペ以外にウスマン・ダンベレ、ジュール・クンデ、そしてマルクス・テュラムがいる。これらの選手に欧州選手権に続いてオリンピックへの参加を打診しても断られるであろう。さらに欧州選手権には意図的にメンバーから外れたと思われる実力者もいる。それが、ダヨ・ウパメカノ、エドゥアルド・カマビンガ、ジョナタン・イコネなどすでに昨年の段階で代表入りしている選手である。これらの選手は2021年の夏の2つの戦いを天秤にかけ、欧州選手権組とオリンピック組に分けられた考えられるであろう。

■クラブチームとオリンピックチームの力関係

 しかし、これらの選手はすでに所属チームでは主力であるので、クラブと年代別の代表チームの活動も両立が難しい。例えば、今回のオリンピック出場を決めた21歳以下の欧州選手権についてもフランスは実に13年ぶり(7大会ぶり)の本大会出場であった。育成大国のフランスならではのメンバー招集の難しさがうかがわれる。
 そして、欧州選手権やワールドカップの本予選にはクラブ側に選手を代表に送る義務があるが、オリンピックにはない。またオリンピックはシーズン開幕直前に行われる。しかも新型コロナウイルスの感染拡大、開催国日本での相次ぐトラブルを目のあたりにして、オリンピックに喜んでチームの宝を送ろうというクラブがない。各国の協会はメンバー選考に苦心したが、その中でも若きタレントを抱え、多くが国外で活躍するフランスは特別の難しさがあったのである。(続く)

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