第2858回 25年ぶりのオリンピック(2) メンバー招集に苦労するオリンピック代表
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■所属チームでも主力として活躍する予選突破メンバー
オリンピックから遠ざかっていたフランスであるが、1996年のアトランタ大会以来25年ぶりの本大会出場を決めた。2019年に行われた21歳以下の欧州選手権でベスト4に入り、東京行きのチケットをつかんだ。この大会でフランスをオリンピックに導いたのは攻撃陣ではホッサム・アウア、ムーサ・ダンベレ、ジョナタン・イコネ、ジャン・フィリップ・マテタ、マルクス・テュラム、ジョナタン・バンバ、オリビエ・エンチャム、守備陣では主将のルカ・トゥザール、ダヨ・ウパメカノ、コラン・ダグバなどである。これらの選手の所属クラブでの活躍は本連載でも紹介している通りである。21歳以下の欧州選手権時の出場資格は1996年1月1日以降生まれであり、オリンピックの年齢制限は1997年1月1日以降となる。この条件を考慮しても、メンバーから外れるのはバンバ、エンチャム、ダンベレくらいであり、もし、このメンバーにすでにフル代表入りしているキリアン・ムバッペ、さらには彼らよりも年少で1999年生まれのジュール・クンデなども加われば、本大会での活躍も期待でき、1984年のロスアンジェルス大会以来の37年ぶりの金メダルも夢ではない。しかし、それはあくまでも机上のプランでしかなかった。
■クラブ側がオリンピックへの選手派遣に難色を示す
オリンピックは各クラブに選手を代表チームに拠出する義務がないため、各クラブがノーと言えば選手はオリンピックに出場することができない。すでにこのクラスの選手は国内外のビッグクラブに所属している選手が多く、それだけに選手を送ることに対する反発も小さくない。例えば、延期の決まる前の昨年3月の初めの段階でパリサンジェルマンはトップチームに所属するムバッペ、ダグバをオリンピックに招集しないようにフランスサッカー連盟に書面を送っている。同様にスペイン連盟にもパブロ・サラビア、フアン・ベルナト、アンデル・エレーナを招集しないように要望している。
さらに今回のオリンピックの1年延期がさらに問題を難しくした。それは1年延期したにもかかわらず出場資格である1997年1月1日以降という条件が変わらなかったのである。もちろん、出場資格を変更するために2021年に延期された大会で出場できなくなるということを避けるためであるが、選手がその分成長し、所属クラブにおけるプレゼンスを高めた、そしてクラブからはますます拠出が難しくなったのである。選手拠出の義務が各クラブにないオリンピックの代表チーム編成に向けて各国のサッカー協会は苦労する。
■5月に50人のプレリストを発表
フランスでも2月に80人の候補を選び、そして5月に50人に絞り込んだプレリストを発表したのである。パリサンジェルマンだけではなく、国内外の主力クラブがオリンピックへの選手の派遣を断る声明を発表している中でのメンバー発表となった。フランス連盟側はこのリストにムバッペ、ダグバというパリサンジェルマンの選手の名前を入れている。
■リストに入ったオーバーエイジのアンドレ・ピエール・ジニャック
さらに、このリストは24歳以下の選手だけではなくオーバーエイジ枠の選手も対象となっている。オーバーエイジともなれば、クラブとの交渉はさらに困難を極めることが予想される。
ここでフランス連盟側はウルトラCともいえる技を使う。それはオリンピックとシーズンが重ならない欧州以外のチームに所属する選手に着目したのである。この中にメキシコのティグレスに属するアンドレ・ピエール・ジニャックの名があった。ジニャックはフランス代表として36試合に出場したストライカー、マルセイユなどでも活躍したが、6年前にメキシコに渡っている。ティグレスに移籍してからもフランス代表の試合に出場し、欧州以外のクラブに所属してフランス代表に選ばれた最初の選手となった。しかし、2016年を最後にフランス代表から離れ、すでに35歳、そういう選手に声をかけなくてはならないのがオリンピック代表というチームなのである。(続く)