第2864回 25年ぶりのオリンピック(8) 選手層の厚い日本に先制を許す
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■20年前にはコンフェデレーションズカップ決勝で日本を破ったフランス
グループリーグ最終戦の舞台は横浜国際総合競技場、この世界有数のスタジアムにフランス代表と名乗るチームが試合をしたのは2001年5月のコンフェデレーションズカップ決勝が最初で最後である。各大陸の王者がワールドカップ開催を控えた日本に一堂に会した大会、この時もフランスは国外のクラブに所属する選手が多数招集できなかったが、韓国で行われたグループリーグ、準決勝を勝ち抜き、横浜での決勝に進出した。開催国日本と対戦したが、パトリック・ビエイラのゴールで優勝している。
今回もベストメンバーではない陣容で日本と対戦するが、それでもジネディーヌ・ジダン、ファビアン・バルテス以外はメンバーを招集できた20年前とは異なり、今回は欧州予選を勝ち抜いた際のメンバーがわずか3人、厳しい戦いとなった。
■初先発となるティモテー・ペンベレとアレクシス・ベカ・ベカ
この日初先発となるティモテー・ペンベレは7月に追加招集されたメンバー、パリサンジェルマン育ちで15歳にしてプロ契約を獲得した天才少年であるが、なかなかプロとして試合の機会は与えられず、ようやくプロとして試合に出場したのはそれから2年後の昨年の11月のことであった。また、もう1人の初先発のアレクシス・ベカ・ベカはパリ出身であるが、カーン近郊に家族で引っ越し、カーンの下部組織から2年前にプロ契約を果たしている。しかしカーンは2部のクラブに過ぎない。彼らにとって、欧州のトップクラブで活躍するスター選手たちと試合ができることは夢のような経験であろう。
■オーバーエイジの3人以外はレベルに達していないフランス
しかし、その夢は簡単に崩れてしまった。オープニングシュートこそベカ・ベカがミドルから放つが、日本のGK谷晁生に簡単にキャッチされる。青いユニフォームのフランスはこのシュートの後は白いユニフォームの日本に試合を制されることになる。日本の最初の見せ場は7分の久保建英のFK、跳ね返ったところを旗手怜央が強烈なミドルシュート、フランスのGKポール・ベルナルドーニはパンチングでようやく逃れる。旗手は第3戦になって初めて先発した選手であり、フランス側も情報不足であったであろう。そしてフランスは日本の選手層の厚さに驚きを隠せなかったであろう。
守勢のフランスであるが、少ないチャンスを活かしてシュートまでつなげていこうという意識はあり、22分にはかなり長い距離のFKをフローリアン・トーバンが直接狙い、こぼれたところをテジ・サバニエが再びシュート、これは外れるが、結局ワールドクラスの試合をできるのが、オーバーエイジ枠の3人だけというのがフランスの現実である。そのオーバーエイジの3人も現役のフランス代表はおらず、すでに35歳になったアンドレ・ピエール・ジニャック、マルセイユを離れてメキシコのクラブに移籍したトーバン、この2人はメキシコのクラブに所属していたからオーバーエイジ枠に入ることができたのであろう。3人目はそしてフル代表だけではなく、年代別代表の経験もなく、これが初めての代表となったサバニエである。このオーバーエイジの3人を見ても、日本との実力差は如何ともしがたい。
■27分に日本の久保建英が先制点を決める
日本の先制点は時間の問題であった。27分、日本は守備的MFの田中碧から右サイドの久保へ、そして久保はこの日トップに入っている上田綺世にパス。上田は右に開く形でドリブルをして前進、フランスの左サイドの守備を担うペンベレは全く対応ができず、上田にシュートを許す。通常ならばシュートされても怖くない角度と距離であるが、ベルナルドーニはクリーンキャッチができず、前に弾いてしまう。このこぼれ球にフランスのストッパー陣は反応できず、走り込んできた久保が左足でシュートする。久保のシュートをベルナルドーニは止めることができず、先制を許してしまったのである。(続く)