第2988回 ワールドカップ組み合わせ抽選前の親善試合(2) 2人の新人、ジョナタン・クロースとクリストファー・ヌクンク
平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。
■ワールドカップ予選後最初の試合に23人を招集
フランスはワールドカップ予選以降の最初の試合として3月25日にマルセイユでコートジボワール、29日にリールで南アフリカと親善試合を行う。この後、代表チームの日程はUEFAネーションズリーグが6月から開幕、フランスは6月に4試合、9月に2試合が予定されており、11月のカタールでのワールドカップを迎えることになる。
したがって、今回の親善試合は新戦力を試す貴重な機会となる。3月17日にディディエ・デシャン監督は23人のメンバーを発表した。GKは3人、ウーゴ・ロリス、アルフォンス・アレオラ、マイク・メニャンの3人、DFはプレスネル・キンペンベ、ルカ・ディーニュ、ジュール・クンデ、バンジャマン・パバール、ルカ・エルナンデス、テオ・エルナンデス、ジョナタン・クロース、ラファエル・バランの8人、MFはマテオ・ゲンドウジ、ポール・ポグバ、アドリアン・ラビオ、エンゴロ・カンテ、オーレリアン・チュアメニの5人、FWはアントワン・グリエズマン、キリアン・ムバッペ、カリム・ベンゼマ、ムサ・ディアビ、キングスレー・コマン、ウィッサム・ベン・イェデル、クリストファー・ヌクンクの7人である。
■29歳の新人、ジョナタン・クロース
この中で新人はクロースとヌクンクである。 クロースはRCランスに所属している右サイドDFである。すでに29歳であるが、遅咲きの選手である。サッカーの盛んなアルザス地方のストラスブール生まれ、2歳からサッカーボールを蹴り始め、8歳から18歳までの10年間、ストラスブールの下部組織に所属する。ここからフランスとドイツのアマチュアのチームに所属し、ようやくプロと言える立場になったのは24歳の時、フランスカップでジャイアントキリングをしばしば演じ、2部に昇格したばかりのクビリー・ルーアンとプロ契約し、プロとして初のシーズンで8アシストを記録し、DFだけではなくサイドのMFとしての適性も見せた。そして2018年にはドイツ2部のアルミニア・ビーレフェルトに移籍する。かつて日本の尾崎和寿夫が所属し、オットー・レーハーゲルやホルスト・ケッペルらの名将が率いたチームであるが、長らく下位に低迷していた。クロースの所属2年目にチームは2部で優勝し、クロース自身も5得点、8アシストと優勝に貢献、2年間の契約満了もあり、RCランスに移籍した。
■RCランスからはアルー・ディアラ以来の代表入り
RCランスも1部に復帰するため、クロースは27歳にしてようやく1部のチームの一員となり、フランスに凱旋することとなった。1部に復帰したRCランスは初年度は7位、欧州カップまであと一歩となった。クロースは右サイドで活躍し、クロスの数はリーグ最多、1試合当たり5本以上のクロスをあげている、右サイドのクロースの強みは右足だけではなく、左足でも精度の高いキックができることである。クロスにとって2年目となった今季、RCランスは2位あるいは3位のポジションで好調を維持している。好調なチームで活躍している選手を選出するというデシャン監督の方針通りの選出である。RCランスからの代表に選ばれたのは現在はチームのコーチをしているアルー・ディアラ以来実に18年ぶりのことである。
■パリサンジェルマンからRBライプチヒに移籍したクリストファー・ヌクンク
ヌクンクはパリ近郊生まれでパリサンジェルマンの下部組織からプロ契約を果たした。当時のローラン・ブラン監督に見いだされ、17歳の2015年のシーズン前の夏に抜擢されてトップチームの試合に出場する。夏場に行われていたインターナショナルチャンピオンズカップの米国遠征にも帯同、ビッグクラブとの試合に出場した。2015年12月にプロ契約し、試合にも出場したが、やはり選手層の厚いパリサンジェルマンでは出場機会は限定される。2019年にドイツのRBライプチヒに移籍、ここでの活躍、とりわけ古巣のパリサンジェルマンとのチャンピオンズリーグでの対戦は本連載で紹介した通りである。RBライプチヒではほぼ全試合に出場、3試合に1点のペースで得点を重ねており、デシャン監督の期待も大きいのであろう。(続く)