第3160回 追悼 ジュスト・フォンテーヌ (1) ワールドカップ・スウェーデン大会で13得点

 平成23年の東日本大震災、平成28年熊本地震、平成30年7月豪雨、台風15号、19号、令和2年7月豪雨などで被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。また、復興活動に従事されている皆様に敬意を表し、被災地域だけではなくすべての日本の皆様に激励の意を表します。

■ワールドカップで1大会最多得点のジュスト・フォンテーヌ、89歳で亡くなる

 2022年12月18日、ワールドカップ決勝、アルゼンチン対フランス戦、決勝が始まる時点の得点王争いは、アルゼンチンのリオネル・メッシ、フランスのキリアン・ムバッペが5得点で並び、アルゼンチンのフリアン・アルバレスとフランスのオリビエ・ジルーが4得点で並び、混戦であった。メッシが2得点を奪ったが、ムバッペも3得点、最終的にムバッペが8得点で得点王に輝いた。ワールドカップの決勝が終わるたびに得点王が決まるが、その時に比較対象となるのが1958年スウェーデン大会でのフランスのジュスト・フォンテーヌ、グループリーグから3位決定戦までの6試合で13得点をあげている。この1大会13得点という記録はサッカーの戦術が変わったこともあるが、おそらくは簡単には塗り替えられない記録であろう。
 そのワールドカップのレジェンドというべきフォンテーヌが3月1日、89歳で亡くなった。謹んで冥福を祈りたい。

■アルベール・バトー率いるフランス代表、フォンテーヌは初戦でハットトリック

 まずは、ワールドカップでのフォンテーヌの活躍について紹介しよう。戦後初のワールドカップ出場となるフランスは名将アルベール・バトーが率いる。この当時のフランス代表監督は専任ではなく、バトーはスタッド・ド・ランスの監督を務めており、フランス代表の試合があるときは代表監督を兼任した。当時のスタッド・ド・ランスは強豪チームであり、スウェーデン大会に出場した選手の多くはスタッド・ド・ランスに所属しており、フォンテーヌもその1人であった。
 欧州予選を勝ち抜いたフランスはグループ2でパラグアイ、ユーゴスラビア、スコットランドと対戦した。6月8日にノルショーピンで行われたパラグアイ戦、フランスは20分に先制を許すが、24分にフォンテーヌが同点ゴール、さらに30分に逆転ゴールを決める。ところがパラグアイは前半終了間際に追いつき、後半に入って50分に逆転する。ここからフランスのゴールラッシュが始まった。53分にスタッド・ド・ランスのロジェ・ピアントニのゴールで追いつき、61分にマリアン・ウィスニエウスキが勝ち越しゴール、67分にはフォンテーヌ、70分にレイモン・コパ、83分にジャン・バンサンが得点をあげ、7-3と大勝、フォンテーヌはフランス人として初めてワールドカップでハットトリックを決めたのである。

■ユーゴスラビア、スコットランド、北アイルランド相手にも得点、準決勝へ

 6月11日にベステロースに移動して行われたユーゴスラビア戦、フランスはフォンテーヌが先制したが、2点を奪われ逆転される。85分にフォンテーヌが同点ゴールをあげたが、88分に決勝点を奪われて敗れてしまう。
 グループ2は首位がユーゴスラビア(1勝1分)を追ってフランスとパラグアイが1勝1敗、そして1分1敗のスコットランドという中で6月15日の最終戦を迎えた。フランスはエレブルーでスコットランドと対戦、勝利すれば決勝トーナメントとなる(この当時は勝利の勝ち点は2)。フランスは22分にフォンテーヌのクロスを受けたコパが先制点、44分にはフォンテーヌが追加点をあげ、後半のスコットランドの反撃を1点に押さえ、2-1と勝利して、プール首位で決勝トーナメントに進出した。
 決勝トーナメント1回戦の相手は北アイルランドである。当時はグループリーグで2位と3位の勝ち点が並んだ場合は、プレーオフが行われた。現行のルールであれば、得失点差(当時は得失点比率)で3位の北アイルランドは2位のチェコスロバキアをプレーオフで延長の末下す。ミラクルチームと呼ばれた北アイルランドであったが、延長戦を戦った2日後のフランス戦は動きが重かった。フランスは前半にウィスニエウスキが先制点、後半に入るとフォンテーヌが2点、ピアントニが1点を入れて4-0と勝利し、準決勝に進出、当時のフランスにとって最高の舞台となった。

■ペレがハットトリックを決めた試合でも得点、3位決定戦では4ゴール

 しかし、準決勝でフランスを完全に脇役に押しやったのが17歳の新星ペレである。この試合でハットトリックを決めたペレは一躍世界にその名を知られた。フランスは2-5と大敗したが、フランスの1点目を決めたのがフォンテーヌである。
 そして3位決定戦でフランスは西ドイツと対戦、バトー監督は選手を入れ替えたが、フォンテーヌ、コパ、バンサン、ウィスニエウスキなど攻撃陣は入れ替えず、フォンテーヌはこの試合で4得点をあげ、6-3と勝利してフランスは3位を獲得した。
 フォンテーヌは6試合すべてに出場し、すべての試合で得点をあげ、13ゴールを積み上げたのである。(続く)

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